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迷子日記  作者: 西向く侍
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運命か作為か。出会ったときの話。



 ジャンク市でぼくは運命と出会う。

 思えばあれは運命なのかどうか。もしかしたら誰かの作為があるのかもしれない。

 それくらいの出会いだ。

 兄に連れまわされるままにジャンク市を練り歩き、多くのゴミの中からそれを見つけた。

 ぼくは基本的に怠け者だけど、コンテンツも大好き。映画もドラマもアニメもコミックも楽しむ。

 その中にラブストーリーももちろんある。

 ボーイミーツガールというようなものだ。異性愛者を対象としたコンテンツをぼくは好んで見ていた。別に男の子も嫌いじゃないけど、興奮するのは女の子だった。ぼくは異性愛者。


 そういう風に自認してた。対象は生身の女。

 側頭部がぼこぼこに割れたアンティークロボット。

 薄いベールをかけた扇情的なロボットだ。この子は今までどんな扱いを受けていたんだろう。その子を見たときはぼくは全身に電撃が走った。股間はもっと強い電流が走ったと思う。

 辛気臭い顔したばあさんが店番をしている。脇の灰皿は吸い殻でいっぱいだった。

「……なにか買う?」

「その子が欲しい!」

 ばあさんは肺いっぱいに煙を吸い込んで、吐き出した後に続ける。

「なんで欲しいの? 売り物として並べてるけど、こいつは最悪だよ。起動もしないし、かといって修繕についても手間がかかりそうだから、手をつけちゃいないんだ。セクサロイドってんなら、もっと手ごろなのあるよ」

 そういってばあさんはよそに陳列している、作動するセクサロイドを勧めてきた。

「その子がいいんだ! ぼくには売ってくれないのか?」

「……売れないってわけじゃないけど。いくら出すのさ――」

 ぼくは持っている金と口座の金とすべてを申し出た。

「――全部、現金で用意しろ。電子マネーは許さない。金の音が好きなんだ」

 とても、いやらしい顔つきのばあさんだった。だけど、久しぶりに人間を見た気がした。

 ぼくは金を用意して、その子を連れて家に帰った。

 兄は驚いていた様子だったけど、何も言わなかった。


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