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4-8 王城へ

「他の世界だと?」


「ええ、今までもそういうことはあったと聞いていますが。主神交替などの時に」


 ミッシェルさんが、運ばれていた料理をワゴンで受け取った。運んできた人も手慣れた様子で、さっと引き上げていった。


『う、うむ。それはまた禄でもない話が来たもんだ』

「え、それはどういう事です?」


 俺は、オードブルのような物を配ってくれるミッシェルさんに会釈しながら聞き返した。


『それはだな。つまり、主神交替の時に風物詩のように行なわれる儀式が、今回は成功しつつあるのではという事を意味するからだ』


 む! このオードブルが美味い~。じゃなくて、どういう事だろう。

 ギルマスは3杯目のビールを要求しつつ、話を続けた。 


『通常の儀式は失敗する。その秘術はとうに失われてしまったものだからな。迷宮も力を吸われるが、それが一時的な物だとわかるので異変が起るような事はせんのだ。だが、今お前達がここにいるという事は、おそらくダンジョンに異変が起きているという事だ。昔の伝承というか記録にそうある。お前達は一体どういう経緯でこちらへ来たのだ』


 彼はビールのグラスを握り締めて、真剣な表情で聞いてきた。


「我々の世界にもダンジョンが現れたのです。大なり小なり40個ばかり。国のど真ん中に現れて、魔物は出るわ、街が飲み込まれてしまうわで大騒動です。全部我が国に現れまして。関係国でも大騒ぎで、こちらへ来る方法を探していたのですが、結局行き来ができるのが私だけでして。私自身は交易のために来ているのですが、他の者は国から命じられて調査をしています。あのダンジョンを一体どうしたらいいものやら。向こうで、これ以上広がられてしまっても困りますしね」


『そ、それはまた』

 ギルマスも天を仰いだ。ミッシェルさんも興味深そうに話を聞いていた。


「お前ら、明日はちょっと王城に付き合ってもらうぞ。そんな心配そうな顔をするな、王はそうおかしなことを言われる方ではない。この度の色々な騒ぎの原因を探しておられる。お前らの話を上げないわけにはいかん」


 俺が、『えー、あんた一体何を言い出すんだ』みたいな顔をしていたので、釘を刺されてしまった。


 俺は合田をチラっと見たが、奴は行く気満々のようだ。仕方が無い、諦めた。奴が、こんなチャンスを逃がすはずがない。


「山崎隊長はどうすんの?」

 無駄とは思いつつ聞いてみた。


「行くしかないだろう。案内してくれるというのなら願ってもない。行こうと思って行ける場所ではないわけだし」

 はい、はい。みんなは、お仕事だもんな。


「よし、では話の続きを聞かせてもらうぞ。おい、それとビールの御代わりだ」

 異世界に、またビール中毒患者がまた1人増えた。


「ところで、王様に会うんだったら貢物はいるよな。これなんか、どうです?」

 俺は、用意してあった高級万年筆を色々と引っ張り出した。


 ギルマスは興味深げに弄っていたが、実際に使ってみて驚愕した。紙も渡しておいた。自分の方が夢中になってしまっているようだ。


 俺達は、配られた肉料理やスープに集中した。なかなかのものだ。この王都の飯は美味い。有名レストランとかに行ったら、もっと楽しめるんじゃないかな。


 その後も、こちらの情報を出してはフィードバックをもらった。やはり、フォロニック神殿とかに、怪しい動きがあるのではなくて、一部の利権がらみの動きのようだ。


 その割に色々な動きが大きくなってしまっているのは、邪神派に寝返る勢力が多数いるからだろうとの話だ。


 そして、俺達のようなものは『世界を跨ぐ者』とか、『世界を越えし者』とか呼ばれて、昔の騒ぎではそれなりの役割を果たしたと。


 それには、特に「聖魔法」が絡むらしい。ギルマスにも、その実態はわからないらしいが。


 儀式とは、何をやっているんだろうな。もしかすると真似する馬鹿が出てくるので、公開されていない情報なのかもしれない。


 とりあえずは、お暇して明日の支度をする事になった。


 王様に話をするのは俺か合田になるが、流れ的に俺のような気がする。とりあえず、風呂に入る事にした。ここの宿は風呂があって助かったぜ。


 翌朝、宿で食事をしているとギルドから迎えが来てしまった。

『お前ら、さっさと仕度をしろ。まだ飯も食ってなかったのか』


 なんで、こんなに早くと思ったが、慌てて仕度をすることにした。伝統の早飯食いで朝飯を討伐し終えた一同は、服装を整えて御迎えの馬車に乗り込んだ。


「なんで、そんなに急ぐのです?」

 馬車の中で俺がぶつぶつ言ったら、呆れたようなギルマスの返事が返ってくる。


『国王の城へ出向くのだぞ? ギルドに来るみたいにホイホイとすんなりいくと思っているのか?』

 そう言われてみれば、そうなのかもしれない。


「だって俺達の国では、普通、お城なんて行かないですよ」

『まあいい、行けばわかる』

 あんまり行きたくないなあ。


 街を抜けて、奥へと向かう通路を馬車は走らせた。城の周りには防壁があり、そこの門でのチェックを受けた。ギルドの馬車なのであまり厳しくは無いのだが、普通だったら徹底的にやられるのかもしれない。


 そこを抜けて聳え立つ城に向かい、馬車はひた走った。この王都は、ヘリから測定したところによると、直径が50キロもある化け物のような都市だ。外周で157キロ?


 愛知県で言えば、三河地区を除けば名古屋周辺の主要都市が丸々全部入ってしまうような広大さだ。ありえん。


 中央の王城区画でも直径10キロはある。異世界にえらいメガロポリスがあったもんだ。どこも王都ってこんな感じなんだろうか。この防壁、どうやってこさえたんだか。


 この巨大な街を壁で押し包んでいるんだから想像を絶する。万里の長城なんかと違って高さ50mだぞ。厚さも半端ないし。城から外壁に出るまでに半日かかる。


 この都市を支える水源として傍に大河が流れているが、水害とか発生したら目も当てられないような。それと干上がった時が怖いな。壁は無事でも、この河を押さえられたら終わりなんじゃないか?


 そして、関所みたいなところがあって、何度も止められてチェックを受けている。やあれやれ。ギルドを出て1時間も経ったが、まだ城に辿り着けていないぞ。


 この城だが、本当に砦に近い感じだ。遠くから見ると美しいのだが、近くでみると、やたらと無骨さが目立つ。やはり、あくまで城なのだ。


 俺がもう数えるのを止めた関所を越えて、ようやっと城に入った頃には10時近かった。そこから馬車を降りて歩く事30分。控え室みたいなところに通されて待たされた。


 11時半になろうかという頃に案内されたのは、いかめしい紋様に彩られた重厚な観音開きの扉だった。


 こ、これは! 猛烈に嫌な予感がする。それは的中し、すぐに結果をあらわにした。その扉の向こうに広がっていたのは『謁見の間』だった。


別作品ですが、「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

も書いております。

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