甘々な二組
完・全・貫・徹!
遅くなってすみません!0時から8時間ずっと執筆して、気付けば朝でした!
「おはよう、誠ー」
「んー」
学校に着き、下駄箱で靴を履き替えていると、隆二が挨拶してきたので適当に返す。
俺と隆二は、物心付くより前からの付き合いだ。
多少適当に返しても特に問題ない。それくらい仲が良いということにしてくれ。
本人にそれを言うつもりはないけど。
「今日も適当な挨拶だなぁ」
「いつものことだろ、何を今更。てか総司は?いつも一緒に登校してるだろ」
「ああ……あっち」
隆二が苦笑を浮かべながら、外の方を指をさす。
そこには、かがんだ状態で総司に頭を撫でられてるお姉の姿があった。
身長180センチ程のお姉が、160センチ半ばの総司に公衆の面前で撫でられてる光景は嫌いじゃない。いやそうじゃなくて!
「何やってんのアイツら!?」
「総司がいつものように絡まれてるんだよ。いや、今回はかなり攻めてるとは思うけど…」
「なんであんな恋人みたいなことやってんだよ!?学校の奴らがめっちゃ見てるぞ!俺、弟としてめっちゃ恥ずかしいんだけど!?」
「まぁ、理乃さんがああなったら止まらないからな…」
とそこで予鈴が鳴った。あと五分で教室に行かなければ遅刻だ。
お姉が総司の手を引っ張ってこちらにやってくる。
お姉と総司の顔が真っ赤だ。恥ずかしいならあんなことするなよ…。
「お姉、総司……公衆の面前で何やってんだよ…」
「理乃殿だけに聞いて欲しいでござるよ!圧に負けてやってしまったでござるが、なんで拙者いきなり頭撫でさせられたんでござるか!?」
「鹿野さんが、誠に頭を撫でられて気持ち良かったって言ってたから」
……………なんだって?
お姉の言葉に、隆二と総司が驚きの表情を浮かべながらこちらを見た。
幸い他の生徒は自分の友人らと話していて、聞こえてなかったようだ。
「はい?」
「鹿野さんが、誠に頭を撫でられて気持ち良かったって言ってたから」
「二度も言わんでいい!そうじゃなくて、なんで俺が鹿野さんの頭を撫でたこと知ってんの!?(小声)」
「LITIで教えてもらった」
いつの間に鹿野さんとLITI交換してたんだよ…。
まぁそれは良いけど、あんな恥ずかしいことをお姉に知られたという羞恥よ!口の軽い鹿野さんは後で折檻だ。
「理乃殿……いい加減手を離して欲しいでござる…」
「……まだ繋いでいたいのだけれど、ダメかしら?」
「ダメでござる!周りの視線が痛過ぎるのでござる!」
総司がぺいっとお姉の手を離した。
お姉は顔を俯けて落ち込んだが、無表情なのでわかりにくかった。
――――――――――――――――――――――――――――――
ホームルームが始まる前に教室に入る。しかし、クラスの雰囲気が少しおかしい。
……まぁ、その原因は俺の席を見れば明らかだけど…。
「誠……お前、頭撫でる以外に何やった?」
「知るかよ……まぁ丁度いい。折檻のお時間だ」
なぜそこに座ってるのかわからないが、とりあえずお姉に頭を撫でたことを暴露した、なぜか膨れっ面の鹿野さんの膝の上に座る。
「ぐえぇ!?お、重い!重いよ桐ヶ谷君!?これ普通は立場逆じゃない!?」
俺に乗っかられた鹿野さんが苦悶と抗議の声を上げる。
クラスの奴らが困惑している原因は、不機嫌そうな顔で俺の席に座っていた鹿野さんだろう。
「俺の席に座ってる君が悪い。あと、お姉に昨日のこと暴露したお仕置きだ」
「だからって、女の子にのしかかるのはどうかと思いまぁす!?」
「はいはい、そうですね。じゃあ自分の席に戻って」
折檻もそこそこに、鹿野さんに席に戻るよう促す。
だが鹿野さんはまた膨れっ面になって、あっぺん向いた状態で俺の席に居座った。
「あのー鹿野さん?もうすぐホームルームなんですけど?」
「……………」
「なんでまた訳もわからず不機嫌なの?昨日もそうだけど、なんで機嫌悪いのか理由言ってくれないと、心当たりが無い俺としては謝ろうにも謝れないんですけど?」
「ぶーーーーーー…」
こちらを見た鹿野さんは、目に涙を浮かべながらこちらを睨んでくる。いやマジで俺、何したよ?
