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7-29 因果応報

 飛行は順調そのもので、その後は飛行魔物も出る事はなく、王都へと近づいていった。もしかするとヘリが大きくなると、少し襲われにくくなるのかもしれない。


 魔物も生物である以上は、大きな獲物は襲いにくいというのは常識なのかもしれないが。それでも、自分の体より大きな獲物を襲う生き物も多数存在するのだという事も、また紛れもない事実なのだが。地球でもよくある話だ。


 初めて見る、王都マルシェへの空の旅。異世界の少女達は夢中になって窓にへばりついている。今日は乗客が少ないので、席は選び放題だ。


 やがて見えてくる王都の城壁。相変わらず巨大であるように思うが、アレイラを見慣れてしまった今では、やや小ぶりに感じる。


 それでも地球の常識外にでかい城塞なのは相変わらずだ。だが国家間や魔物との間で、お互いの平和のためには、相互不可侵のイメージで、こういうスタイルで街を作る方がいいのかもしれないな。


『ああっ、見て見て。ファルクット!』


 たまたま訓練から帰ってきたものか、竜騎士らしき者を乗せた飛竜が、少し離れたところを飛んでいた。少女二人は窓際に寄って、もう夢中でそれを見詰めている。


「へえ。この五月蝿いヘリを初めて見ても、物怖じ一つしないんだな」

「さすがに戦働きをするための竜といったところか」


「その割に、あの可愛さは反則だぜ」

 こんな風に、騎士を乗せて飛んでいるのを見るのは初めてなので、皆感心していた。


 これが、先方がご承知でないのなら、警告と支持に従わねば撃墜行動に入るのだろう。あるいは、即攻撃されるのか。前は、地上から行って大正解といったところだろう。


 彼は左手を手綱に、右手は胸に手を当てて挨拶してくれたので、俺もそれに倣った。しばらく共に飛行して、手を振って彼は飛竜を旋回させて帰還していった。もしかしたら、今の彼と後で会えるかもしれないな。少女達も一生懸命に手を振っていた。


『可愛い! ハジメ、ファルクット、可愛いね』

『ああ、あれのチビはもっと可愛いぞ』


「この間の子は、もう大きくなっちゃっていないか?」

「さあ、飛竜の子って、どうなんだろうなあ」


「ファルクット、ふふ、うふふ。もうすぐ会えるのか~」

 ケモナー池田が、何か怪しい笑みを浮かべている。ぶ、不気味だ。ファルクットのチビは、奴のお気に入りだからなあ。


 王都の街を遊覧飛行といきたいところだが、あまり派手にやって騒がせるのもなんなので、王宮に直行してもらう。


「王宮だ、降下させるぞ」

「えー、もう着いちゃったのー。残念―」

 ヘリマニアのサリアが無念そうだ。


 いつもなら、「山崎、もっとー」と叫ぶところだが、さすがに大空の我儘女王も、王都の空で我儘を言う気は無いようだった。


『ファルクット~』

 さっきファルクットを見かけたので、もう心ここにあらずのエルシアちゃん。


 出迎えにきてくれた侍女さんの後について、王宮内を進む。やがて、国王の間で国王とエブリン・マーリンが出迎えてくれた。


 エルシアちゃんは緊張しているようだったが、王様はにこにこしている。俺達の連れという事で、二人の子供は特に気にされていない。まあ、確かに子供なんだけど。


『おお、よく来たの。ところで、今回の土産は?』

『ははっ、これに!』


 とりあえず、各種のハンドスピナーを渡しておいた。彼もまた、不思議な物を見るような目でそれを手に取っていたが、すぐに虜になったようだった。


 何か、話しかけても返事がまったく返ってこない。あっちゃあ、失敗だったか。この王様の性格をよく考えるべきだった。


「あのう、エブリン・マーリン」

 念話を使ってもらいたいので、わざと日本語で話しかける。


『ん? 何だ?』

 同じくハンドスピナーに熱中していたが、生返事だけは返してくれるマーリン師匠。


「あれから、稀人、日本人は見つかりましたか?」


『いや、無いな。クヌードで見つからないのであれば、どこかに閉じ込められているか、たいしたものが無いので他都市へ向かったのではないか。その場合は辿り着けた保証が無いのは、お前もよくわかっていよう』


 俺達は、全員もれなくがっかりした。まあ、こんな事だろうとは思っていたのだ。ここはクヌードから離れすぎている。


 クヌードを出たとしても、ここにやってくる前に拡散してしまうか、辿り着けないだろう。考えたくはないのだが、明さんと同じような事になっている可能性が高い。


「じゃあ、ファルクットに乗せてくださいよ。今回の目当てはそれです」

『そうか。では昼食の後でな』


 やった。王様との昼食は楽しみにしていたので! 当然のように豪華だからな。サリアもわくわくしているようだ。この子の場合は、王様と御飯なんて普通は無いだろうからな。


 そして城戸さん。王様と会いたがっていたからな。だが、あれから色々調査も進行したので、今はさほどの関心はもっていないようだ。


 さっきも、話しかけたかったようなのだが、王様が返事もできないほど、例の物に熱中されておられたので。


 城戸さんが、ちょっと俺の方を睨んでいた。仕方がないじゃないか。あんな面白い物は渡しておかないと、後で怒られちゃうだろ。


 いざ食事となって、姐御は王様の隣に堂々と陣取った。たいしたもんだ。その反対側が俺なんだが、堂々と俺の性質のよくないネタで盛り上がっている。


 今回はお近づきの印として、親交を深めるのに留めたようだ。この世界の言葉で印刷された名刺を二人に渡していた。


『陛下、まったく、この唐変木ときた日には。困ったものですわ』

『ほっほっほ。鈴木のことだ。それは仕方があるまいよ』


 ちょっと、やめてよね、姐御。だが、王様には馬鹿受けだったようだ。さすが、念話使い。流暢に会話が進んでいるようだった。


 この人の事、苛めすぎちゃったかしら。あの頃は、各方面から俺への過干渉が激しかったからなあ。ついね。今も俺のアイテムボックスに納まったままのドルクットのお陰で、今時分は、そういうものは特にないのだが。


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