風を吹かそう
船が島を離れ1日が経った。
乗り込んだ日は部屋の振り分けやら荷物の整理やらで忙しかった。
日当たりが強い中、俺たちは甲板にいる。
船の進むスピードで潮風が当たり、湿っぽいが涼しい。
「魔王様、この船はエンジンと帆の両方の力で進むそうですよ!かっこいいですね!」
「そうなのか」
かっこいい。
うん、船はかっこいいんだ!
そう頭にインプットしておこう。
「魔王様...向かい風なのかもしれませんね。帆がしぼんでます」
「うむ」
確かに帆に元気がないように感じる。
「魔王ならできるはずなのだ!これしきのことは!」
カプは相変わらず、俺を煽る。
もしかしたら愛情表現なのかもとポジティブに考えておこう。
向かい風だからしぼんでいるだけで、後ろから風が来れば膨らむはずだ。
俺は帆の仕組みを理解したつもりで魔法を使う。
要は追い風、「後方からの風」をイメージして魔法を使えばいいはずだ。
俺はそれをイメージして魔法を放つ。
びゅおおおう
「のだ〜!」
突然の風にカプが前に飛んでいく。
そして突風は船の帆をふくらませる。
周りの景色は海であるため景色は変わらないが、船が進む音が激しくなった。
速度が上がったようだ。
「おお、いい風じゃあねえか!」
船乗りは俺が起こした風を気に入ってくれている。
「気持ちのいい風ですね〜」
クラルテは髪を逆立てながら、のほほんと呟く。
クラルテほどの長さがある俺の髪も上下左右縦横無尽に暴れていて、かなり鬱陶しい。
「ゴム入りますか?」
「ああ、くれ」
クラルテにもらったゴムを使い後ろで一まとめに結わえる。
「ありがとう」
「どういたしまして〜」
クラルテはまだ風を感じてのほほんとしている。
俺はなんとなくもう一度風を起こす。
びゅおおおう
涼しい。
前からくる風と後ろからくる風に挟まれて、かなり涼しい。
目の前ではカプが必死に甲板に掴まって転がらないようにしている。
楽しんでいるカプを俺は拾い肩に乗せる。
突風は最初だけあとは涼しい追い風だ。
「疲れたのだ...」
楽しむことは疲れることでもある。
俺は頭にメモをしながら、クラルテとともにのほほんとする。




