鹿野結衣は桐ヶ谷誠を想う
ジャンル別日間ランキングがTwitterに上げた時は89位だったのですが、これ書いてる時に確認したら、なんと63位になっていました!ありがとうございます!これからも応援、よろしくお願い致します!
あと、今回は鹿野さん視点です。
桐ヶ谷君たちと勉強したその日の夜。私はベッドの上で……悶えていた。
「あ~~~~!私ったら、なんて大胆な!周りにお客さんいたし、しかも凜華ちゃんと純ちゃんもいたのに、なんて恥ずかしいお願いを~…!」
顔が熱いのがわかる。今の私の顔は、さぞ真っ赤に燃えていることだろう。
なぜ私は桐ヶ谷君にあんなに抱き付いたり、頭を撫でて欲しいなんて言ってしまったのか。たぶん私を見て欲しかったからだ。それだけはわかる。
だけど……なぜ見てもらいたかったのか。その理由が、自分でも全くわからない。
でも、桐ヶ谷君に私を見て欲しいと思った原因はわかる。
昨日のライブで、桐ヶ谷君が持っていた『アルファLOVE』と書かれた応援うちわを見た時に、言葉に現せない程の悲壮感に見舞われた。
桐ヶ谷君は、シリウスの中で一番好きなのは凜華ちゃんなんだ。そう思った時に、何か途轍もなく黒い感情が私の中で渦巻いた。
その感情が一体何なのかわからない。今まで一度も感じた事のない感情だった。
羨ましい?違う。似てるけど、そんな小さい物ではなかった。桐ヶ谷君と最初に仲良くなったのは、私なのに。なんで私じゃなくて、凜華ちゃんのうちわを持っていたのか…。そんな疑問がずっと胸の内にある。
別に桐ヶ谷君が誰のファンになったり、誰を好きになるかなんて私には関係ないことだ。それなのに、桐ヶ谷君は凜華ちゃんが好きなんだと思ったら、胸が締め付けられるみたいに苦しくなって、でも実際に痛みなどは全く無くて……
「なんか……自分が嫌になっちゃう…」
この黒い感情が何なのか、理解することが出来ない。でも、凄く醜くて嫌な感情だというのはわかる。
自分の頭に触れる。
桐ヶ谷君に撫でられた時は、そんな黒い感情が一気に霧散したのがわかった。
そもそも、なんで桐ヶ谷君に撫でて欲しいと言ったのか。それはファミレスで勉強中に、理乃先輩からLITIが送られてきたからだ。内容は……
『誠と何かあった?』
エスパーかと思った。私が悩んでるのをなぜ知っているのか。
しかしその疑問は、次のLITIでわかった。
『今、誠から連絡があってね。喧嘩でもしてるの?』
スマホを触りだした桐ヶ谷君が、何していたかもわかった。桐ヶ谷君は姉の理乃先輩に、私の相談をしていたんだ。
それが無性に嬉しくなって、思わず桐ヶ谷君を見たけど、桐ヶ谷君はずっとスマホと睨めっこしてた。私があんなにくっ付いていたのにも関わらず、顔色一つ変えない桐ヶ谷君に、なぜか少しイラッとしたのを覚えてる。
その怒りをぶつけるように、理乃先輩にあのよくわからない黒い感情とそんな感情を抱いた出来事、そして私が桐ヶ谷君に抱き付いてるのにも関わらず、ずっと落ち着いた表情のままでいることを長文で伝えた。
『事情はわかったわ。そうね……その感情が何なのか、それを教えるのは簡単だけど、それは鹿野さん自身が気付かなきゃいけないことよ』
『そんな~…』
『でも、誠に振り向いて欲しいなら、良い手があるわ』
『え!?何ですか何ですか!』
一体どんな?一緒にランニング?それともまたSUGOIDEKAIシュークリームを奢ってあげること?
しかし、次に送られて来たLITIは、予想外の物であった。
『撫でてもらいなさい。そうすれば、鹿野さんの黒い感情は消えるわ』
私はその文を見た時、思わず目を閉じてから、もう一度確認してしまった。
この人は何を言っているのだろうか?今日は桐ヶ谷君にずっと嫌な態度を取っている自覚はあったのだ。そんな急に甘えるようなこと出来る訳がない。
『そんなこと頼める訳ないじゃないですか!?桐ヶ谷君に嫌な顔されて終わるだけですよ!?』
『安心なさい。誠も鹿野さんと仲直りしたいみたいだから、ちょっと上目遣いでお願いすればイチコロよ。あ、出来れば涙目になりながらやれば効果覿面よ。誠は他の男子より枯れてる節があるけど、ちゃんと思春期の男の子だから結構効くと思うわ』
それを見て、散々どうしようか迷った挙句、それで桐ヶ谷君が私を見てくれるなら……そう思って、言われた通りのやり方で桐ヶ谷君にダメ元でお願いしたら、本当に撫でてくれた。
凄く気持ち良かった。今までお母さんとお父さん、凜華ちゃんにも頭を撫でられたこともあったけど、桐ヶ谷君に頭を撫でられた時は……全然違った。
あんなに頭を撫でられるのが気持ちいいと思ったのは初めてだ。
目を閉じて、その時のふわふわした感じを思い出すだけで幸せな気持ちになって、黒い感情も無くなってしまう。
心臓の音がうるさかった気がする。顔も凄くニヤけてたと思う。
「私……どうしちゃったんだろう…」
今までも、桐ヶ谷君の顔を浮かべるだけで凄く幸せな気持ちになっていた覚えがある。でも今は、早く明日になって、早く桐ヶ谷君に会いたいとも思ってしまう。
その想いは、私の中でどんどん大きくなっていく。
「……ん……なんか、お腹がジンジンする…」
今月の生理はまだ先のはずだ。だから別に身体が怠いとか、重いとかも特に感じない。
なのに、身体が段々火照って来て、お腹が……正確に言うと、お腹の下辺りが変な感じがする…。
初夏の季節とはいえ、まだ夜は肌寒い。風邪をひいてしまったのかもしれない。
「むー……明後日にはテストなのにー…。今日はもう寝ちゃおう……」
部屋の電気を消して布団の中に潜る。まだお腹がジンジンしてて、謎の違和感を感じる。
足をモジモジさせながら、なんとか眠りにつこうとする。
けれど、眠りにつこうとする度に桐ヶ谷君の顔が頭の中に出て来てしまい、眠ることが出来ない。
「桐ヶ谷君……桐ヶ谷君……桐ヶ谷君…」
日付が変わる頃までそれが続き、漸く眠りにつく時には、無意識に桐ヶ谷君と何度も口にしていた。
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翌日。目が覚めた時には昨晩の身体の火照りも無くなり、ジンジンしてたお腹も治っていた。
だけど、寝汗が股の所に集中していてビックリした。
人ってこんな寝汗のかき方するんだ…。
鹿野結衣が抱いた疑問。そして謎の寝汗。
一体その正体は何なんだ?(棒)
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