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7-7 難航する仕事

「こうしてみると、異世界の酒も旨いもんだな」

 山崎は宿の料理に舌鼓を打ちながら、酒を楽しんでいた。


 ラオには先に御飯をやっておいた。今回は、特別に大粒サイズで作らせたキャットフードがあるのだ。


 御機嫌で食っていたので、見込みで更に足しておいた。食わせすぎても太りそうなんだが。また後で見に行こう。


 どっちも賢いから、エブルムと喧嘩する事はないと思うが。鶏と猫を同じ小屋においておくようなもんだろうか。あの組み合わせだと、大猫が勝つのか、多勢に無勢で鳥が勝利するか。


 エブルムは嘴が異様に大きくて、爪も凶暴だ。パイラオンでも厳しいかもしれないな。ま、あれはもっぱら愛玩用なんだから。


「こうして異世界でのんびりしていられるんなら何も言う事は無いんだがなあ」

「それだと任務にならないぞ」


 青山の言う事は、もっともなんだが、そうもしていられないな。事は比較的急を要するのだ。問題はここでの話が進展しそうもないという事なんだが。


「また適当なところで切り上げて1回戻ろう。お前達も報告書を出さないといけないだろうし、他のダンジョンも様子を見にいかないといけない。そういや、商売の話も途中だった」


 随時、金も稼いでおかないといけないのだ。今回も新装備に金を注ぎ込んでいるのだ。そういう物もあれこれ発注している最中で、結構金を食っている。自衛隊の個人持ち装備と同じで、日本政府も金は出してくれない。


 川島はまるで任務であるかの如くに、黙々とメニューをこなしている。城戸さんは、時折写真にそっと撮りながら、味の検分を進めている。爺への土産話を溜めるのに忙しいようだ。


「とりあえず、何らかの目途だけでもつけて帰りたいが。これだと、仕事をしたうちに入らん」

 合田も溢すが、仕方がない。ここは国交さえない、見知らぬ土地なのだ。今までが良すぎた。


 それにまずい話が色々聞こえてきたので、用心深く動くにこした事はない。特にここの土地柄も問題だ。このメンバーで捕縛されたり殺傷させられたりなどの事態は困る。


「まあ、ここはじっくり行こうぜ。あんまり難航するようなら、合間に他のダンジョンも見にいって平行に仕事を進めよう。その方が逆に効率がよくなるはずさ」


「まあ、それが無難かな。困ったら政府の意見を聞くのもありかもな」

 おっと矛先が向いたわねという感じで城戸さんが手を休める。


「そうね。今のところ、ここの捜索を進めるのがベストです。日本政府としても限られた人員で最大の結果を生みたいと考えていますから。またマスコミとか野党の連中は無責任に、自衛隊をどんどん送り込めと言い出すのに決まっていますが。あの人達は自分では何も政策を出さずに、与党さえ攻撃できればいいのですから。無責任にもほどがあります」


 姐御、それは言ってはいけない事になっているんだぜ。まあ、ここならいいけどさ。

「それが出来れば苦労はしないさ」


 ヤバい魔法とか使われたら、自衛隊じゃひとたまりもないぜ。この俺自身が正にその証明だ。すでに敵魔法使いとの接敵も自衛隊には報告済みだ。


 あれだとまともにヘリの運用もできない。戦車・装甲車などのAFVもいい的だ。現代戦闘車両の特殊装甲は対魔法防御の性質は持ち合わせてはいない。


 ジグザグスラローム走行では魔法攻撃相手では、ただの的にしか過ぎない。最新鋭の10式戦車でも歯が立たん。電磁バリヤーでも装備してもらわないと、やっていられん。


【車両1台】

 基本的にそれが、俺が引き連れることができる部隊の限界だ。つまり今の人員で手一杯という事だ。


「逆に言えば城戸さん。自衛隊本隊が作戦を行なえるような事態は恐ろしいぞ。軍隊が通れるような通路で繋がれていてみろ。こっちの軍勢は行くわ、向こうの魔物は来るわ、だ。今は、こんな状態だから地球も無事なんだからな」


 思わず顔を顰める城戸女史。再びフォークを動かして食事をしながら脳裏に浮かぶのは、ドルクットのシルエットと凶悪ブレスか。


 あるいはアメリカや某国の軍隊が進軍して、この世界の罪も無い人達を蹂躙する姿か。


「あの探索者王子の言い方だと、ドルクットが最強の魔物じゃないんだろうからな」

 ぶふっと少しむせる姐御。


「なんですって? 聞いていないわよ、そんな話」


「確認できてないから言ってないまでだ。最低でも、あのドルクットまではコレクションしてみせたという話だ。スクードも、ドラゴンの中では恐ろしいものとは言ったが、あれが最強の魔物だなんて一言も言っていないのに、最近気がついた」


 思わず絶句するメンバー。丁度口いっぱいに食い物を頬ばったばかりの川島が胸をどんどん叩いていた。


「一度ジェイクにその話を聞いたほうがいいかもしれないな。あたりをつけておけば、効果的な対抗兵器が作れるかも」


 当然、その金を払うのは俺になりそうだが。だから金は稼いでおかないといけないんだ。1兆円あるから、少しはなんとかなるか?


「うーん」

 政府に対して報告書を出さないといけない城戸さんは唸った。


 必要と言われようが、そんな金が出せるわけがない。それくらいだったら、某国の侵略に備えて防衛予算に回した方がずっとマシなのだ。


「まあ、そんな話はお偉方に考えさせよう。とにかく一応当たるだけ当たって、駄目なら一旦撤収だ。師団長にも相談したい」


「まあ、そういう事だな。じゃあ、とりあえず次回はアレイラか?」

「ああ、ジェイクと話したい。スクードの見解も聞きたいもんだ」


「了解。みんな、そろそろお開きでいいかな?」

「ああ、川島はもう食い足りたか?」


 青山の問いに、右手でOKマークを作り満面の笑顔で答える川島。こいつ食う割には太らないんだよな。まあ、自衛隊員だし、基礎代謝がいいんだろうな。


 こいつも各種格闘技に手を出してるし。ちなみに守山駐屯地で一番人気なのは野球だ。あの狭い駐屯地で、何故あんなに野球チームがあるのか。


 俺達は部屋に撤収する事として、俺はラオたちの様子を見にいった。付き合うのは川島と池田のケモナーコンビだ。


 そこには、エブルム達のもふもふな羽毛に背中をこすりつけ、お楽しみ中のラオの姿が。


 あの感覚の鋭敏そうなパイラオンが、俺達が魔物小屋に侵入するまで気がつかないくらい夢中になるとは。ラオは「しまったあ~」とでも言いたそうな顔を浮かべたのも束の間。


「一体にゃんの話ですか~?」という感じに、何事もなかったかのように顔を洗って誤魔化していた。猫ってどうしてこうなんだろうな。こいつも、パッと見に猫科の生き物には見えない感じなのだが。


 エブルム達は、なんとなく笑いをこらえているかのように感じる。他の2人は、ちょっと堪らないといった風情で魔物達を観察していた。


 川島はうまい事スマホで最初から撮影する事に成功したようだ。後で動画分けてもらおう。


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