表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方に願いを言うために  作者: 紺青
第一章 始まり
7/61

 そこで、男が立ち上がり、部屋から出て行った。あとには、三人が残る。

 ノアはアリヤに、優しく微笑んだ。


「あいつのことは気にするな、夜風に当たりたいんだろう」

「あの人は……名前は何というんですか」


  ノアがああ、という顔をした。


「名前はロン。あんたが姫だった時の従者だよ」


 従者……自分にそんな人がいたなんて信じられない。向こうも、理解出来ないでいるのだろう。


「取り敢えず今日はもう休め。これからのことは、明日決めよう」

「これからのこと……?あの、私たちはローレアに……」

「悪いことは言わないからやめておけ。言ったろ?お前は死んだんだ。国に帰っても、混乱を招くだけだ」

「じゃあ私はどうすれば……」

「だから明日それを考えよう。なに、ここで一緒に暮らせばいい。それならあやつも文句は言うまいよ」


 ノアはそう言って両手を広げた。確かにそれなら、何も問題はないのかもしれない。でも……


 二階の部屋を借りれたが寝られず、アリヤは外に出た。外は、夜が深まったが、先程より星の光を強く感じる。ふと、泣きたくなった。その時。

 背後から、物音がした。振り返ると、ロンが立っていた。


「ロン、あなたも眠れないの」


 そう問いかけると、ロンは驚いた顔をした。なんでだろうと思うと、「名前」と言われた。そこで何を言いたいか気づく。


「あ、ごめん。ノアさんから聞いたの」


 ロンはその答えを聞くと、途端に嫌そうな顔をした。気まずい沈黙が流れる。


「私は帰るから、気にしないで」


 耐えきれなくなり 部屋に戻ろうとすると、腕を掴まれた。見ると、彼は何か思いつめた顔をしている。


「どうするつもりだ」


 その声は低い。最初に聞いた声は、もっと優しかった。きっと、本来は優しい人のはずだ。自分が彼をこんな風にしてるのかと思うと、泣きたくなってくる。


「貴方は私がいたら困る?でも私だって何で今自分がこうしているのか分からないのよ」


 そこで男は黙った。


「国に行く気か」

「そうだって言ったら?」


 そこで彼は、顔を上げた。


「貴方はもう、ローレアに行かない方がいい。また、無駄死にするだけだ」


 そう言って彼はアリヤから手を離し、部屋に戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