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7-32 異世界はカレーの香り

 なんやかやで、大満足の子供達と共にグラヴァスへと帰還した俺達一行。もう夕方だ。帰ったら、なんと辺境伯と、エルシアちゃんの両親であるジェルマン伯夫妻がハンドスピナーに熱中していた。


 よく見ると、使用人の人達も嵌まっているようだった。恐ろしいな、ハンドスピナー。一国を滅ぼす力があるんじゃないのか?


『あのう、ただいま』

『おお、帰ったか』

 辺境伯から、心ここにあらずといった感じの返答が帰ってきて、思わず沈黙した。


『ねえ、お父様、お母さま。国王陛下とランチしたよ。それに、ファルクットの赤ちゃん、可愛かったよ』


『そう、良かったわね』

『ああ、まったくねえ』

 駄目だ、娘の言う事もあまり耳に入っていないようだった。


 まあいいか。俺達も、アレイラへ行くために明日は帰るだけなのだから。連続で違うダンジョンに行くのはしんどいな。


 明日はクヌードで子供達と遊んでおくか。ミリーに会えないかな。ビジネスを先に済ませておいて大正解だった。


「やややれ。サリアちゃん、エアホッケーしようよ」

「うん、いーよー」

 お夕飯まで、異世界の少女達は、地球製のエアホッケーマシンで楽しむのであった。


 今夜も、辺境伯家の素晴らしい料理に舌鼓を打った俺達。地球から持ち込んだ調味料を投入しているので、またその素晴らしさに輪をかけている。


 何故か、こちらの世界では『カレー粉』を見かけない。スパイズ・ミックスなのだから、あってもよさそうなものだが。


 辛い香辛料の粉などはあるのだが、不思議とカレー粉というか、ガラムマサラのような物は何故か見かけない。


 ターメリックのようなタイプの香辛料が無いのも大きい。という訳で、この家では今やプチ・カレーブームなのだ。


 スープカレーやドライカレーなどまで作られた。こちらにしか無いようなスパイスで、地球のスパイス粉と混ぜて作られた、ハイブリッドな異世界地球ミックス粉なども開発された。


 パウチして日本に持って帰ったら、意外と需要があったらしい。何故か外務省から要請があって、貸しを作っておきたい防衛省からも師団長経由で依頼があった。


 何か知らないが、インドやタイなんかの比較的親日な国でも興味を引いたらしく、各国の大使たちが興奮していたようだ。


 政府からも要請があり、城戸さん経由で『御願い』が来たので、それなりの量が献上された。辺境伯からの対価として、かなりの量をいただいた。


 自衛隊にも『駐屯地祭』で一般国民の皆さんに出される自衛隊カレーに使ってもらおうと思って、各地に寄付しておいたのだ。


 隊員達も、思うところしきりだったようだ。異世界からやってくるのは、剣呑な魔物の群れかと思って身構えていたら、やってきたのはカレー粉の山。自分で贈っておいてなんだが、それはちょっと微妙だよなあ。


 翌日、朝食の後でグラヴァスのみんなに見送られて、俺達はクヌードに向けて旅立った。エルシアちゃんがサリアの名を呼びながら、物凄く手を振っている。ここに同じ年の女の子とかいないからな。


 まあここは近いので、クヌードからならば、あっという間に到着するのだが。サリアは、また連れてきてやろう。どうせ、ここには何度でも来るのだし。


 だが、今回は襲撃者がいた。ラドーのつがいだ。いきなり襲ってくる。何か怒っているようだった。


 いきなりブレスの二連発だ。その紅蓮の炎をあっさりと収納してみたが、奴らはまったく怯まない。なぜか執拗に追ってくる。


「なんだ、いつもと雰囲気が違うな」

「巣がどこかにあるんじゃないか?」


「そうか。それなら卵を収拾したいのだが」

 すると、合田が、とんでもない事を言い出した。


「え、あれのかよ」

 俺だって興味が無い事はないのだが、ちょっとなんだな。


「山崎、どうする?」

「倒そう。こいつは人を襲う。それに卵が孵るか、雛が育っても面倒だ」


「あいよ」

 二人がドアを開けてくれて、山崎が俺の射撃ポジションに合わせた機動を行なったが、異様にしつこく違う角度から攻めてくるのでやり辛いようだ。


「山崎、片っ方ずつやろう。最初は、あっちの雄らしき大きい方を。それから次だ。攻撃はイージスで防ぐ」


「了解」

 向かってくるラドー、もう一発ブレスを放ってくるが、軽く収納する。


「肇、反対側がブレスを撃ってくる!」

 山崎から警告が飛んだ。


「任せろ」

 空中移動時は通常待機している、佐藤と池田が叫ぶ。アイテムボックスで収納するつもりらしい。


「わかった、そっちは任せた。念のため、イージスは強めにかけておこう」

 そして、俺は正面からの敵に、対物ライフルから青くアローブーストの糸を引く弾丸を放つ。撃破した。見事に首を撃ち飛ばす。後ろでは歓声が上がる。


「やった、帰ったら今度自衛隊クラブでビール奢りだな」

「うわ、まっけた。無念」

 賭けは池田に軍配が上がったようだった。


 結構、余裕はあったみたいだな。山崎が、残りの番を倒されて怒りに燃えるラドーに、ヘリの右横腹を向けるポジション取りを行い、山崎は奴に競り勝った。


「あばよ」

 番を倒したのと同じ12.7ミリ弾は、そいつにも後を追わせた。


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