生きる為の戦い
時は現代より遠い未来
生物からは寿命の概念は無くなり、生きたいだけを生き。生に飽きれば死ぬ。そんな世の中へと時代は変わった。
医療技術の発達により人間は自らの好きな年齢で自分の見た目を止めることに成功し、事故死以外の死亡の原因は無くなったと言われている。
そんな世の中では人類は増え過ぎてしまい、いずれ地球は潰されると危惧した人類たちは、自らにIDによる管理をコンピュータにさせることにした
IDによる完全な管理をされた世の中では、夫婦だとしても自らの意思で子供を作ることを許されず。人口に空きが出来た際に予約待ちの順番で子供を作ることを許される。
長い生が許されているからこそ、このルールが実用化され500年以上の時が流れて皆に認められている
生活に自由というものは少ない。1日の予定の半分以上がAIに定められ、それ以外の行動はできないのである。しかし、それが正しいと全員が認めているため逆らうことなく皆その通りに行動する。
1日にある自由な時間は2時間から3時間ほど。その時間を友人と過ごしたり、家族と過ごしたりと現代も変わらぬような普通な過ごし方をする。
それ以外のAIに定められた時間は仕事に充てられる。だが、半自動化された世の中では仕事という名の管理作業。大したことはないが、この世界では皆その仕事にやりがいを感じ一生懸命に行っている。
そんな世界でもはみ出しもの、馴染めないものも極少数だがいる。そういうものは決まって古くから。この体制が確立される前から生きてきた人間が馴染まず、AIに目をつけられない程度に過ごしてきていた。
話はそんな老人のもとで過ごす。一人の女性から始まる…
海沿いの街。そこの堤防下で、さらには上に屋根のように道もできている。上から見ただけではそこに人がいることはわからず、波が打ち付けることからもそんな場所に人がいるなどとは誰も思わないだろう
そんな場所に一人。短い金髪の女性が腰を下ろしている。誰にも見つからないように隠れてるかの如く。
右手で小石を拾い少し遊ばせては、海に投げてを暇そうに繰り返している。
質素な身なりだが、現代に生きる人間は皆似たような服装をしている。過ごしやすい時期ならば半袖に長ズボンのみ。オシャレといえば寒い時期に上に着込むものを変える程度だ。
その流れの通りか、それとも彼女自身興味がないのか。打ち付ける波でズボンの裾が濡れるのを気にした様子もなくそこから出てくることはない。
「いつもと変わらない海。変わらない天井…」
そう零す彼女に表情と呼べるものはなく。何も感じておらず考えたくないと思われる。
そんな彼女の隣にコツン、と彼女が投げたものではない小石が投げられる。
「またこんな所におったんか。ワシのノルマは終わった。帰るぞ」
そんな彼女に話しかける初老の男性。服装は彼女と違い派手さに満ちている。アロハシャツに袖を通し、短パンとネックレスとブレスレット。それに髪色も赤と派手でいれば嫌でも目立つ見た目だ。サングラスまでかけているのは、彼の趣味であろう。
「わかったよ。けど又そんな派手な服装をして。何も言われないの?」
「言われないわけがないだろう。だから仕事中は真面目な格好をしておるよ。やっと1日の少ない自由時間だからな。この時間なら多少のこういう古い格好も許されるんだ。それに、こんな服装がわかる人間ももうそんなにおらんからな」
「ふーん…」
あまり興味なさそうにその話を流す。彼女は立ち上がると、目深に帽子を被り日傘のようなものを取り出して差してからその場所から日が当たる場所に出る。
「直ぐに移動するぞ。見つかればことだからな」
「わかってる」
二人はそう会話したのち、その場から立ち去っていく。早足に路地裏の方へと入り込んでいき、街中へと消えていく…