魔法と出会い3
木から落ちてきた茶色い物体が喋った。
「ひどいのだー!俺っちがぐっすり眠っていたのを邪魔されたのだー!」
なにか喋っている。
ということは生き物のはずだ。
クラルテの顔を見ると、クラルテと目があった。
「なんですかね?あれ。」
「わからない」
クラルテにわからないことが俺にわかったことがあっただろうか?
クラルテが耳打ちしてきた。
「とりあえず謝っておきますか?それとも放置ですかね?」
「放置」
俺は即答する。
早く教会をまわりたい。
俺たちは止まっていた足を再び動かした。
目指すは辺境の街。
「待つのだー!お前たちー!」
いざ出発、街は見えている。
あと数十分ほどで着くだろう。
足を前に出そうとした時、気づいた。
足が動かない。
俺は自分の足を見る。
すると鱗のようなものがついた長い紐が、足に絡まっていた。
「俺っちの話を聞けー!」
どうやら聞かなければならないらしい。
俺はもう一度クラルテに目配せをしてさっきの木から落ちた茶色い物体を見る。
よく見ると茶色というよりは薄茶色に近く尻尾が異様に長い。
さらによく見る。
俺の足に絡まっているのは、その生物の尾っぽだった。
クラルテがあいつを見て言う。
「ああ、あれは野生のハムスターですね。先を急ぎましょう。」
「違うのだ!キメラなのだ!」
ハムスターがキメラと言っている。
俺はこんな生き物も存在するんだなと思った。
二重人格というやつだろうか?
「あれは二重人格というやつか?」
「魔王様、それは意味が違いますよ... それよりも! 元気なハムスターが喋ってますよ。珍しいです!」
「尻尾を見るのだー!」
ハムスターの尻尾を見る。
いつの間にか俺の足についていた尻尾がハムスターの方に戻っている。
「わーすごい!掃除機のコンセントプラグみたいにしゅるるーってなりましたね。」
「そこじゃないのだー!」
俺は尻尾を見ていなかったし、情報過多すぎて、もう訳がわからないよ。
「ほら、尻尾が蛇なのだー!これがキメラの証拠なのだー!」
「そういえばお母さんに聞いたことがありますね。尻尾を見て蛇ならハムスターではないって。」
「だから言ってるのだー!俺っちはキメラなのだー!」
「わかりました。それを信じます。キメラですね。」
「そうなのだ。やっとわかってくれたのだ...」
どうやらキメラで落ち着いたらしい。
世界は広いと思った。