君がくれた命〜Parallel Story〜
紅刃が死んでから、俺は人との関わりを捨てた。
失う事がこんなにも辛いなんて…
大切なモノなんて作らなければいい…
そうすれば失うモノ等何も無くて済む。
そうして部屋に鍵を掛けて閉じ篭り、外界から全てを遮断した。
引っ越そうが何しようが、俺は外に出る事はなかった。
「紅刃…」
誰に聞かせるでも無く、溜息の様に呟く。
涙は枯れてしまったのか、もう出ない。
カリカリカリ……
窓の方から何かを引っ掻く様な音がする。
何故か無性に気になり、引っ越して来てから数度しか開けた事の無いカーテンを開ける。
久々に見る自然の光
久々に見る蒼く澄んだ空
視線を窓の下側に向けると、そこには一匹の猫が居た。
俺は窓を開けて、猫を迎え入れた。
すると、そいつはづけづけと入ってきて、ベットの上で毛繕いを始めた。
「何だよ…お前…」
時折目線を俺に向けて来るが、気にも留めない。
一通り終わったのか、今度は俺に擦り寄って来る。
そして胡座をかいている俺の膝に乗っかってくる。
丸くなって俺を見上げてくる。
「みゃぁ〜」
何だよコイツ…
ってか寝やがった…
それから毎日そいつが来る様になった。
適当に相手をしてやって遊んでいると、必ず日没になると帰って行く。
不思議な気がした。
次第に慣れてくると、そいつは外で遊ぼうと誘ってくる。
仕方ないとばかりに重い腰を上げる。
何故かは解らないけど、外に出る事の抵抗感は消えていた。
外に出ると、まったく知らない光景が広がる。
考えてみれば、引っ越して来てから一度も外に出た事が無かった事に気付く。
そんな事を考えながら呆然としていると、あいつが俺の足元に擦り寄って来た。
そして先陣切って歩き出す。
辿り着いたのは小さな公園。その入口の脇にあるベンチにそいつは座った。
公園…か…
俺はそいつの横に座ると、昔を思い出す。
何故か変な時の記憶ばかり思い出す。
紅刃が思い切り蹴ったボールを止められなくて、ベンチに座ってた男の人にモロに喰らわせてたり、砂場で遊んでた子供達の作ってた山を崩して、作り直すのを手伝ったり…
失敗だけど振り返ると楽しい思い出。
思い出に浸っていると、すぐ脇をボールを追い掛けていく男の子が通り掛かる。
それが妙に懐かしく見えて微笑む。
だがふと思い出す。
その先は道路じゃなかったっけ?
慌てて振り返ると、ボールを追い掛けて周りを気にもせずに飛び出して行くと同時に、向かってくる車に気付く。
気が付いたら走り出していた。
そして飛び出した男の子の腕を掴むと、思い切り引っ張り、公園へと投げる様に腕を回す。
瞬間、けたたましいタイヤのスキール音が聞こえ、目を閉じる。
あぁ…そっか…こういう事だったんだ…
紅刃がどんな気持ちで、あの時俺を突き飛ばしたか解ったよ…
なのに…
駄目だな…俺…
紅刃…今までゴメン…折角紅刃が命掛けて守ってくれたんに…無駄にしてた…
でも…これでチャラだよな…
俺も…多分すぐそっち行けると思うから…
迎えに来てくれな…
終
読んで頂きありがとうございました。なんだか書いてる内に色々変わってしまいましたが、何とか終わらせられました。実を言うと、一番最初にこの話を思い付いた時の終わり方が、実はこんな感じの終わり方だったのですが、書いている内にどんどん変化していって、あっちの話になりました。んで、やっぱり大元のエンディングも書きたかったので、パラレルストーリーとして書かせていただきました。またまだ文才の無い自分で、読みずらい部分もあったかもしれませんが、精進しますので、意見やら感想やらを頂けたら嬉しく思います。では、此処まで読んで頂きありがとうございました。また執筆する機会がありましたら、是非読んでやってください。 でわでわ☆