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影のない現実感の失った真っ白な世界で犬が孤独に吠える。
三つ首の異形は、誰からも観測されず、ただその場所に存在する。
一人にして複数たる彼らは互いに顔を見合わせ、息を漏らす。
電子の化身たる彼らは全身を震わせ、己の高ぶりを表す。【……っ】【……あ】【……ぐ】三つの意志は交錯し、その高ぶりを加速させていく。【やっと】【見つ】【けた】興奮は言葉に変換され、明確な意思へと昇格されていく。
白い怪物の形状が崩れ出す。構成していたブロックは震え、意志でも持っているかのように動き回り、再構成される。
己の欲望に生きるために最適な形状へと己を変化させていく。
無形の白は、少年へと収束する。
【やっぱり、この姿だねえ】
少年は、まるで人のように伸びをする。
そして少年は誰もいない白の中くるりと回る。
久々に己の中で沸き上がる好奇心をふふん、と面白がる。
【もう逃がさないよ。――お姉ちゃん】