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1-8 資金調達

 外にはこういった、帰還した怪我人のための救護所が用意されている。負傷した彼もそこへ連れていった。俺よりも大柄で、ぐったりしているために重いのなんの。


 すげえ筋肉つけてやがるな。羨ましくなる。よく見るとそれなりにイケメンだ。髪は薄汚れているのだが、ところどころ綺麗な金髪が覗いているから、それが地毛の色だろう。


 元自衛隊で今も力仕事をしているのでなかったら、悪いが放り出しているところだ。最後まで付き合った自分の根性を褒めてやりたい。


 さすがに、こいつを水害地区で膝まで浸かりながら背負って歩けと言われたら泣く。自衛隊は厳しいが鬼ではないので、さすがにそこまでは言われないが。


 2人で担架かな。思わずレンジャー訓練のバディの顔を思い出した。今こそ奴にいてほしい。あいつは射撃表彰持ちだった。


 だが、この肩を貸していた奴は、魔物に追われる中で仲間を見捨てたりはしなかった。それが、俺が彼らを助けた理由だ。肩を貸している彼も、怪我をした人によく似ている。きっと身内なのだろう。


 俺は彼らに別れを告げて換金所にと急いだ。2人共礼を言ってくれていたみたいだが、悪い。全然わからないよ。俺はジェスチャーと笑顔を返すにとどめた。


 その足で換金所に行ってみたが、並んでいる。あ、そういえば、みんな「部位だけ」を差し出している。これは、まずいのではないだろうか?


 自分の番が来たので、どんっと、山盛り例の怪物を出したら、周りからひどく驚かれた。そして店主は文句をいい、周囲の奴らが俺を指差して笑っている。やっぱり駄目だったか~。


 さっきの女の子が走ってやってきて、右手の人差し指を腕ごと振るようにして、店主や周りの連中に大きな声を張り上げている。俺のために、文句を言ってくれたようだ。


 世界は違っても、身振りはそう変わらないものだなと、場違いな感心をしながらその様子を窺っていた。


 何がどうまずいのか、色々わからないが、女の子も人差し指を自分のこめかみに当てながら、うーんという感じにしていた。


 次に、魔物を仕舞うようにジェスチャーをしたので、それに従った。


 彼女は意思が通じた事に満足したのか、素晴らしい笑顔で俺の手を引いて、引っ張っていった。なかなか可愛い子なので、ドキドキしながら次の展開を待っていた。


 この子も、さっきの彼らとよく似ている。3人とも兄妹か血縁者なのだろう。それを助けてくれたので、よくしてくれているだけなのだ。あまり過大な期待を抱くのはよそう。


 そして……やはりというべきか、連れて行かれたのは少し離れた場所にある、血の匂いがぷんぷんする殺伐とした場所だった。彼女は奥に案内してくれて、大声を出した。


 何故か、そんな場所には似つかわしくない小さな子供達がわらわらと湧いてきた。よく見ると、みんな血で汚れたような服を着ている。


 ん? なんか、ケモミミのようなものを生やした子もいるな! 髪の毛や耳も薄汚れていて、パッと見に気がつかない。


 最初に見かけた狼人間と違い、この子達って、耳以外は人間と変わらなさそう。って良く観察したら尻尾があったわ。


 彼女は、ここへ魔物を出すようにというようなジェスチャーをしたので、全部出したら頭を抱えた。子供達の目もまん丸になった。あ、ダメだったらしい。


 俺は魔物を一旦仕舞ってみせた。彼女は、指を3本だけ立てて、こちらへ見せた。「わかるかしら?」と言いたげに、俺の顔を真剣な目で覗きこんでいる。

 

 俺は、少し間隔を開けて、3つ魔物を並べていった。はちきれるような笑顔が返ってきて嬉しかった。


 やれやれ、やっと少しは通じたわと言いたそうに汗を拭いていた。なんだか、申し訳ない気持ちになったのだが如何ともしがたい。


 子供達は、うわーっと魔物に取りすがり、凄い勢いで解体していった。最初に切り付けて血抜きをして、後は、切り裂き、突き刺し、血は吹き上がるって感じで、解体していった。


