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4-12 新メンバー加入

 俺は会社で小山田課長に、今回の内容について説明していた。


 課長はキャスター付きの椅子に反対向きに座ると、背もたれの上で腕を組み、前のめりになっていた。


「また、えらい事になっているな。で、どうするんだ」


「とりあえず、クヌードの儀式だけでもやめさせないと、うちがこのダンジョンに飲み込まれます。もちろん、その前にこの会社や地上の米軍駐屯地もです。


 うちは北名古屋市ですから、その時はダンジョンが名古屋市付近にまでかかる事になるでしょう。へたすると名古屋市や高速ジャンクションも飲み込まれます。新幹線・JR・私鉄・国道1号を含む主要国道なども飲まれていくでしょう。


 中央高速による迂回も出来ませんし、名古屋空港や中部国際空港もアウトで、名古屋港や三河港がアウトなら複数の自動車メーカーも輸出が困難になり、メーカーの工場までアウトになっていきます。


 何せ40ダンジョン全てが拡張し暴走するでしょうから。少なくとも、太平洋側は完全に物流が麻痺し、へたすれば東京さえ孤立し麻痺、最悪は東京自身が迷宮に飲まれます。その場合は日本経済が終了しますかね。今のうちに手持ちの円はドルにでも変えておこうかな」


 課長は長く、ふーっと嘆息すると椅子の向きを正した。


「冗談事ではないぞ。そんな事になったら日本は半分終わる。色々マズイことになるぞ。お偉方はなんていうかな。もう報告書は出したか?」


「ええ。米軍と自衛隊と両方に。なんて言ってくるか楽しみですよ」

「やれやれ、沙汰を待つか」


「俺、今日は家で説明しておかないと。疎開の準備もしてあるんです」

「なんだと?」


「ビジネスジェットを1機買っておきました。幸い、未使用機市場に1機太平洋横断機が出ておりましたので。全額前金で大至急取り寄せました。今、小牧に置いてあるんです。ハワイに別荘も買っておきました。日本が無事だったら、また遊びに来てください。歓迎しますよ」


 課長は呆れたような顔で見ていたが、頭を振った。


「まあ、いいさ。また向こうへは行くんだろ」

「ええ、バイヤーと取引してからね」


「今度は絶対にお偉方が行くと言って聞かないぞ」


「ええ、構いませんがね。たぶん、行けませんよ。奴等が、そんな連中を連れていくとは思えない。俺には世界を越える能力はありませんので。魔物に連れていってもらっているだけの身分ですから」


 翌日、エバートソン中将に呼び出され、俺はダンジョン21米軍地上駐屯地ブラックジャックへと赴いた。


「やあ、大変な事になっているようだね。だが、そこの国の王様と話が着いたのはいい事だ。取引も、グラヴァスの領主を通してするのだな。しかし、その儀式とやらを中断させた場合、ダンジョンはどうなるのかね」


「そいつばっかりは、わかりません。ダンジョンが必要無くなった根は不要と切り捨てて、地球側ダンジョンが消滅するのか。それとも、伸ばした根っこは元のままで、通路も開くのか。その時にダンジョンはまだ私を向こうへ連れていってくれる気があるのか。いずれにせよ、その時が来てみねばわからないのではないかと」


「まあ、今のうちに欲しい物は手に入れておけば間違いないという事だな。では、取引といこうか」

 合図をされたバイヤー達が、隣の部屋から現れた。


 今回は王都で手に入れた物も多く、本来なら手に入らない物まで王様が用意してくれた。


 そのせいか、高めの値段となり5000億ほどになった。これで俺の手持ちは1兆2667億ほどになった。ここから飛行機代とかの支払いがある。クレカで買ったからな。


 これでも、ちゃんと商売になるから恐ろしい。世界には、とんでもない金持ちが犇いているのだ。グループ全体の総資産が2京円なんて試算される一族もあるらしい。


 10億ドル以上持っているとされる金持ちも世界で1,000人を遥かに上回っている。


 実際には、もっと人数が多いのだろうし、もっと持っているはずだ。ただの経済誌の推測調査に過ぎないのだから。


 彼らはいつ手に入らなくなるかもしれない異世界の産物に虎視眈々なのだ。まだまだ奪い合いの様相を示している。1人あたりの購入額が半端じゃないと聞く。


 もう地球のありきたりには、興味が薄いらしい。特に年齢の高い人からの引き合いが多いそうだ。先が短いと思うと、ありあまる金は生きているうちに使っておこうという事なのか。


