ぼくと彼女の暮らしぶり
ジャンク市で女型のアンティークロボットを買った。
生き物じゃないけど女の子だ。女の子だ。
ぼくのような働いていないクズ人間には伴侶なんて求められようもない。かといって、愛玩用のアンドロイドなんて手が届かない。手が届く値段で購入させてくれたあのジャンク市のばあさんは良い人なのかもしれない。もう、会うことはないだろうけど、いつか会えたらまた礼を言おう。
その子を家に運びこみ、しばらくベッドの中で過ごした。
外気にさらされていた彼女はとっても冷たかったけど、ぼくの体を使ってずっと温めた。
ゆっくりと人肌のぬくもりが移っていった。このぬくもりを持続するには、ベッドに居続けるしかない。だけど、ぼくもずっとベッドで過ごすわけにはいかない。マットを干したり、シーツを変えたりと忙しくする必要がある。
それにその子は基本的なパーツはそろっていた。
しかし、いろいろと瑕疵があった。人工皮膜にひびが入っている。それは何かに殴りつけられたようだった。
「君は一体どんな目にあったんだい?」
簡単な下地を塗り、ひびを埋める。
「うん。もともと別嬪さんだったのが、さらに別嬪さんだ」
凛としたまなざしのようにも見えるし、焦点の合わない何かを見ているようにも見えた。
人形に話しかける。というのは、別に人形に話しているわけじゃなくて、自問自答みたいなものだと思う。
人形から返事があるわけではない。あるはずがないんだけど、ずっといろんなことを話した。ぼくがスープを飲むときはスープの感想を伝えたし、スープを売ってる流しの屋台の話もした。
たまにだけど。その子はぼくを見ているような気もする。
ぼくは見られていると思ったときにはその子に恥ずかしくない主人であろうとした。
動かない人形としばらく過ごした。