 皮を剥ぎ、肉を断ち、切断された腱が垂れ下がった。どれもこれも血塗れだ。うわああ。


 当然その返り血を浴びて子供達も血塗れになっている。だが、嬉しそうに笑っているのは、仕事が手に入ったからか。


 骨が砕けるような音がして、部位が取り外されていく。残虐映画のようなシーンをリアルで見学する羽目になった。見ているだけで気分が悪くなってきた。


 だが、本当ならこれは自分で倒したその場でやらなければならない仕事なのだ。それがここで生きるための掟だ。


 この先大丈夫だろうか。一応カメラは回してある。車に乗っている時も、ドライブレコーダーは回していたし、町の様子も撮影しておいた。


 程なくして、俺の前には剥ぎ取られた血まみれの、魔石!? 毛皮、牙、爪、目玉! が持ってこられ、残りの肉や内臓に骨とかは子供達の取り分のようだ。これの肉って食べられるのだろうか。


 リーダーなのか? 少し大柄な感じの男の子が指揮を取っているようだ。この子は普通の人間っぽい感じだ。身振り手振りで、代表して俺に話しかけてきている。

 

 御代わりを要求しているようだったので、もう3体出した。早速スプラッターな光景がリピートされて、その分の素材も持ってきてくれた。


 そして、代表の男の子が両手を体の前でクロスさせた。本日は終了という事か。多分彼らの取り分を捌ける量に限りがあるのではないか。残り47匹もある。自分じゃ、とてもじゃないが、バラせそうもない。


 自衛隊の特戦の連中なら、やれるかなあ。俺に解体できるのは、ちっちゃいヘビや蛙くらいまでだ。あ、ニワトリもやったっけ。また明日来るか。


 俺は奴らを呼び止めて、手招きした。複製に成功した飴を、チビどもに配ってやった。


 綺麗に包装された飴を最初不思議そうに見ていたが、俺が包み紙を解いて口に放り込んでやったら、なんか小躍りしている。美味しかったようだ。他の子も一斉に真似して飴を口に放り込んだ。


 頭に耳が映えている奴は、ぴょこぴょこ動いていて面白いな。案内してくれた彼女も嬉しそうにしている。彼女にも飴をやった。


 優しい子だな。おそらく、この子達のために俺を連れてきたのではないか? あと、俺のためにも。


 さっきの店の前で3人ほど並んで待っていたので、少し待って素材を見せた。親父はかなり足元を見てきたが、女のミリーというらしいが、凄い剣幕で怒鳴り散らしたので、倍近い金額に修正された。おい、親父……。助かったよ、ミリー。


 彼女は、にっこり笑って、指2本をブイの字にして笑顔とともに突き出した。


 ピースサインって、こっちにもあるんだな。俺は笑顔とサムズアップで答えた。彼女は手を振って、笑顔で走っていった。また会えるよな。いや会いたい。


 感謝の眼差しで見送って、金を数えてみた。さっきの相場は覚えておいた。この店で売買するなら、この値段でいいだろう。嫌なら他所に行けばいい。


 魔石が金貨(多分)5枚。毛皮が銀貨50枚。焦げたり穴だらけだったりだから、仕方が無いな。


 牙が1匹分で金貨1枚。爪が20本セットで金貨1枚。目玉が2個で金貨4枚。目玉が高くて、びっくりだ。この魔物だけなのだろうか。案外と毛皮以外は損傷が少なくて助かった。


 都合、金貨69枚だったが、金貨60枚と銀貨900枚にしてもらった。


 意外と、もらえて助かった。きっと、集団で行動する手ごわいやつなんだろう。俺だって、手持ちの武器がなかったら、どうにもならない相手だ。


 はっきりとはわからないが、昼に食った飯を基準に考えると695万円くらいに相当するはずなのだが、物価の基準が物によって一定ではないだろうな。為替レートが存在しないので困る。宿代に換算すると、どれくらいなのだろうか。


 俺は宿を求めて、町へと足を向けることにした。町は様々な建物が犇き合っているようだ。


 次回は、21時に更新します。


 初めて本になります。

「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

7月10日 ツギクルブックス様より発売です。

http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html

 こちらはツギクルブックス様の専用ページです。


 お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。


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