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7-33 卵の御土産

「肇、あのあたりから湧いてきたんじゃないか?」

 まだ、他にも巣があったりするといけない。用心しながら進んだ先には、巨大な巣があった。


 何しろ、巣を構成するのが枝ばかりではなく、木そのものまで使われているのだった。百本以上は使われているだろう。こいつの巣作りのためだけに、林が一つ消えてしまいそうだ。


「少なくとも、ビーバーよりはスケールでかいよなあ」

「あれも凄い建築家なんだけどね」

 警戒しつつ巣の中をうかがっていると、卵らしき物が六個も見受けられる。


「どおりで少々ぶったおしても減らないわけだぜ」

「この王国内に巣があったんだな」


「餌どうしてるの」

「他の魔物とかだろ。人間はひ弱いから、いい餌なのかもしれないが」

 それを、しばらく観察していたが、山崎が訊いてきた。


「どうする、あれ」

「サンプルに欲しいんだろ、合田」


「ああ、収納」

 静まり返った空間が痛い。卵は見事にそのままだ。軽く咳払いしてから、合田が言った。


「そういや、生き物って魔力抵抗みたいなものがあるんで収納できないんだったな」


「植物は入るけど、卵は入らないんだよなあ。日本の無精卵とかは入るんだが。鶉で試したんだよ。あれって、有精卵が混じっているケースが多いんで。入らなかった奴、淳にやったら、もう六匹ほど雛を孵してたぞ」


 欲しがるんで、孵化させる保温器まで買ってやったんだけど。うちの庭には鶉が走り回っていて、その走りっぷりが来客を驚かせる。


「で、どうすんの、この卵」

「放っておいたら孵らないんじゃないか?」


「竜の卵だぞ、温めなくても孵るんじゃないか?」

「それだと潰しておかないといけないのだが」


 どうするかな。持って帰るには少々サイズが大きいのだ。あのラドーの三十メートルのサイズに比べたら、まだ小さめといえるが、それでも一メートル以上はある。


「なんとか機内に詰め込むか」

「重量は大丈夫か」

「巣に降りて、計ってこよう」


 俺はスライドドア側にある機内の余分な椅子を収納し、スペースを作った。貨物室は空中では使えない。傍まで寄ってもらって、俺は飛び降りた。


 何故かもちろん持ち歩いている、超大型計りで計ってみたら、五百キロくらいだ。六個積んでも、三トンか。


 有効積載量が約5.5トンだから、重量的には楽勝でいけるか。俺は一個ずつ抱き上げて、揺れるヘリの中へジャンプして運び込んだ。


 俵よりもでかいから苦労したぜ。丸くて持ちにくいし。うっかり一個持ったまま落ちそうになってしまった。ジェットフライヤーがあるから俺は大丈夫なのだけど。


「おい、ヒヤヒヤしたぞ、危ないな」

「大丈夫、大丈夫。それよりも、これ一個でオムレツ何人前かな」


「食うつもりで持って帰ったのか!」

 いや、興味ないか? だが、卵に耳を当てていたサリアが言った。


「なんか音がしてるよ」

「何っ」

 俺はファクラの力を発揮したら、確かに聞こえる。これって心音じゃないか?


「あれだよね。どこの国の料理だっけ。もう中身が雛になってる卵を料理して食べる奴」

 川島が笑って言ったが、俺は渋い顔だ。


「俺、あれ苦手なんだよ。どうしようか、これ」

「おいこれ、ヘリの中で孵ったりしないんだろうな」


「大丈夫じゃないかな」

 そして、じーっと見ていたサリアが一言。


「これ、孵ったら可愛い?」

「いやいや、大きくなったら手に負えないから。ファルクットみたいに、人には慣れないと思うぞ。第一、お前も前に襲われてたって言ったよね」


「そっかあ、残念」

 子供の発想って恐ろしいな。これを自分で乗り回したかったのか。


 確かに、飛竜に乗って大空を飛ぶのは最高の気持ちではあったのだが。向こうでの足に使えたら凄いと思うが、こいつらがいきなり野生に帰って人を襲ったなんていったら~。


 それに、こいつに乗っていると、軍の飛竜に、いきなり攻撃を受けそうだ。ただの害獣なんだし。


 そして、卵を積んだままクヌードに向かう俺達。探索者ギルドに到着したので、ヘリをホバリングで待たせておいて、先に俺が下りて、スクードのところへ確認しにいく。


 相変わらず、クールな感じで机に向かっていらっしゃったが、俺の顔を見て少し珍妙な顔をした。まだ何も言っていないんだけど、さすがは探索者の親玉だな。いい勘をしてらっしゃる。


「どうした?」

「なあ、念のために訊くけど、クヌードに魔物の卵を入れたら駄目か?」


「その前に、こちらも訊きたいのだが、何故そんな物を持ち込みたがるのだ?」

「ここを通らないと、向こうまでもって帰れないだろう」


「持って帰ってどうするつもりだ」

「サンプルに持って帰るんだ。今まで、卵は無かったからな。もうすぐ卵じゃなくなりそうだけど。親は俺が退治した」


「仲間を呼んだりしないか? 子供の鳴き声を聞きつけて、親でなくても同じ種の魔物がやって来る場合がある」


「その前に、向こうに行っちゃうけど。じゃあ、ちょっと見てくれる?」

 ヘリを降ろして、スクードに見てもらったが、OKを貰った


「これくらいならOKだろう。だが、気をつけないと、卵の中の雛が念話で助けを呼ぶ場合があるからな」

 マジですか。卵は気をつけないとヤバイなあ。とりあえずは、ラドーの卵、ゲット~。





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