辺境の街
街に着く頃には、陽は落ちかけ、薄暗いを少しを濃くしたような暗さだ。
俺たちは入り口からまっすぐに道を進む。
近くにある酒場からは酒盛りをしているのか、大きな笑い声が辺りに響く。
これからのことをクラルテにどうしようかと聞こうとしたが、クラルテが先に口火を切った。
「もう暗くなっちゃいましたねー。」
「宿に泊まるのだ!久しぶりにふっかふかのベッドで眠りたいのだ!」
キメラも何か言っている。
宿、確か宿泊施設のはずだ。
なぜ泊まる必要があるのか?
「クラルテ」
「はい?なんですか?」
「なんで宿に泊まる?」
「ああ、それはですね」
クラルテは歩きを止め、俺の方に身体ごと向く。
「安全で寝心地の良い場所で寝るためです!」
寝る?
寝るっていうのはなんのことを表す言葉なのだろうか?
俺は多分だがした覚えがない。
「寝るってなんだ」
「えっ?寝るは寝るですよう。陽が陰って夜になった時、1日の体の疲れをとって、次の朝にリフレッシュした気持ちになるんです。」
なるほど、わからん。
とりあえず俺はクラルテについていく。
キメラがまたもや何か言う。
「あそこの宿屋がいいのだ。俺っちの勘がそう言っているのだ!」
メインの大通りから抜け道のように細い道にある古びたドア。
そこを尻尾の蛇で指し示す。
ドアも気になるが、蛇も気になる。
そんなことを考えながらも、俺たちはキメラが言っていた、宿屋かわからないほど古びたドアの前に行き、開く。
ちりーん
「おおう、客とは珍しい。」
中に入った瞬間にそんなことを言われた。
俺は気にせずに内装を見る。
宿屋の内装は古びたドアと相対するようにピカピカだ。宿屋の支柱もどっしりしていて安全感が増している。
そして俺たちは声をかけてくれたカウンターの奥の老人の方に向かい歩く。
そしてクラルテが言う。
「すみませーん。二泊ほどしたいのですが、宿は空いてますか?」
「ああ、空いているさ。こんな辺鄙な店にようこそ。朝と夜の飯付きで二人なら大銀貨1枚だ。」
「ええっ!そんなに安くて大丈夫なんですか?!」
「大丈夫だから経営できてんのさ。ほら1号室がお前たちの部屋だ。」
老人は鍵をこちらに手渡しまたゆっくりと客を待っている。
「ここ、いい宿ですね!」
「そうなのだ!裏情報までバッチリお任せなのだ!」
部屋に向かいながらクラルテたちは話す。
他愛もない話をしながらも部屋に入る。
ベッドが二つ、ガラスに窓があり自由に開閉できるようだ。雰囲気も悪くなく、これぞ宿屋という感じだ。
俺は初の宿屋だがそう感じさせる空気が周りを漂っている。
「今日はもうご飯を食べて寝ましょう」
クラルテが提案し、皆が肯定する。
早速とばかりに俺たちは荷物を置き、食堂へ向かった。