表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/112

ドラマ放送日

今回話の伸ばし方がわからなかったので、また短いです。すみません…。

「いよいよね?誠」

「胃が痛い…」


 揶揄うように言ってくるお姉に、今の俺の気持ちを全部丸投げしたい…。

 今日はいよいよ、急にスカウトされ、急に主要人物をやらされたシリウス主演のドラマ『アイドル警察♪シリウス』の放送日だ。緊張して胃が痛い。

 リビングには有休を取った母さんと父さんもいる。


「う~ん!久し振りに母さんの手料理を食った!腕は落ちてないな」

「赤飯炊いただけで大袈裟よ」

「そんなことないぞ!俺にとって、母さんの料理が世界一美味いからな!」

「そ…」


 父さんの言葉に、母さんは目を逸らした。目を逸らすのは、父さんに嬉しいことを言われて照れた時の母さんの癖だ。

 これでもしっかり父さんに惚れてる証拠だな。人前でイチャイチャしないで欲しいけど…。


 ……………ん?なぜだろうか?なんかブーメランが帰って来た気がする…。


「理乃理乃。楽しみね?誠の演技」

「母様母様。楽しみですね?誠の演技」


「鬼の双子かよ…。つうか言う順番が逆だ」


「母様母様。楽しみですね?誠の無様な演技」

「理乃理乃。楽しみね?誠の哀れな演技」


「言い直さんで良い!しかもちょっとキャラを寄せやがって!?」


 良いよなぁ、当事者じゃないから気が楽で。俺は今日ずっと緊張しっぱなしだ…。

 自分に出来ることは精一杯やったが、所詮俺は素人。そんな俺の演技を観て、視聴者は楽しめるのだろうか?


「自信持ちなさい、誠。PVしか観てないけど、母さんは十分上手いと思うし、違和感は特に感じなかったわ」

「最初にそれを聞きたかったな……まぁ励ましてくれて、どうも…」


「お!始まるぞ!」


 ドラマ前のバラエティ番組が終わって、とあるライブ会場が映し出される。

 始まった。これはドラマの導入部分で、最初にシリウスの実際のライブ映像が流れるのだ。


『彼女たちはシリウス。たった一年で、日本中から愛されるようになった国民的アイドルユニットである。だがそれは……あくまで表の顔に過ぎない―――』


 杉谷智也さんのそんなナレーションから始まり、ドラマの本編が流れた。


――――――――――――――――――――――――――――――


 警視総監の阿賀瀬に召集されたシリウス。闇取引の現場を抑えて、警察の手から何度も逃れている、正体不明の首謀者を捕まえるよう阿賀瀬から指示される。

 その捜査をする為に転入した学校にいた協力者、桐ヶ谷誠のことが気になり、グイグイ距離を詰めていく鹿野さん。自分のことで複雑だったけど、学校の出来事を再現したシーンは、まるでほのぼの日常系アニメを観てるみたいだった。


 俺がアドリブを効かせた、例の幼馴染の恋人シーンでは、それを観た父さんは目頭を抑え、母さんと姉さんは無表情のまま涙を流していた。なんてシュールな光景…。


 そしてドラマの一番の見せ所である俺と鹿野さんのアクションシーンでは、次々と襲い掛かって来る敵や罠を突破していくだけでなく、マジで鹿野さんに蹴飛ばされたカメラマンもいたお陰で、洋画さながらの迫力あるアクションシーン満載だった。

 特に落とされたデカい鉄球から逃げる中、長さ五メートルの超深い溝を飛び越えるシーンは家族全員盛り上がっていた。

 俺はギリ腕が縁に届いたが、鹿野さんが惜しくも届かず、鉄球と一緒に溝の底に落ちて行きそうになった。そんな彼女の手を何とか掴んで救いあげるシーンは、皆固唾を飲んで見守っていた。


 最終的に首謀者の正体がわかり、捕まえることに成功するのだが、なんと首謀者は警視総監である、阿賀瀬だったのだ。

 そりゃ正体なんてわからない訳だ。警視総監の権力で、いくらでも事実を隠蔽出来るんだからな。


 一度エンディングを挟んでから流れた最後のシーンは、俺が飛行機に乗って北海道の千歳空港に着いたシーンだ。

 俺が空港のロビーまで行くと、そこにいた一人の人物を見た時に驚きで顔を染めて、手に持っていた鞄を落とす。

 顔は映し出されなかったが、長い綺麗な髪の毛から、女の子だというのがわかる。


 彼女が抱き付いて来て『おかえりなさい』と囁くように言うと、俺は涙を流しながら『ただいま』と言って、次回予告に移った。


――――――――――――――――――――――――――――――


「誠。三回目のトレンド一位おめでとう。『桐ヶ谷誠の演技にいつの間にか涙を流していた』って凄い好評よ」

「うっそだろ…?」


 お姉からその言葉を聞いて、安心すると同時に、一株の不安を覚えた。


「江月さんからの勧誘が、よりしつこくなりそうで怖い…」

「あら?誘われてるなら続ければ良いのに。そうしたら母さん、仕事を辞めて楽になれるわ」


「おお!つまり、わざわざ母さんと休みを合わせることも無くなるということだな!誠、俳優続けてみないか?俺と母さんの為に!」

「少なくとも父さんの為に続けたくないな~…」

「なんでよ!?」

「父さんの喜ぶ姿がウザいから」


「母さん!息子が冷たい!」

「ざまぁ」

「母さん!?」


 その日の晩は、遅くまでドラマの感想を言い合っていた。

 目の前で俺の演技の感想を語られると気恥ずかしかったが、「気付けば涙を流していた」と言われた時は、正直ちょっと嬉しかった。

伊吹○子の声優が悠○碧さんなので、絶対引く!


桐ヶ谷誠に対して、お前が言うな!と思ったら、

ブクマ登録や評価、感想をくださると作者のモチベが上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 1時間ぐらいでかなりドハマリして読み込んでしまいました…… めっっっっっっっちゃ面白かったです!!! もう語彙力がないんで上手く言えないんですけど最高に好き。めっちゃ好き。超好き。続き…
[一言] ・・・逆に言うと、俳優を続ける事でお父さんが悔しがるようにすれば俳優続行すると言うことですな。 江月さん、頑張って!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