俺が鹿野さんに何をしてしまったか考えていると、鹿野さんが俺に言う。
「桐ヶ谷君は悪くないの。悪くないんだけど……なんだか、凄い複雑なの…」
「なにが?」
「桐ヶ谷君と最初に仲良くなったのは、私なのにって…」
「……あ~……察し…」
鹿野さんは俯いて、胸を抑えて苦痛に耐えるように言う。
たぶん、今朝のニュース番組を見てイジけてるんだな…。別に誰と誰がコッソリ付き合ってそうとか、どうでもいいと思うんだけど…?
ああでも、アイドルなんだから対象に選ばれるのはバラエティネタだったとしてもマズいか。その対象じゃない鹿野さんの機嫌が悪いのはおかしいけど…。
これは二条院さんに迷惑かけたことを、後で謝りに行かないとな。まぁその前に鹿野さんの機嫌を直さないとなんだけど…。
「あんなの番組側が面白おかしく言ってるだけで、気にする必要は無いだろう?」
「それは……わかってるけど。わかってはいるんだけど……なんか、納得いかないの…」
なんで?と聞こうとするが、そのタイミングでホームルームのチャイムが鳴る。
状況を見守っていたクラスメイトは、各々自分の席に戻るが、意識はこちらに向いたままだ。
「鹿野さんも戻ったら?」
「ぶーーーーーー…」
まーた膨れっ面になっちゃったよ、この人…。面倒臭ぇな…。
……そういえば、昨日は頭を撫でてあげたら機嫌が良くなったな?
お姉と総司みたいに、クラスメイトの目の前でやるのはマズ過ぎる気がするけど……このままだと野茂瀬先生が来てしまう。あの人席に着いてないと遅刻扱いにするから、早く座りたいんだよ…。
……………仕方ない。背に腹は代えられん。遅刻扱いになって内申点が下がるよりかは、よっぽどマシだ。
面倒だけど、クラスメイトから何か言われても、ただ仲の良い友達って言い張れば済む話だ。前々から鹿野さんからのスキンシップは多かったし、今更俺が撫でるくらい別に大丈夫だろう。
心の中で言い訳するように決心し、俺は鹿野さんの頭の上に手を置いて、横に流すようにして優しく撫でた。瞬間、教室内がどよめいた。
……まぁ、そうなるよね?
「ふぇっ!?き、桐ヶ谷君?」
突然のことに驚きの声を上げる鹿野さん。
そういえば、最初に仲良くなったのは私なのに、とか言ってたな。俺の自惚れでなければ、あれってたぶん嫉妬だよな?
恐らく自分が一番俺と仲が良いと思っていたのに、ただのバラエティネタとはいえ、自分が選ばれなかったというのが相当悔しかったんだろう。変に負けず嫌いだな~この人…。
アイドルなんだから、むしろ選ばれなくて良かったろうに。そんなに俺と一番仲が良さそうに見られたかったんだな。
ふむ……ならばここは、鹿野さんが安心する言葉でもかけてあげるか。
「鹿野さんだけだよ」
「え?な、なにが?」
「こんなことするのは、鹿野さんだけだよって。俺が頭を撫でるくらいに仲の良い相手なんて、鹿野さんしかいないよ」
「え……あ。そ、そう、なんだ……え、えへへ~…」
鹿野さんが顔を真っ赤にしながら、ニヤけるように笑う。
どうやら機嫌は直ったようだ。チョロイン過ぎて心配だけど、今はそんな鹿野さんに感謝しよう。
「ほら、満足したなら自分の席に戻って」
「はーい♪」
元気に返事して、自分の席に戻る鹿野さん。
やっと座れると安堵して、俺も自分の席に座るが、鹿野さんが机をくっ付けて来た。
「なに?なんか忘れ物でもした?」
「……ん…」
俺の質問には答えず、頭を差し出して、撫でろと催促してくる鹿野さん。どうやら満足してなかったらしい。
席には座れたし、断っても良いのだが、そうするとまた機嫌が悪くなったら余計面倒なので、鹿野さんの要望に応えた。
「えへへぇ~…。桐ヶ谷君に撫でてもらうの、やっぱり凄く気持ちいいよぉ…」
「はいはい。よかったですね~」
目をトロンとさせながら言う鹿野さんに対し、内心ドキリとしながらも、努めて冷静に頭を撫でる。
とそこに、野茂瀬先生が教室に入って来る。
「おーっす。おはよー。それじゃあホームルーム始め……って、何イチャイチャしてるんだそこ?」
野茂瀬先生が、鹿野さんの髪をわしゃわしゃしている俺を見ながら聞いてくる。
「俺もよくわかりません。撫でろと言われたので、撫でてるだけです」
「ああ……そう?大変そうだな?」
「もう慣れました…」
野茂瀬先生は苦笑を浮かべながらホームルームに移り、俺は一時間目の授業が始まるまで鹿野さんの頭を撫で続けた。
え?クラスの反応?女子からは好奇の、男子からは怨念と殺意の塊とも言える視線を投げられ続けたということだけ言っておこう…。
胃薬……自分の分も買っておけば良かった…。
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