表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/232

4-6 王都入城

 いかめしい観音開きの頑丈な門の前で入城検査があった。基本、全員の身分証のチェックと荷物検査だ。


 辺境伯の話だと、厳しいとは言うものの身分証さえしっかりしていれば平時はさほど問題はがないとの話だったが。乗り合い馬車など、人数分の身分証と手荷物や積荷をチェックして終わりのはずだ。


『おい、お前ら。この辺の人間じゃないな。どこの国から来た』

 何故か詰問が入った。やっぱ、何かきな臭いのかな。


 とりあえず、俺達だけ降ろされてしまった。他の人間は、そのまま馬車で駅まで行くらしい。俺達は詰め所のようなところまで連れていかれてしまった。


 突然のお別れに、窓から子供が一生懸命山崎にバイバイしていた。山崎も軽く手を振っている。


(よくない展開だ、こいつらだけは守らないとな。最悪、調査は諦めてトンズラこくか)


 とりあえず、スクードの紹介状を見せた。まだいぶかしんでいる。仕方が無いので、辺境伯の紹介状を見せたら顔色が変わった。


『貴様ら、辺境伯のなんだ?』


「そんな事を、お前に言う言われはないな。だが、彼は俺達が訪ねていくと、よく帰ってきたと言ってくれるぜ。お前が俺達を馬車から引きずり降ろした件については、彼によく伝えておこう」


『わ、わかった。行っていい。最近おかしな事件が頻発しているからな。警戒が厳重なんだ。これも仕事だ、悪く思わないでくれ』


 偉い人の名前が出てきたら、途端に弱腰だな。


「貴族の人とかが襲われるとかか?」


『うむ、他にも大商会が襲われる事件も多発している。つい先日も王女様が襲われて、大騒動だった。騎士団の奴らもメンツ丸潰れで頭に血が上っている。怪しい奴らは問答無用で、ひっとらえられている』


 俺達は天を仰いだ。思ったより、よくない状況だ。えらい時に来ちまった。今回は乗り切れそうだが、騎士団に会ったらやっかいだ。関わらないようにしよう。


 ついでに街までの行き方を聞いたが、かなり歩くらしい。車が出せないと不便な事この上ない。


「貸し切りで馬車を呼べないか? 探索者ギルドまで行きたい」

『わかった。手配しよう』


「よかった。やってくれないのなら、ゴルディス家の馬車をここに呼ぶつもりだった」

 警備隊の隊長の顔が引き攣るのを、山崎が面白そうな顔で眺め、合田がしっかり記録していた。


 しばらく時間がかかるというので、俺達も昼飯にする事にした。グラヴァスで料理長が持たせてくれた弁当で、こいつはなかなかの物だ。


 食べたそうにしている警備兵がいたので、誘ってやったら嬉しそうにパクついた。上官も特に咎めないようだった。


『これ、美味しいっすね』

 若い警備兵達が嬉しそうに言った。日頃は碌なものを食っていないのか?


「そりゃあ、大貴族様の食べるようなご馳走だからな。ゴルディス家の料理長が作る料理は最高だぞ。俺の国は食い物には異常に拘るんだが、これはとても満足な代物だぜ」


 若い警備兵達は目を丸くして、そこからはよく味わうように食べていた。


 そうこうするうちに馬車がやってきたので、隊長さんに挨拶して詰め所から退散した。


 道行く人や街波を見物しながらの道中だった。合田は記録に熱中しており、反対側の連中も記録の手伝いをしている。案外と高い建物も多い。


 中には洗練されていて、ニューヨークに建っていても不思議では無いようなものもあった。


 なんていうか、壁面がすごく綺麗に処理されていてつるつるになっており、デザインもモダンな感じがする。とはいえ、大概の建物は、いかにもな石作りで中世ヨーロッパを思わせるかのようだ。


 あるいは、まだ自動車が無くコンクリートの建造物がなかった頃の、古い町並みを残したヨーロッパやアメリカの町と言ってもおかしくはないかもしれない。


 石畳も、ぼこぼこな石のブロックを敷き詰めたようなものでなく、綺麗な平面に削られた処理がされた石版のようなものが敷かれている。


 この広大な王都にふんだんに使われていそうなので、それなりの高度な加工技術は存在すると思われるが、きっと高価なのだろう。


 おそらくは、この国では王都にしか使われていないのではないか。元々南方の砦であったグラヴァスでは見た事がなかった。


 王都に近づくにつれ、亜人の姿はあまり見かけなくなっていた。クヌードでは頻繁に見かけたので、あれが当たり前なんだと思っていたが、そうではなかったのかもしれない。


 女の子が可愛いのは、ここも変わらない。いや、美人の割合も多いし洗練されているようだ。大都会に美人の割合が多いのは、普遍の法則だな。


 たっぷりと4時間もかかって、中心部にある探索者ギルドへと辿り着いた。よかった! 歩こうなんて思わなくて。


 もはや夕刻が迫っている。まだ日はあるが、かなり傾いている。馬車に待っているよう伝えて、後で宿まで送ってもらうように手配した。


 なんていうか、アメリカの大都市にあるような、開けた立地の大型ホテルのような感じの佇まいだ。中へ入ると、そこそこの賑わいだった。こんなところでは、みんなどんな仕事をしているんだろう。


 ここの職員らしき男性に声をかけたら、

『ああ、用件があるなら、そこの窓口に並んで』


 かなり、つっけんどんな話し方でそっけない返事が返ってきた。あー、都会だから、こんなもんか。


「どうする? 並んでいると、真っ暗になっちまうな。今日は引き上げて、近くに宿を取らないか?」

「ああ、そうしよう」


 山崎も同意したので、俺達は出て行こうとしたが、後ろから声をかけられた。


『あなた達、ここに用があったのではないの?』


 お、すげえ美人だ。豊かな金髪に青い目。地球じゃスタンダードな金髪美人が、ここでは少数派だったりする。


 振るいつきたくなるような美女っていうのは、こういう人の事かな。かろうじて、豊かな胸に視線を送りたい誘惑に必死に耐えながら答える。


「いや、今日は遅いから明日出直そうと思ってね。今日王都についたばかりで宿がないんだ。馬車も待たせてあるし。クヌードのギルマスのお使いみたいなもんさ。たいした用じゃないんだ。彼から、ここへ行くように指示されただけで」


『そう。じゃあ、こちらへ来てちょうだい』

「ああ、でも並ばないとまずいんじゃないの?」


『いいから』

 彼女は俺の手を引っ張って、強引に連れて行った。

 他の連中も顔を見合わせながら付いてきた。


別作品ですが、「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

も書いております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