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 講義が終わってから、昨日出会った子ともう一度会えないかと同じ道を通る。

 孝昭は早く昨日の続きを進めたいらしくかなり急ぎ足だ。いや、俺の家に行くんだぞ?


「閃いたことを忘れないうちに早く行こうぜ」

「ちょっと待ってくれよ…」


 まぁ、その意見には賛成なのだが。それとなく周りを伺ったが、昨日の子は見当たらなかった。仕方なく、かなり前方の孝昭を追いかけるために走ろうとした。

 その時に横目に彼女を見つけてしまい、思わずその場でつんのめりそうになってしまう。


「あっぶね…。あ!あの、すみません!」


 この機会を逃してなるものかと、彼女の方へ近寄る。声をかけたもののナンパと思われたくもないし、どうやって話をしようか迷う。

 ま、いいや。


「昨日はすみませんでした。その…怪我はなかったですか?」

「ないわ。ありがとう」


 彼女は言葉少なげに答えて、スタスタと俺の前から立ち去ろうとする。


「ちょ…あ、えーっと…あの、歌に興味ありません?」

「え?」


 あ、ヤバイ。俺…何言っちゃってんの?頭はもうパニック状態だ。今の俺はめちゃくちゃ怪しい人物だな。

 しかし、彼女の足を止めることには成功したらしい。良かったのか…悪かったのか?


「…音楽は好きよ」

「!」

「歌は嫌いじゃないけど…人前では歌いたくないかな…。それで?あなたは?」 

「あ、あー…と。俺は櫟木悠斗って言います。この大学の1年生で…えーと…音楽好きです…」


 ああ、また…ホント俺何言ってんのか。ナンパとか出来るヤツの話術が欲しい。


「?よく分からないけど…私は2年の谷口花月。午後の講義前に準備があるからもう良い?ナンパならもうちょっと可愛い子狙って上手くやりなさいよ」


 そう言って谷口先輩はサッと俺の前から立ち去っていった。


「おーい。何してんだよ!」


 バシッと背中を叩かれる。孝昭だ。


「いてぇよ。あ、待たせて悪ぃな」

「いいけどさ。さっきの…昨日の子だろ?歌ってもらいたいって言っちゃった感じ?」

「ばっか。会ったばかりでそんなこと言えるわけないだろう。でも名前は聞いた」

「…別に付き合って欲しいとか言うわけじゃねぇし、直球でもいんじゃねぇの?」

「………」


 おおぅ…その考えはなかった。次の機会には試してみよう。


◇◇◇


 俺の家に着いてから二人でそれぞれが昨日の続きに励む…予定だったのだが、孝昭の一言によって変更となった。


「俺の曲アレンジしてくんね?」

「あ?…そりゃいいけど…お前はそれでいいのか?俺の手が加わると黄で配信出来ないぞ」

「おう。詞まで書いて思ったけど、これはオレが歌う曲じゃねぇわ。ミナに歌ってもらいたい。だからよ…」

「はあ?」

「だーかーらー!オレとお前で組んで赤で配信しようぜ」


 この『色の世界』で色の掛け持ちは禁止事項ではない。配信場所の色と内容が合っていれば問題ないわけで。

 それならば今回俺が作った曲もお蔵入りしなくても良いかもしれない。俺自身は歌わないし、谷口先輩に歌ってもらうにはまだまだハードルが高すぎる。


 ふむ、意外と悪くないのかもしれない。


「…それなら、ミナツキ用にしよう」

「おっ!さすが悠斗、話分かるわー」

「代わりにこの…昨日作った俺の曲に手を加えてくれよ。何かツキっぽい雰囲気になったから、お前がミナを加えてくれ。後で俺がもう少しツキ寄りに手を加えるからさ。それで?」

「それで、とは?」

「赤の俺たちの名前」

「んー…悠斗と孝昭だから、ユタカでいんじゃね?」

「また安直な…」

「お前が言うなっての」

「あー悪ぃ悪ぃ。いいよいいよ、ユタカにしよう」


 こうして新たに赤で配信…というか、ミナツキに歌ってもらうべく配信することになったのだった。

歌ってくれるかなぁ?

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