ドッグカフェ1
頭が半分以上寝てる状態で書きました。読みづらかったらすみません。
昼食を終え、デートもやっと終盤。正直、鹿野さんに楽しんでもらえてるか不安だったが、今のところはかなり楽しんでもらえている。
この人が元々どんなことでも全力で楽しむタイプだからかもしれないけど、とりあえず概ね問題はなさそう。
……ん?前みたいに『あーん』とかしたのかって?
したと思うだろ?残念ながらしていない。珍しく鹿野さんが自重したっぽいのだ。
ぽい、というのは彼女が明確に口にした訳ではないから。何度も頬を赤らめながら、自分がスプーンに乗っけたオムライス、デザートの苺パフェを交互に見ていたが、目を瞑って必死に何かを我慢している様子だった。
俺も恥ずいから催促なんてしていない。ていうかする訳ない、そんなキモいこと…。
今さら思春期を拗らせてる気がする俺には難易度が高い壁だ。
「うーん!美味しかったぁ!」
「満足なようで何より」
「うん!満足!」
ぺかーっと輝く鹿野さんの笑顔。サングラス持ってくればよかった。直視出来なくて思わず目を瞑ってしまった。
「あれ?どうしたの桐ヶ谷君。ここ日陰だから、眩しくないと思うけど…」
「……君は自分の笑顔が凶器であることを自覚した方がいいと思う」
「え?どういうこと?」
「……………はぁ~…」
「ため息!?」
どうしよ。「笑顔が可愛いってことだ」なんてことを言えねぇ…。
さっきまで普通に褒めることが出来ていたはずなのに、急に恥ずかしくなってきた。
原因はわかってる。たぶん鹿野さんへの気持ちが強くなっているからだ。
今までアタックされてきた分、こっちもとことんアタックしてやろうと思ったのに……好きって気持ちが大きくなる分それが難しくなるとは思わなかった。
中学の時にほとんど捨て去った思春期が戻って来ている気分だ。マジで今さら拗らせてんじゃん。
「ど、どうしたの?もしかして私、何か悪いことした?」
「違うよ。これは俺へのため息だ」
「? どういうこと?」
「……………カフェ」
「へ?」
鹿野さんの笑顔を褒めれない自分へのため息、なんて言えない俺は咄嗟に誤魔化した。
「ドッグカフェに行こうかと思ったんだが、鹿野さんは猫派かもしれないという考えが浮かんできてしまった」
しかしただ誤魔化すだけではない。最後に行く場所はドッグカフェにしようかと思ったのだが、よくよく考えれば犬猫論争問題があった。
俺はどっちも好きだが、どっちかっていうと犬派なのでドッグカフェに行こうとしていた。
しかしもし鹿野さんが猫派で、それも過激派だったらやべぇという思いもあったので、誤魔化すついでに聞いてみた。
「なぁんだ。そんなことなら気にしなくていいよ。私はどっちも好きだから」
「そうか。ならよかった。じゃあ、このままドッグカフェに行っても?」
「うん!いいよ」
ふぅー。よかった、鹿野さんが猫派の過激派じゃなくて…。
実はお姉が犬派の過激派なもんで、その恐ろしさを知ってる身としては凄く怖い質問だった。
今は落ち着いてるけど、中学の頃はマジで酷かった。毎日犬の動画で面白いのを見つけては、俺に見せつけに来たんだから。
――――――――――――――――――――――――
という訳で、ドッグカフェに到着。ここもゲーセン同様、二ヶ月くらい来ていなかったからかなり久し振りだ。
「いらっしゃいませ~。と、おや?誠君じゃないか。久し振りだね。最近は理乃ちゃんしか来ないから、君はもう飽きちゃったもんかと」
店に入ると、身長190センチは越えていそうな綺麗な人が、気さくにそう話しかけてくる。
この人は店長のマミさん。母さんの友人で、見た目はかなり若そうだが歳は母さんと同じ48だ。類は友を呼ぶとはこのことか…。
苗字は興味なかったから聞いてない。前にお姉が聞いてた気がするけど、忘れた。
「飽きないよ。ここの犬たちは、なまらめんこいからな」
「?」
「嬉しいこと言ってくれるね~。したっけさっそく席に案内するよ」
「??」
「受付済んでないけど?」
「気にしなくていいよ。静の息子価格で、二時間無料にしてあげるから」
「え?いいよ別に。他のお客さんに悪いし」
「なんもなんも。久し振りに誠君が来て、わや嬉しいからさ」
「???」
「はぁー。わかったよ。そう言うと聞かないもんな、マミさんは」
俺と鹿野さんはマミさんのお言葉に甘えることして、席に案内される。
その最中。犬たちが一斉にこちらに視線を向けて来ていた。
ふお~めんこい…。ここは大型犬のドッグカフェで、どっしりと構えて落ち着いてる子が多い。ゆったりとした動作で動く姿が実に良い。
あ。一匹のゴールデンレトリーバーが後ろを付いて来てる。めんこい。
……ん?なんか鹿野さんが目を点にしたまま何も喋らないんだが?
「どうした?鹿野さん」
案内された席について、アホ面みたいな顔になってる鹿野さんに声をかける。
すると鹿野さんは、とんちんかんなことを言い出した。
「なんかさっきの人との会話に、外国語混ざってなかった?しかも英語じゃなかったような気がする」
……何言ってんだこの人?バリバリ日本語……あ。
「あ~。すまん鹿野さん。あの人と会話する時は、つい方言が出ちゃうんだ」
矯正してもこればかりは治らん。普段からマミさんが使うから、どうしても使ってしまう。
「ほ、方言…?つまりさっきの会話は、日本語?」
「バリバリ外国語みたいな日本語だな。ごめんな、勝手に話を進めてしまって」
これでも久し振りのドッグカフェにテンションが上がってしまっていた為、マミさんのことを紹介するのすっかり忘れてたわ。
「あの人はマミさんって言って、俺の母さんの友人なんだ。あんな見た目だけど、とっくに五十路手前だ」
「あー。そうなんだ。私のお母さんも高校生みたいな見た目してるけど、あの人も相当だね」
店の奥で作業をしているマミさんを見ながら、鹿野さんは言う。
次に俺はメニューを開きながら、さっきの方言について説明する。
「さっきのは北海道弁だよ。母さんが道民でさ。その影響で、道民の知り合い相手には俺も北海道弁が使うようになったんだ」
「そうなんだ…。じゃあ、さっきはその北海道弁でなんて会話を―――」
「わふっ」
俺と鹿野さんが会話していると、さっき俺と鹿野さんの後ろを付いて来ていたゴールデンレトリーバーのユニが声を出した。
犬は声でアピールするのではなく、目や尻尾で訴えかけてくる。だけど時々こうして声で「構え」と言ってくる奴もいる。自分を人間だと思ってる説なんてあるが、これもその説が出る要因だろうか。
「よーしよし、久し振りだなぁユニ。元気にしてたか?」
「……(くぁ~)」
「欠伸しよった」
「あはははは!おっきな欠伸ぃー」
それから俺は鹿野さんと一緒にユニを愛でながら、さっきの方言について説明してあげた。
なまら:凄い
めんこい:可愛い
したっけ:じゃあ・さよなら
なんも:いいよ・大丈夫
わや:滅茶苦茶
わやは本来、嫌な気持ちを表す時に使いますが、普通の日常会話でも使います。
次は『俺が銀髪美少女に幸せされるまで』を投稿する予定です。
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