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7-4 新たな仲間達

 俺は、もう一度エブルムどもを見渡した。う、どいつもこいつも円らな瞳で俺を見ていやがる。どうすりゃあいいんだろうな。


 こいつらは馬と同じくらいの体高だ。スピードが速ければ、よりダメージが大きいだろう。

『俺と一緒にいたい奴、この指止まれ!』


 うわーっと集まって、外に出てきた連中全てに取り囲まれてしまった。さっきの王様っぽい奴まで。んー? 一体どういうつもりだ!?


「えーと、じゃあお前」

 体格はさっきの奴には劣るが、スラリっとしているが引き締まった体付きで、俊敏そうな奴を指名した。すると、奴は恭しく進み出て頭を下げる。


「よし、いい子だ!」

 そして、その頭を撫ぜようとすると、パシンっと頭を振って拒絶した。心なしか嗤っているような気もする。


「にゃろう~。一体どういうつもりだあ!」

 パイソルと呼ばれた青年は困ったように、こう説明してくれた。


『貴方様は、先ほどこの厩舎の王に声をかけ、拒絶されました。だから、連中からこう思われています。この身の程知らずめ、と。エブルムが、ここまで拒否反応を起こすのも珍しい事なので』


 大切なお客にいたずらが過ぎたかという感じで、彼も少し困っているようだ。ガーン。や、やられたぜー!


 お前ら、ちょっと笑いすぎだよ。通訳されて、言葉がわからない連中も腹を抱えている。おい、バネッサまで。


「よ、よお。選んでもらえなかったな、選ばれし者」

「ぶわっはっは。こりゃ駐屯地に帰ったら、最高の酒のツマミになるわ」

「いいぞー、肇。異世界動画名選集に入れておくからな」

「こりゃ受けるな、おい」

 う、うるせえよ!


「ぶふっ。鈴木~、あんたってば、お笑いの才能あるわよ~」

「あははは。鳥ちゃん達、可愛すぎるぜー」

 ケモナー達には、奴らのパフォーマンスは受けまくりだ。


「くっくっく」

 城戸の姐御も必死で笑いを堪えていた。畜生!


 挙句の果てに、ラオまで「あんたって人はもう、本当に情けない。あんな鳥風情に馬鹿にされて」みたいな顔をして、ジト目で見ていやがる~。


 無論、バネッサなど遠慮のえの字もなく馬鹿笑いしている。く、く、くっそ~。こうなったら、あれしかないわ。


「食らえ、このくそ鳥ども! 聖魔法だぜ」

 俺はヤケクソになって、何故か聖魔法を発した。


 異世界ドライバーの迷宮魔物じゃあるまいに、別に何かを期待したわけではなかったのだが、なんとなく使ってみただけなのだ。


 だが、その効果は劇的だった。次の瞬間、鳥どもは固まってしまい、ただでさえ大きな目を見開いてこちらを凝視している。


「な、なんだあ!?」

 そして、そのまま全鳥がそのままの位置で座り込んで、俺に向かって頭を垂れた。まるで主君に対する礼のようだった。今まで笑い転げていた連中もポカンとして、その様子を見ていた。


『こ、これは一体……』

 店の若者も、驚いて目を見張り呆然としている。え、マジで?


『何、何が起こっているというのだ。こんな話は聞いた事がないぞ。スズキ、お前は一体何者だ』

 バネッサも胡乱な目で俺を見ている。


「知るか~」

 あれだな。もしかすると、こいつらは「選ばれし者支援要員」なのかもしれない。


 実は、元々はマダラやグーパーのお仲間で、外の世界で選ばれし者達を助ける目的で、人間の仲間になっているとか。だから彼らは客を選ぶのだ。敵の仲間にはなりたくないから。


「そうなのかい?」

「グエー」


 恭しい感じで彼は答えてくれた。心も読むか。これなら敵の心とかも読んで、警告とかを発してくれそうだ。


「そうか。じゃあ、お前をアーラと呼ばせてもらおう。俺達を助けてくれ。それが、お前達の望みなのだろう?」


 それを訊いたアーラは座ったまま更に俺に近づき、また深く頭を下げた。アーラというのは、この国で「王」の意味だ。彼には相応しい呼び名だろう。


「さあ、お前らも自分のエブルムを選んでくれ」

 全員が目を丸くして俺とエブルム達を見ていたが、今は選ぶ事を優先したようだった。


「あたしは、このとっても可愛い子ー」

「俺は、この一番手ざわりのいい子だー!!」


 ケモナー達は、少し違った基準で相棒を選んでいるようだった。お前ら、そいつに自分の命を預けるんだからな?


「ああ、馬の選び方ならば少しはわかるんだけれど。乗用鳥魔物の選び方なんて、東大でも、霞ヶ関でも習わなかったわ~」

 姐御、それは無理筋というもんだぜ。


「ヘリなら、良さは少しくらいわかるんだが」

 山崎、確かに鳥だけどな。生憎な事にこいつは空を飛べないぜ。


 青山は筋肉の具合を丹念に調べている。瞬発力とか持久力とか、純粋にパワーとか。筋肉にも色々あるからなあ。


「ほい。んー、これはどうだ」

 佐藤と池田は跨って、操縦のレスポンスを見ているようだ。ま、ゆっくり決めてくれ。当分の間、ここでの相棒になるんだからな。


『お前、本当に面白い奴だなあ』

 バネッサも興味深そうに俺を眺めていた。


 当然のように、俺も眺め返しておいた。今日は俺が渡したキャミソール風のスタイルで、思いの他色っぽい。


 こいつが、バネッサ様のもっかのお気に入りのようだ。しかも、腰に付けた剣帯と素晴らしい意匠の短剣が、またぐっとくるぜ。


 いつもの装備ではわからない、体の線がハッキリとわかる。案外と細い体に、息を飲むほど白くて決めの細かそうな肌。


 ムチっとはしているが、細めでスラリっとした足。足フェチの男ならば、その美貌と相まって、思わず御御足にむしゃぶりつきたくなるだろう。


 また短めなキャミソ-ル(当然、わざと渡したのだ)なので、足はスパっと丸見えだ。下着も簡単に見えてしまうだろう。


 この世界では見ない服装で、街の男からも注目されっぱなしだった。だが、ラオにも同じくらい注目が集まっていたので、声をかけてくる馬鹿は1人もいなかった。


 ブラジャーを着けないので、胸の大きさや形の良さがそのままだ。薄ピンクの生地なんで、胸のあたりがちょっと透けていないか?


 色合いが微妙なピンク過ぎて、よくわからないぜ! 俺があんまりジロジロと眺めるので、バネッサがやや眉を吊り上げた。


『父がよく言っていた。男は皆パイラオンのようなものだ。相手の男は充分に吟味するがよいとな』

 あら、しっかりとしたお父さんで。そういや、こいつってラオに押し倒されていたよな。


「馬鹿ねえ。せっかくの可愛い子に嫌われても知らないわよ~」

 川島が呆れたように言う。だってよー、男ならなあ。


 振り向いて同意を求めると、うんうんと頷く友たちがいた。


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