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7-5 桃色ダンシング

 とりあえず、鳥も選び終わったので全員でエブルムの乗り方の練習をする事になった。選ばれなかったエブルム達は、羨ましそうにそれを眺めている。


「はい! バネッサ先生」

『なんだ、肇』


「ちょっと、お手本を御願いします」


『しょうがないな。見せてやろう。このバネッサ様の鮮やかな手綱捌きを』

 やったぜ、なんたって短めのキャミソールだからなあ。


「あんたねえ」

 やや呆れた感じの川島だが、あえて反対はしない。果敢に魔物を乗りこなす、あられもない美少女の勇姿が見てみたいようだ。同志!


『そら、行くぞ』

 彼女は座らせたエブルムに、大きく足を上げてヒラリっと跨り、その大胆な肢体のご披露に男6人+川島が息を飲んで見つめていて、姐御を呆れさせた。


「もう何ですか。女の川島さんまで……」


「だって、だって、こんなに美少女なんですよ。生の異世界美少女アンド魔物の艶かしい饗宴。こんなのは日本のどこのイベントでも見られないわ~」


 こいつも案外おたくが入っていたんだなあ。まあ、こういうのって自衛隊には案外と多いパターンなんだが。普段は、駐屯地に引き篭もりだからな。


 立ち上がったエブルムの鞍に座った彼女はこう言った。


『ふむ。この鞍は付ける位置が前だな。足が上がって膝が曲がりすぎる。長距離には辛いぞ。まあ、このエブルムで私が旅するわけではないのでいいがな』


 パイソルが、笑顔で俺達にサムズアップしてくる。でかしたぜ、パイソル!


 目一杯、太ももの角度が付けられているため、可愛い太ももが腿裏まで全開だ。鞍の上に座り込んでいるので、当然前から下着は見えないが。


 バネッサ様と来た日には、裾をお尻の下に引いていらっしゃらないし。この手の服装は着慣れていないようだ。


 ピンクのキャミソールから覗く白い肌が、たまらなく刺激的だ。激しい動きに、横手から可愛い下着がチラっチラっと垣間見える。


 時には、激しい挙動にキャミの裾が捲れ上がって真後ろが全開だ。かなり面積の小さめな下着の乱舞に、全員思わず任務を忘れそうになるほど集中している。


「やっぱり、ギリギリなところで見えそうで見えないってのもいいわねえ」

 当然、発言の主は川島だ。


 男達は、その言葉を心のうちで唱えているというのに、お前って奴は。案外と危ない奴なのが判明してきたな。


 だが、今日は快く許そうじゃないか。しかし、景気よく全開との組み合わせもまた良しだ。だが、至福の時間もやがて終わりを迎えた。


 彼女は、降りる時も「全開モード」で鮮やかに降り立ち、全員の目を奪い取った。約1名は呆れ顔だったが。


『どうだ。よくわかっただろう。じゃ、肇。お前から乗ってみろ』


 まだ頭の中でピンクのキャミソールがひらひらと揺れて、かわいいフリル付きの白地にブルーの横縞が踊っていたが、取り急ぎチャレンジする事になった。


 心なしか、アーラが「大将しっかりしておくんなせえ」みたいな、やや冷たい目で見ていたような気がするが、しっかりスルーして挑んだ。


「馬とはまるで違うな」

 馬を、全長5m以上の流線形のスポーツカーだとすると、こいつはまるでジープか何かだ。特に不整地での機動性は高いだろう。俺達向けの乗り物だ。


 高さは馬並みにある。高速で落ちたら、やはりただではすまないだろう。ヘルメットの着用が絶対に必要だ。


 こいつの巨大な鍵爪付きの足に踏まれても悲惨な事になる。走る時、特に逃亡時の陣形は考えねばなるまい。


 だが、機動性は凄そうだ。さっきバネッサはとんでもない機動を見せた。クイックに曲がるその挙動。


 急減速、急加速。超高性能のスポーツ魔物だ。それに耐える太い一対の足。魔物ならではだ。これが戦闘機であったならば、世界最強の機動性だ。ドッグファイトで敵う機体は他にあるまい。


「アーラ。お前の力を見せてくれ」

「ギャア」

 他のエブルムたちは柵いっぱいまで下がっていった。


 アーラの奴は、たいして広くも無いこの広場いっぱいを使って素晴らしい機動を見せた。驚くべきは、そのバランスだ。


 乗っている人間に最低限の負担しか与えない身体制御。それは重心の安定を意味し、さらなる機動力を生み出す。


 低重心の水平対抗エンジンを積んでいる車みたいなものかな。絶対に馬よりも乗り心地は上だ。迷宮神使の末裔らしきこいつらは知能が非常に高い。


 馬にはできない心配りがこいつらにはある。生き物を乗り回した経験の無い俺達には絶好のパートナーだ。こいつらに出会えてよかったぜ。


 鞍も不思議な素材で出来ていて、これなら股ズレを起こさないで済みそうだ。ありがたいな。いくら回復魔法があるとはいえ、あれは辛い。


 そして、次々と練習に臨んでいった。馬と違って搭乗者を気遣ってくれる特別プログラム付きの乗り物だ。絶対にスーパーロボットの方がキツイはずだ。


 あれは人間が乗るものじゃない。巨大ロボットなんて生身の人間の操縦に適した乗り物ではないのだ。


 ヘリはまた別だ。さすが自衛隊精鋭だけあって、馬に乗った事のない連中もすぐさま乗りこなした。城戸さんも豊富な乗馬経験が生きたようで、すぐに慣れた。


「東大を出て、霞ヶ関で生きてきた私が、異世界でこんな魔物に乗って冒険する羽目になろうとは。やれやれ。よろしくね、カスミちゃん」


 姐御は愛鳥に安直な名前を付けたようだ。きっと霞ヶ関に置いてこざるを得なかった自分のデスクが懐かしいのだろう。もしかして、机にそんな名前を付けていたのか?


「よろしくね~、ピーちゃん」

「ピー」

 それ以前の奴がいた。


 当然、川島だ。あ、俺も人の事が言えねえわ。グーパー~。確かに、このピーちゃんが一番可愛いな。


「マッスル」

 青山もまたストレートな名前だ……。確かにいい筋肉していやがる。キュリーと勝負させてみたいところだ。きっと一瞬にして躾けられてしまうに違いないが。


「鳥吉」

 池田の奴め。なんかペット感覚で名前つけているぞ。


「韋駄天号」

 佐藤は自衛隊風な名前をつけているな。自衛隊では自分の車両に名前をつけている奴もいる。大概は凄腕のドライバーだ。


「少佐」

 何を思ったか、合田はそんな名前にしたようだ。何かキリっとした感じではあるがな。


「E1」

 山崎が、なんだか型式みたいな名前を付けている。


 そいつ、ヘリかなんかじゃあねえんだから。だが名づけられた奴は満足そうだ。格好いい響きに聞こえるのかもしれない。


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