流れるように…
先に言っておきます。マンネリ化は避けますので、大きなイチャイチャはもう少しだけ待ってください!
翌日。登校中に、二人の女子生徒に話しかけられた。
「すみません。桐ヶ谷先輩ですよね?」
「これ!受け取ってくださいませんか?」
そう言って、二枚の便箋を渡された。
どうやら一年生のようだ。昨日の今日でこれということは、ドラマを観てくれた娘たちだろう。
「ああ。ありがとう。これって、昨日のドラマの奴か?」
「はい!桐ヶ谷先輩の演技、とても素敵でした」
「うち、ドラマであんなに感動したの初めてで…。次またドラマに出ることがあったら、絶対チェックします!」
そう言って、二人は去って行った。
……もう俺、普通の一般人に戻ったんだけどな…。現在進行形でスカウトされてるけど。
「ファンレター、渡しちゃったね!」
「うん!しかも淡々としてるけど、どこか安心する声を生で聞けるとか、超ラッキーだった!」
……そんな声してるのか…。自分じゃわからんもんだな。
演技自体は色々な俳優さんの演技を見様見真似でやっただけなんだけど。満足してくれてるなら、まぁ良かったか。
学校が近くなると、やはり俺に視線が集まってくる。
好奇の視線が強く、俺が賄賂だのなんだのと言ってるような奴らはもういなかった。
ただ、その中でファンレターを渡してくる女子がいるのだが、その度に男子からの嫉妬の視線が突き刺さるのは勘弁して欲しかった…。
「くっそ。桐ヶ谷の奴、調子乗ってんな…」
乗ってねぇよ。
俺のどこにそんな要素がある?鼻の下でも伸びてるのか。
「なんであんな冴えない奴に、モテキなんて来てるんだよ…」
「うわっ。握手なんかしちゃって……クソ!絶対俺の方が良い顔してるのに…」
モテてる訳じゃねぇよ。
ファンとして話しかけられてるだけだわ。そして求められた握手に応えただけだ。所謂ファンサービスという奴だな。
これだけで喜ぶんだから、ファンというのは幸せな人たちだと思う。ストレス軽減にも繋がってるだろうし、芸能人というのはファンを癒す職業でもあるんだな。
「拙者、ちょっと羨ましいでござる」
「どさくさに紛れて後ろに立ってんじゃねぇよ」
いつの間にか後ろにいた総司にアイアンクローをお見舞いした。
「お、おはようでござる、誠殿~…。ほ、本日も、お日柄が良く……いだだだだ!どんどん強くしないで欲しいでござるー!?」
「あっはは。バカだな~総司は」
一緒にいた隆二は、特に総司を助けることもなく、ただ笑って見ていた。
「あー!良いな~。あんなに締め付けられて……私もアイアンクローされてみたい」
ただ、ファンというのは性癖を拗らす人種でもあるというのは、知りたくなかった…。
手に掴んでいた総司は、後ろから追い付いて来たお姉にパスして、先を急いだ。これ以上、ファンサしてたら遅刻するしな。
後ろでお姉に総ちゃんと呼ばれている騒がしいヲタクは無視だ無視。
――――――――――――――――――――――――――――――
ようやっと学校に着き、俺は机に突っ伏していた。
「あははは!桐ヶ谷君ってば、相当参ってるねー?大丈夫?」
鹿野さんが、ファンサに疲れ果てた俺を見て笑っている。
それに少々ムカついたが、これは鹿野さんたち芸能人が毎日経験していることだ。これでも鹿野さんは経験者なりに同情してくれているのだろう。
「ねぇねぇ。どんな気持ち?ファンの娘たちから迫られるのは、どんな気持ちぃ?」
「わざとだろ?その煽るような発言はわざとだろ?」
「ごめんごめん。これでも一応心配してるつもりだよ。それはそうとさ、今日でテスト全部返って来るよね?」
「そうだな」
テストの話になり、鹿野さんは昨日までに返って来たテスト用紙を見せて来る。既に何度も見せられているが…。
どれも70点以上を取っていて、後は今日返って来る数学と英語の点数が30点未満じゃなければ、無事赤点回避だ。
ちなみに、二条院さんと藤堂さんのクラスは、古文と英語が返って来ていない。
「苦手教科が最後に来るとか、意地悪だよね~…」
「俺はどうせ全部90点以上だし、その気持ちはよくわからんな」
「うわっ。その余裕ムカつく~…!このー!その頭寄越せー!」
そう言って鹿野さんは、俺にドンっと勢い良く抱き付いてくる。
若干ヘッドロックが掛かっていて、痛い…。
「抱き付くな、うっとおしい…。あと痛いからマジで離して…」
「嫌でーす。ふふん。上を取られては、さすがの桐ヶ谷くんも身動きが取れまい!」
「……はいはい、そうですね~…」
そんな悪役みたいなセリフを吐いておいて、力を緩めてくれる鹿野さん。
このまま抜け出しても良いのだが、そうすると彼女の機嫌が悪くなって面倒臭くなる。しばらく大人しくしておこう。
「おや?観念したのかな、桐ヶ谷君。このままだと私の好きにされちゃうけど、よろしいので?」
「好きにって、どうするつもりだアンタ…」
「こうするのだよ!」
俺の後ろに回って、わしゃわしゃわしゃわしゃ~、と俺の頭を撫でくり回す鹿野さん。髪の毛がボッサになるので止めて欲しいけど、鹿野さんなりに労ってくれていると信じて、甘んじて受け入れておこう。
クラスの視線が痛いけど…。
少しして、俺の頭を撫でている鹿野さんから、鼻歌が聞こえて来る。
「ふっふ~ん♪ふっふ~ん♪」
「……そんなに撫でていて、楽しいか?」
「うん。楽しい。桐ヶ谷君に撫でられるのも好きだけど……こうやって撫でるのも好きかも。癖になっちゃいそうだよ」
「さいですか」
乱した俺の髪の毛を。今度は丁寧に直すようにして撫でる鹿野さん。
彼女の声音は穏やかで落ち着いた物になっており、優しく撫でられてるのもあって、少し眠くなって来る。
「どう?気持ちいい?」
「眠くなるくらいには」
「お!私ってば才能ある?」
「どんな才能だよ?」
「マッサージ師」
「髪だし、どっちかって言うと美容師じゃね?知らんけど」
そんな雑談を交わしていると、ホームルームのチャイムが鳴り、鹿野さんは撫でるのを止めて自分の席に戻る。
「ねぇねぇ、約束覚えてる?」
「カラオケのことか?覚えてるぞ」
「それもそうなんだけど……普通さっきの今でその話になるかな~…。ほら、頭を撫でてくれるって約束…」
顔を赤らめて、唇を尖らせながら言ってくる鹿野さん。
そういえば、ファミレスで頭を撫でてあげた時に、そんな約束もしたな…。
「覚えてやがったか……まぁ約束したし、良いんだけどさ。さすがに教室ではもう撫でんぞ?」
「うん。それで、さ……そのこと……なん、だけど……」
「おーっす。おはよー。じゃあ出席取るぞー」
野茂瀬先生が入って来て、鹿野さんの言葉が中断される。
鹿野さんは小声で「また後で」と言って、前を向く。
俺はというと、鹿野さんの赤くなった横顔が気になって、野茂瀬先生の話が耳に入って来なかった。
―――――熱でもあるのか?
しかし俺は、全く見当違いなことを考えていた。
流れるようにイチャつきやがって…。
F○Oで伊吹○子を二枚引き、さらにはすり抜けで刑○姫という神引き。
強化素材が全然足りない。特に骨。
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