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4-26 報復

「ただいま~」

「おや、お帰り」


「なんか変わった事なかった?」


「特にないねえ。あ、淳がテストで100点取ってきたわ。天変地異の前触れかねえ」

 やめてよ、そういう事言うのは。ダンジョンが攻めて来たら、どうすんだい。


「淳は?」

「デートなんじゃないかい? 中間テスト終わったから」


「そういや、もうそんな季節か」

 我が家は平和なようだ。俺の送ったレポートの結果次第で、異世界行きもまた荒れそうな雰囲気はあるが。


 今日は金曜日だ。次回異世界へ行くのは、さ来週の月曜日あたりかな。明日はまた買い物に行っておくか。


 栄のデパートで、今度は九州物産展なんだよな。親父がそっち出身なんで、好物を仕入れてくるとしよう。


 九州方面は仕事が少ないのか、仕事口の多い愛知県で働いていたり、自衛隊にいたりする人が非常に多い気がする。


 俺ものんびりしよう。ここには、ドラゴンなんて出やしないからな。


 ドラゴンは出なかったが、やっかいなものが現れた。週刊誌だ。俺の写真がでかでかと載せられて、ある事無い事書いてあった。完全に悪質なデマ記事だ。


 課長から電話でお知らせがあった。へー、面白いじゃないか。まさか、俺に喧嘩売ってくる馬鹿がいるとは。


 日本の「安全保障」や「国家非常事態」に関わる案件なので、俺に対する無闇な報道は差し控えるようにマスコミに対しては、日本政府から要請というか通達があった。


 法的な強制力は無いものの、国家に逆らうと色々都合が悪いので、通常はこのような要請にわざわざ逆らう事などはしない。基本は皆無だ。誘拐事件の報道を当初控えるのと同じようなものだ。


 やらかしたのは、もちろん某国の息のかかった連中だ。前からそう言われていたそうだが、なるほどな。


 本当にまあ、あの手この手使ってくる。他のマスコミ連中も呆れるを通り越して、とばっちりを避けるために、その週刊誌から距離を置いているらしい。よし潰そう。


 取材のためにかなりの違法行為をやっているらしくて、そこを追及してやれば雑誌なんかあっさり廃刊にできるが、ここは会社ごと潰す事に決めた。


 普通なら、それでもやられないはずだが、アメリカから圧力がかかれば即日消える運命だ。


 ここを徹底的に叩いておけば、行動に出てはいないが某国と繋がる他の連中も震え上がって引っ込むだろう。さっそく、その場で中将に電話した。


「すいません、実は週刊誌が俺の記事を好き放題に書いています。こいつら、確か某国と繋がっているはずなんで、会社ごと潰しておいてください。裏でたくさん悪さをしているらしいですから簡単でしょう? CIAに宜しく。

 あと日本政府にも、違法行為を盾に銀行からの融資を止めさせるように言ってください。貸し剥がしもお願いします。やってくれないのなら、今後一切日本政府には協力できないと」


「そうか。わかった。『我々の』利益を阻むものには、容赦はせん。元々在日米軍は、アメリカ本土防衛を含むアメリカの国益を守るために存在するのだ。そのために日本を守る、という話なのだからな。我が国の国益を損なうものをアメリカ政府も容認せんから安心するがいい」


 はっきりと露骨に言ってくれるが、俺が元々そういうような認識を持っているのを知っているからだろう。やっかいな事は他人に丸投げして終了した。割り切りって大事な事だよな。


 翌日、俺は買い物に行くために名古屋駅まで出たが、歩いているといきなりフラッシュを浴びせられた。そして、下卑た顔をした記者が前に出て無礼な言葉を叩き付けてきた。


「あんた、異世界から色々持ち込んでボロ儲けしてるそうじゃないか。税金も払ってないんだってなあ。そこいらへん、お話を聞かせてもらおうじゃないの」


 相手は新聞社の名を名乗り、下衆の極みのような笑いを浮かべてきた。


 今まで新聞の相手をした事はあったが、どこも皆丁重な扱いだった。こんな無礼を受けたのはマスコミ関係では初めてだ。以前の異世界行きの時には、おかしな奴らもいたけどな。あれとは、また違う。


 そして、俺もスマホでカメラマンと記者の写真を撮り返し、嘲笑し返す。

「いいだろう。その喧嘩買ったぜ」


 俺は追加でエバートソン中将にその場で電話して、奴らの顔写真も送った。社名も告げておく。


「というわけなので、こいつらもやっちゃってください。どうせ某国の犬ですから、お好きなように捌いてかまいません」


「今、誰と話をしていたんだ?」

 急に不安になったらしくて、そいつは問いただしてきたが、俺は相手にしない。


「すぐにわかるさ」


 俺はファストをかけまくり、超スピードで歩き去り、あっという間にそいつらを置いてきぼりにした。おのれ、許すまじ某国。


 俺は、名古屋駅から少し離れた場所に行き、マンホールの前に立った。ファクラの力で中を確認する。


 有毒ガスが溜まってはいないようだ。たまにあるんだよな。下から鎖でロックされてもいない。俺はある物を取り出した。


 それは……マンホールの蓋を開けるための道具だった!


