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8-28 パイラオンパーティ

 本日、うちの妹達はホームバーへ行かずに、庭でパーティする事にしたらしい。まあ、せっかくの可愛いゲストがいるからな。


 さすがに、こいつとホームバーで過ごすのは厳しい。狭くはないが、キツイな。こいつも狭いところは好きなようだが、別に広くても気にしない。


 強者だし、迷宮では猫科の猛獣のような狩りはしない。保護色すら用いない、ある意味で正々堂々とした魔物なのだ。


 糞をしても砂なんかかけたりはしない。堂々と自分の匂いをまき散らすのだ。しかし、頭はいいのでトイレなんかすぐに覚える。


 隣のおばちゃんもやってきて、なんとラオを乗り回しながら、楽しそうに声を上げていた。

「いや、これは可愛らしい猫ちゃんだわねえ。はい、どうどう」


 そういや、猫を何匹も飼っていたんだった。うちでは猫が飼えないんで、うちの兄妹弟は、もっぱらそっちで猫生活を堪能させてもらっていたのだ。今日はそのお返しができたみたいだな。それにしても豪胆な事だ。


 パーティの音が騒がしかったのか、ラオを目撃した人に通報されたものか、バイクの警察官が見に来ていたが、その成果は見事にラオに顔を舐められまくっただけに終わった。


「うわあ、鈴木さん。通報されたのが、あなたの家だと知っていたら来なかったのに」

 なんとも酷い言われようだった。


 でも警察の間では俺は有名人だ。どちらかというと、あまり性質がよくない方の意味での。心当たりがあり過ぎて、非常に言い訳もし辛い。


 彼にはタオルを投げてやっておいた。まあボクシングのチャンピオンベルトがかかっているわけでもないので、彼も大人しく受け取っていたのだが。


「まあまあ。あ、お務めご苦労様です」

「にゃあん」


 相手が警官なので、余計にご満悦なラオも可愛く鳴いて見送っていた。本当にこいつは人間の心をよく読み、頭もいい。悪戯心はしっかりと猫並みだ。


「あんまり、そいつを外で遊ばせないでくださいよ。本来ならいけないんですからね」

「はいはい。この子は、ずっとこちらにはいませんので、大丈夫ですよ」


「いや、そうかもしれないですけどね。まあ、あなたに言ったってしょうがないのですが。では本官はこれで」


 やれやれといった風情で、彼はブツブツ言いながら、最近流行りの前輪が二輪になっている三輪のバイクを走らせて去っていった。


 それから玄関口で、また止まる足音が聞こえた。今日は早いんだなあ。そのうちに中間決算で遅くなるんだろうが。


「お帰り、父さん」

「いやはや、これは何の騒ぎなんだい?」


「あー、パイラオンパーティ?」

「パイラオン?」


 その問いに答えるように、ラオがこっそりと背後から忍び寄って左横から父の顔を例によってベロベロと舐め回した。


「うわはは、おやまあ。肇、なんなのだい、こいつは」


「ああ、そいつがパイラオン。異世界の魔物で名前はラオさ。ラオ、父さんにご挨拶しな」

「ふみゃあおーん」


 父も最初は驚いていたが、鞄を置くと俺が渡したタオルで顔を拭いてから、奴を両手で撫で回した。


「はっはっは。そういや、お前達って子供の頃、猫を飼いたがって何度も拾ってきていたっけなあ。そうか、この猫は異世界で拾ってきたのか」


 そしてラオも無事に我が家の主からも猫認定されたので、父もラオの試乗を済ませて、着替えに行った。


 それからラオに少し変わった芸をさせてみた。ラフな格好で出てきた父に、なんとビールサーバーでビールを注いでみせたのだ。


「こ、これはまた器用な生き物だな! 地球の四足獣の生き物で、これをやれるのは熊くらいのものじゃないのかね」


「あははは。父さん、熊なら注いでも、きっと自分で飲んじゃうよ」


 もしかしたら、マダラなんかもやれそうだよな。あいつらは基本的に迷宮タクシーなので、そういう芸を仕込む時間が取れないのが残念だ。


 あいつらは放っておいても、あれこれと勝手に芸はしてくれるんだけどね。グーパーはさすがにでかくて無理だろう。アーラ達エブルムも手がないから無理だろうな。


 それから面白がった全員(淳を除く)にビールを注いで、皆からお褒めの言葉をいただいて奴は有頂天だった。


 本人は飲まないようだったが。あれだけ図体がでかいと、急逝、いや急性アルコール中毒で死んだりはせんのだろうが。ペットに晩酌は大変危険なのだ。


 競争馬なんかはご褒美とかでビール飲ませてもらったりするし、高級な和牛は肉が柔らかくなるから飲ませたりするよね。


 本日の我が家における家族の肖像は、俺達子供達の長年の悲願だった猫(やや大きめ)を加えての楽しい一時となったのであった。


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