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8-19 世界一の贅沢者

「それと、こいつがご注文の品だ。以前の物に比べたら高性能で軽くはなっているが、動きはある程度阻害されるぞ。だが、それはどうしようもない。ただの服ではないのだからな」


 そして見せてくれたのが、新開発のボディアーマーだ。ボディアーマーというよりも戦闘服・あるいは防護服とでも呼んだらいいような物なのだが。


 以前から開発されていた、衝撃吸収ゲルを挟んだ特殊素材の服だ。今までもあったのだが、かなり重かった。それよりも重量を半分ほどに軽くして、十倍の防御力を与えたもので、最新素材の開発が大きく寄与したものだ。


 まだ高価過ぎて市販はされていないが、将来は市場に投入されていくだろう。もう少し軽くなるといいのだが。それと、肝心の防御力はどうか。


 果たして、あの合田が食らった魔法槍を防いでくれるだけの性能があるだろうか。まあ、それでも重さ七キロあるセラミックアーマーなどよりは随分とマシなのであるが。


 俺は、そいつを少し時間かけて素材を作りながら複製してみた。

「中将、ちょっとこいつの耐久性をみるテストをしてみるよ」


「どうすると?」

「こうするのさ」


 俺はその特性防護服をレールガンの鉄製の砲弾の周りに丸めて思いっきり放り上げると、異世界産の槍を出して軽くアローブーストをかけて、俺の渾身のパワーで投げつけた。そして、それは中の砲弾ごと粉々になってしまった。


「あらまあ」

「馬鹿者。そんな真似をしたら、どんなプロテクターだってもたぬわ。なんという贅沢者だ。お前のような奴はミスリルの鎧でも着ておれ。お前ならば、それでも動き回れるだろう」


 あっはっは。しかし、こいつは使用条件を選ぶなあ。戦闘用の迷彩服よりも遥かに重いのだが、俺達がやりあうような敵の攻撃に対しての効果は疑問の余地がある。


 これは普通に銃弾を止めるためのものなのだ。今までのゲルでもライフル弾の一発二発は止めてくれたのだが。


 もちろん、すべての衝撃を止めてくれるわけではないので当たり所によっては骨折や内蔵の損傷も覚悟の上なのだが。


「中将」

「なんだ?」

 またお前は何を言い出すのだと言いたそうな顔でこちらを見る、エバートソン中将。


「SFに出てくるようなパワードスーツってないの?」


「そんな物は存在しないし、これからもないのではないか。そんなもんの開発に幾らかかると思っとるんだ。費用対効果でペイできないだろうし、まず商売にならん。そんなものは宇宙開拓時代に、惑星開発で必要な装備ではないのか。


 安価で休憩もしたがらないロボット兵器の方が遥かにいい。あれもメンテナンスは頻繁に必要だが。ちなみに日本人が大好きな巨大人型ロボット兵器じゃあないからな」


 えー、アメリカ人だって日本生まれの巨大ロボットをハリウッドで映画化して大人気じゃないか。ガラクタみたいなデザインだから日本ではあまり受けなかったけど。日本のロボットアニメもアメリカ人は見てたよね⁉


 うーん、ミスリル装甲のパワードスーツを特注したいところだが、さすがに無理があるな。さすがに、あれだけの技術の塊を大至急でと言っても無理があるし、膨大な開発費が払い切れない。


 それだったら、小さなハッチから出入りするのではなくて、トラックの荷台のような開口部を持つ乗降がしやすい、戦車並みの装甲を持った装甲車あたりで我慢しておくか。そんな物を欲しがるのも、うちくらいのものだが。


 そして、ここで最後の品々の登場だ。


「これは通常の大型高速地対地ミサイル、大型の地対空ミサイルなのだが、AIによる補助により一人でも操作し、発射準備をすべて整えておいた上で、いつでも緊急発射できるように改造してある。


 通常であれば危険なので運用は無理だが、お前達の収納に入れておけば問題はなかろう。外に出して十秒で発射できる代物だ。だが、あまりにも目標が近ければ使用はできん。


 元々ミサイルというものは、そういう兵器だ。目の前の敵を撃つものではないのだからな。お前ならば、魔法でミサイルを加速する事も可能なのではないか」


 俺は、しばし考えてから尋ねた。

「最新の超高速ミサイルは?」


「あれはまだ実験レベルだ。ロシアは実験しているが配備はまだまだ先だろうし、某国はそれを輸入かライセンス生産ないしは、まあいつものあれだな。


 アメリカや日本も開発しておるが、実験すら済んでおらん。それにどれもこれも、のろまな海上標的を狙う対艦ミサイルだ。お前の望むような対ドラゴン兵器ではないぞ」


「え、ええ。わかっちゃいるのですがね。我々が確認していないだけで、もっと強力な飛行魔物が現れないとも限らない訳で。


 それに、迷宮が暴走すると通常は生まれないような凄い魔物が生まれる可能性があると、以前にスクードが言っていました。大昔の伝承なので本当かどうかはわからないそうですが」


 それを聞いたエバートソン中将は天を仰いだ。彼もドルクットの現物は拝んだからな。アメリカもサンプルや異世界産の現物などから魔物図鑑を作っている。それには、もちろん載っていない面々になるだろう。


「聞いていないぞ、そんな話は。できれば、そういう情報も共有してほしかったものだが」

「なんというか、まだ確証はない話ですしね。レポートの合間に書いてたりしませんでしたかね」


「少なくとも、私は見た事がないね。お前が書いた食い物のレポートや、レストランガイドなどのレポートも一字一句余さず記憶しているのだがな」


 や、やだなあ。偉い人ってやたらと能力が高いから困るんだ。これからは、あまり変な事は書かない事にしようっと。


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