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7-13 海

「佐藤。ちょっと、ここいらで高速から降りて下道を行かないか?」

「あ? ああ」


 さっきからサリアが犬みたいに窓ガラスに鼻面を擦りつけて景色に夢中になっていた。少しくらいサービスしてやろう。時間的には余裕がある。


 浜松I・Cを下りて、そのまま南へ向かい、国道1号線に出た。それから海沿いに出ると、海浜公園付近の海の見える道路に出た。


『わあ、綺麗。海、海だね』

「そうさ、これが日本の海だ。太平洋というんだ」


 向こうの海は、魔物とかが居そうだものね。こっちはせいぜいホオジロ君がいるくらいだ。むしろ、海辺で何気ない顔して転がっている神経毒を持った小さい生き物の方が絶対にヤバイ。


 海に行く時は、よく調べておくか。浜辺に落ちている青いビニール袋か風船みたいに見えるクラゲも超ヤベエ。


 数キロ続く海浜道路も終わりを告げ、俺達は国道1号に復帰した。ここいらは、昔は浜名バイパスという有料道路だったらしい。今は無料だが、自動車専用道路だ。


 景色がよかったので走る人も多かったようだ。浜名湖を越えて、また海沿いを走る。サリアが、もう窓べったりだ。


 そして、そのまま潮見バイパスを進み、道の駅に入る。個人的には42号線の大きなカーブのある道の方が好きなのだが、今日はサリアを連れているのでオーシャンビューの設備のあるこちらへ行った。


 トラックなどで混んでいるが、休日よりはマシだろう。自動車専用道路だから信号は無いし。


 川島に連れられて、はしゃぐサリアが走っていった。ジュースも飲ませて、展望を楽しんだ後、一路守山へ向けて出発した。


 さすが子供だけあって、プルトップの開け方を一発でマスターしてしまった。探索者の奴らは、これがなかなかマスターできなくて笑ったもんだが。


 自衛隊高山射撃場付近を通過して、豊橋市街地を通過した。本格的な市街地なので、サリアが『おお~』とか言っていた。


 東京へ連れていったら面白いかもしれない。そして国道151号を経て、豊川I・Cへと入った。おおよそ、17時には守山に入る事ができた。


「ただ今戻りました」

 一応は迷彩服に戻してあるので、今日は俺も参列した。サリアも可愛らしく、見よう見まねで敬礼している。


「うむ。よく帰った。しかし、その子はなんだ?」

「ええ、向こうの子なんですけど、拠所無い事情で保護いたしました」


「そ、そうか。向こうの世界からも来られるのだな」

 少し考える風で腕を組む師団長。


「ただ、彼女は選ばれし者の関係者らしいのです。そのせいではないかと思われます。誰でも来れるというわけではないのではと」

「どういう事だ?」


「詳しい話は聞けてないのですよ。それに何か難しい話のようで、その上彼女も事情をよく知らないようで。これから調査すれば何か判明するかもしれません。おそらく偶然ではなく、なんらかの因子により我々は引き合わされたのかもしれません」


 師団長はまたもや難しい顔をしたが、聞き返してきた。

「で、その子はどうする?」


「うちで預かりますよ。とりあえず、グニガムへは1か月後に行く手はずになっています。王族の1人と探索者ギルドのギルマスの協力を取り付けましたが、芳しくないですね。他の都市のような支援はまったく無いです。探索者ギルドと情報屋に依頼できただけ、それも通常のビジネスとしての扱いですので。今回もトラブルに見舞われたので、少し時間をおく事で、現地の関係者と話がついています」


「そうか。わかった。その間はどうするのだ?」

「まだ考え中です。とりあえず、休養してから、クヌードとアレイラへ。それから他のダンジョンへ向かうか」


「後は何かあるか?」

「ええ、ちょっと気になっている事がありまして。向こうの魔物の事です。あのドルクット、ドラゴンよりも強力な魔物がごろごろしていそうな感じで。そのあたりの情報を集めたいのです」


 ちょっと沈黙されたよ。まあ気持ちはわかるけど。

「……そうか。そいつが出たら倒せそうか?」


「さあ、なんとも。我々が遭遇した時というよりも、それが日本に出現した時の事を考えています。そのあたりも合田がレポートにまとめてくれると思いますので。一度アレイラ・ダンジョンの深層部に潜ってみるのも悪くないかなと考えています」


「無理はするな。お前が倒されたら話にならん」

「まあ、そうなんですけどね。いざとなったら、迷宮神使に救援を求めますよ。多分、来てくれるんじゃないかな」


「まあ、なるべく危険は避けるようにな」

「わかっています。まだ死にたくはありませんよ」


「じゃあ、お前ら。来週またアレイラから行こうと思ってるんだ。1日早いが今週はお開きにするよ。サリアも来たしね」


「そうだな、じゃあまた来週な」

 まるで高校生とかが、友達に言うような気軽な挨拶で俺達は分かれた。


「じゃ、サリア。うちへ行くぞ」

『肇のうち?』


「そうだ。帰ると晩御飯の時間だな」

『御飯! 嬉しい』

 ん? なんだ、このはしゃぎようは。


『旅費とか大変だったので、あんまり御飯とかしっかり食べられなかったの』

「旅費? お前はグニガムの住人じゃなかったのか」


『うん。お母さんは、狙われていたから、私を連れて転々と移動していたの。お母さんが死んじゃって、その時に大きなダンジョンへ行きなさいって。選ばれし者がこの世界に来ているなら、必ず運命が私と引き合わせるだろうって』


「そ、そうか。大変だったな」

『でもいいの。ちゃんと肇に会えた!』


 俺は指令部の外に出ると、いつもの自分の車を出してサリアを乗せた。賢い子で、もうシートベルト着用をマスターしてくれている。今時シートベルト着用を守れない馬鹿どもに見習わせたいわ。


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