 俺にはまだその気持ちがわからない。あるいは半分くらいは投資のつもりか。


「まあ、もしダンジョンが暴走して、拡張してしまうことにでもなれば、米国にとってもあまり嬉しい結果にはならないのではないかと思いますが」

 俺は、そう言い置いてから御暇した。


「ただいまー」

 家に帰って、少しのんびりした。


 全く。返ってきたかと思えばトンボ帰りで。今日は平日なんで御袋以外はいない。昨日、ダンジョンの話をしたら家族みんな目を白黒していたが、一応万が一の場合は退避する事を約束してくれた。


「おや、お帰り。今日はもう上がりかい?」

「ああ、もうずっとドタバタしっぱなしだったからね」


「ダンジョンがここまで来ちゃったらどうしようかねえ。ここは離れたくはないんだけど」


 お袋が、なんともいえないような顔をしている。名古屋で生まれ育ったので、やや難しい顔をしている。このへんの人にはありがちな事だ。


「俺だって一緒さ。ただ、どうなるかなんてわからないんだ。やるだけは、やってみるさ」


「あんまり危ない事はやめておくれよ」

 お袋も複雑そうな表情で小言を言い添えた。


 さて、のんびりしますか、と思ったところでスマホが鳴った。嫌な予感がしたが、電話は第10師団の師団長からだった。


 また、なんだって今頃。何かあったらと思い、番号だけは一応交換しておいたんだけど。


「ああ、鈴木か。報告書を読ませてもらったぞ。えらい事になっているな」


「まあ、そうですねえ。どうしたもんかと。多分、次に王都に行ったら何かまた情報があるのではないかと思っているんですが。その用件だけですか?」


「実は非常に言い辛いのだが……」

 あ、この奥歯に物が挟まったような話し方は。


「また、お荷物を乗っけていけというお話ですね。日本の危機にお邪魔虫は要りませんよ。自分が生きて帰ってくるだけで、精一杯です」


「うむ。政府がどうしても、連れて行かせろと言ってきかんのだ」


「どんな人です?」

 なんとなく想像がつくぜ。

「うむ。女性の委員の方でな」


「はい、却下」

「そ、そう言わずに頼む。試して駄目なら諦めてもらうから」


「わかりました。ただ、その方も銃を持って、自分の身は自分で守るという事で」


「それは無理だ。出来れば女性隊員をつけるから、なんとかしてくれ」

 師団長も苦しそうな声を出す。


「正気ですか、師団長。今回も飛行魔物3種、盗賊に、王様まで出ましたよ。いきなり謁見までしちゃいましたしね。あちこちで邪神過激派が暴れていますし。王都でも、騎士団連中が目の色を変えていますよ。閉口しました。


 テロでいっぱいの中東とかとそう変わりません。しかも戦争映画ではなくて怪獣映画だ。自衛隊が行くのは当然のキャストって感じでしたね。そんなところへ、非戦闘員の女性を連れて行けと?」


 俺の話を聞いて、ますます頭を抱えている師団長がいた。


「とりあえず、俺の充電や仕度がありますので、すぐには行けませんよ」


「もう今から、いつ行くんだ、早く連れていけとか煩いんだ。今回は、また色々とまずい事情があって、自衛隊の予算にも影響しそうでな……」


「うわあ。国防を巻き添えにしかねない悪夢ですね」

 これはちょっと、いやそれどころでなく厳しいか。仕方が無いなあ。


「そういう事なんで、今回はなんとか頼めないか?」


「じゃあ、豊川の川島三等陸曹を呼んでください。あいつなら猛者だから、なんとでもしてくれるでしょう。この間、顔を合わせたら異世界へ行きたがっていましたよ」


「わかった。川島は呼んでおこう」

「それではまた」


 やれやれ。ゆっくりしようかと思ったら、これだよ。

 とりあえず、買い物に行く事にした。


別作品ですが、「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

も書いております。

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