 俺ってなんでも持っているのね。マンホールリフター、マンホールフック、マンホールキー。色んな場所でいろんな呼び方をされている物のようだ。


 旧型タイプでは開かなかった。さすが、腐っても名古屋市だな。だが、新型というか、最近のマンホール専用のも持っている。


 実はマンホールの蓋集めが最近の俺のトレンドだ。もちろん、勝手にマンホールを開けまくっているわけではない。危ないだろ。


 あくまで、マンホール関係の趣味の品という事で。俺は断言する。こんなものを集めている大富豪は世界に俺しかいないと。


 これだって、結構な値段がするのだ。気に入ったマンホールを見つけると、製造元を調べて発注するのだ。我ながら馬鹿じゃないだろうか。


 だが、今日は開けた。危険なので素人が勝手に開けられないように、開けにくくなっているのに加えて、土砂が隙間に詰まっていて長年空けてなかったりすると簡単にはあかない。


 だが、人間重機と化した俺は、奴の抵抗を許さなかった。


 わずかな躊躇いをみせた後、ずりずりと周りに詰まった土砂を払いながら、そいつは俺のパワーに屈して持ち上がった。


 名古屋オリジナルの、ちょっと珍しいタイプでまだコレクションしていないので、ついでに複製させてもらった。


 そして、下水に向かって弓を引き絞った。仮に誰かが見ていたとしても、他の人からは何をやっているのかわからないだろう。だって、魔法で作り出した見えない弓を使っているのだから。


 もちろん、本物の矢は使っていない。魔法のイメージで作りだしたものだ。これは不可視の状態で使う事ができる。


 初めは、本物の弓に不可視の魔法をかけて使ってみたのだが、これを弓も矢も無しで使ってみたのだ。

「マジックアロー」


 俺は魔法矢をマンホールに向けて、撃ち込んだ。他の人間からは、一連の動きが全く見えない。


 逆に青白く発光させて、目視で見せ付ける事もできる。アローブーストから派生して使えるようになった魔法だ。


 強烈な破壊効果を齎す事は可能だが、今日の目的はちょっと違う。俺が放った見えない魔法の矢は、下水道の中を誘導されて、すっ飛んでいった。


 ファクラ。いわゆるゲームでいうところのシーフの適性が高いようなので、そのへんの魔法も使いこなす。


 下水道の構造を探知し、それに沿って矢は突き進む。万が一にも人に命中したりしないように、集中して感知しながら誘導する。そして、その行き先は!


 言わずと知れた、某国領事館だ。これは絶対にやってはならないことなのだが、そこをあえてやるのが俺だ。これで、俺も今日から立派なテロリストだ。


 俺はマンホールの、はめ込み部分をアイテムボックスで掃除してから、きっちりとマンホールの蓋を閉めた。これ、ちゃんとしておかないと蓋が開きやすくなるんだ。


 事が起きたのは、名古屋駅から離れた某国領事館なので知ったこっちゃない。


 俺はアリバイのために、わざと落とした財布の紛失届けを、まったく時間を置かずに名古屋駅の派出所に届け出た。これで完全犯罪の出来上がりだ。


 あの矢には、命中すると凄い衝撃を与える効果を持たせてある。何も破壊したりはしないが、建物が凄い衝撃を受けて、中にいる人間が驚くのだ。


 今日は土曜日なので一般人はいない。物が落ちもしない程度の効果で、中にいる人間がかなり驚くというだけの代物だ。


 奴らも、俺の仕業だと、すぐに見抜くだろう。他にこんな事する奴がいないからな。


 ああ、すっきりしたぜ~。あいつらめ、嫌がらせばっかりしやがって。次は、何の嫌がらせで仕返しするかな。目には目を。


 俺は鼻歌で買い物に向かった。ちなみに、俺がわざと落とした財布は、もう交番に届いていて驚いた。拾ってくれた人、お手数かけました……。


別作品ですが、「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

も書いております。

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