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貴方に願いを言うために  作者: 紺青
第一章 始まり
6/61

アリヤは、じっと男を見る。彼は短髪の黒髪に、黒い瞳、黒の旅装を身につけている。体格は細身ではあるが、先程の俊敏な動きから、虚弱ではないことが分かる。

静かな夜のような青年だ。


その彼が今、自分を強く見てくる。その眼差しは決してその存在を認めないという、強い意思が感じられた。

アリヤはそれにも驚いたが、彼の先の発言にも驚いた。

姫?なんのこと?私?


彼の言葉に最初に反応したのは、ノアだった。


「おい、何を言ってるんだ、さっき話したろ、彼女は間違いなく、別人なんかじゃない」

「しかし、彼女は髪も瞳も、姫とは色が違う。他人の空似ですよ」

「そなたと私が姫を間違えるはずあるまい!髪と瞳が違うのは、彼女が契約した証だ!」

「高貴なあの方が、契約などするはずがない」

「あ、あの~…」


そこでアリヤは口を挟む。


「皆様、さっきから何を言ってらっしゃるんですか?オリアスは何者か、皆分かってるんですか。私のことも……知ってらっしゃるんですか」

「そなた、彼が何者か分からないで一緒にいたのか」


その返事はノアだった。リアは困惑しながらも頷く。


「はい、私が怪我してたのをずっと看病してくれたみたいだし……彼しか頼る人がいなかったから」

「怪我……か」


 そう言ってノアは立ち上がり、アリヤに近づいた。そうして彼女の白い服の襟元を覗き込む。


「え、ちょっとなんですか!?」


 アリヤは驚いて身を引くが、対するノアは神妙な表情をしている。


「間違いない。彼女は姫だ」


 男も何かを理解して、より険しい表情になる。何がなんだか分からない。

 ノアはアリヤを見下ろしながら、決意したように言った。


「そなたはローレア国第一姫、アリヤだ。敵国の人間により殺されたはずのな」

 

 そこでアリヤは目を見開く。

 そうしてノアは彼女に言う。


「そなたは、悪魔に魂を売り、この世に戻ってきた、それが何故かは、私には分からぬ」


 悪魔と言われ、オリアスが微笑んだ。アリヤはその笑顔で、全てが真実だと悟る。


 そこで男の眼差しの意味も理解できた。自分はもう、この世にいるべき人間ではないということにも。

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