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6-33 追撃の勇者達

「ジェイク。この国で、ヘリコプターを使用する許可をくれ」

『ヘリとは何だ?』


 そういう事を言う奴がいるだろうと思い、ちゃんとヘリコプター映像も用意しておいたのだ。マルシェの教訓は生かしてある。


 大画面のタブレットにイヤホンをつけて、ジェイクに見せてやった。乗り込んで大空へ舞い上がるまでの短い映像だが、インパクトはあったようだ。


『ほお、これはまた。音が煩そうだな。まあ、今回は緊急事態だ。許可しよう。今度は、俺も乗せてくれよ』


 周りの人間に、出来る限りの通達をしてくれて、混乱を抑えるべく手配してくれる。俺達は広い中庭のような場所へと案内された。ここは、ちょっとした修練などをする場所なのか?


 木などは生えておらず、空も開けていてヘリの発着には都合がいい。しばらく、俺達専用にしてもらうことにした。


 山崎がどんっとヘリを出したので、ジェイクの視線が釘付けだ。そのフォルムは、異世界の人間から見れば凄まじく異様に映るだろう。エンジンの火が入り、そしてローターが回りだした。


『おおっ! これは凄まじい風だな。それに、この音。これがヘリか!』


「はは。すぐに慣れるさ。マルシェの王様は、これが大好きだぜ。またマルシェにも遊びにいきたいな。ああ、ファルクット!」


 今度行く時は、エルシアちゃんも連れていってやらないとな。山崎も機種転換訓練をやっている。

「邦人救出のため」の特殊訓練なので、特別扱いになっている。


 免許はありえない「無条件発行」だ。あとは山崎が、ヘリパイとして自分にGOが出せるかどうかの問題だ。補佐に池田や佐藤が入る事になっている。


 20人以上乗れる、人員輸送用ヘリに乗ることになるのだ。山崎も空いた時間はそこに当てられており、この前に俺が休養していた時もその訓練に明け暮れていた。


 今回も持ち込んでいるので、慎重に操縦するならヘリで救出者ごと帰還するのは可能だ。ただ、飛行魔物に襲われると厄介なので、距離にもよる。


 近距離であるならば、安全な陸路を取るのがセオリーだろう。だが距離があれば、時間がかかるのも相まって、乗客のストレスや疲労も計算に入れねばならない。


「みんな、乗ってくれ。現場に急ぐぞ」

 山崎に促されて、俺達はヘリに乗り込んだ。


「ジェイク! しばらく帰れないかもしれない。連絡は小まめにするから。色々頼んだぜ」

『ああ、任された。行って来い』


 そう言って、奴は俺達流に挙手をして見送ってくれた。俺達を乗せたヘリはぐんぐんと上昇し、この世界で一番である王国の、世継ぎの王太子に見守られてアレイラの王宮を飛び立った。


 20アスは約30kmをさすらしい。概ね隣町といったあたりだ。たったの6分ほどで辿り着いた。空中からも騎士達の気配は感じられた。


 そこに彼らがいるという事は、おそらく敵は街の外にいる。通信の魔道具があるので、近隣の町には手配が行き渡っているだろう。


 近隣の大都市は120kmほど先らしい。そこには、やつらの仲間がいるからだろう。ここで逃がすと面倒だ。だが、奴らの気配は感じられない。


「アボーイ、ヨナサン隊長。我々が来ているのは見えますか? 大きな音を立てて飛んでいる物体です」


『アボーイ、スズキ様、見えています。これは確かに煩い。奴らにも聞こえているでしょう』


 町から数百m離れたところに彼らは潜んでいた。空からパッと見では、どこにいるのかわからない。

「アボーイ、連中は何故我々の索敵に引っ掛からないのです?」


『アボーイ、奴らは索敵を誤魔化す探知無効の能力を使用して潜んでいるのでしょう。だが、町には入れていません。町から目撃されています。それに町には、それが通用しない魔道具があるのです。それは大型の魔道具ですので、我々は持ち歩けません。ですが、近くにいるのは確かです。我々に追われているので、動けずにじっとしているようです。無闇に動けば我々に探知されますので』


「どうしたらいいと思う?」


『難しいですが、やつらが何か動かざるをえないようにするしかないですね。後は持久戦に持ち込むか。我々は町から補給できますが、奴等にはできません。それに女性を2人も連れていますので』

 俺は一旦通信を切って仲間と相談した。


「どうしようか」


「もう少し、しつこく低空を飛び回ってみちゃあどうかな。その後で五月蝿いのがいなくなったら、動くかもしれないし」

 池田から、とりあえずの提案が出た。


「うーん、そうだな。低空だと偶然に見つかるかもしれないし」

 そう簡単に行くとは思えなかったが、とりあえず辺りを旋回しながら捜索する事にした。


 人質がいるんじゃなかったら、上から適当に銃撃を食らわせてやるのだが。しばらく飛び回ったが、手掛かりは見つからなかった。ん? あそこで、今何か光らなかったか。


「おい、山崎。あの、左手の岩が連なってるへん、何か光った気がするが。ちょっと低く飛んでみてくれ」


「あいよ」

 ヘリが少し旋回して、そこの岩を回り込もうとした、その時。岩陰から、凄まじい光が迸ってこちらへ向かってきた。


「やべえ、よけろ。ありゃあ、攻撃魔法だ」

 理屈でなくファクラの力がそう告げる。あれはライトバレット、炸裂する光弾だ。


 スピードが速いのが特徴の魔法だ。破壊力はそれほどでもない。回避しそこねて、ヘリの真下に食らった!


 野郎、いい腕していやがる。イージスのおかげで損傷はないが、ヘリの挙動がふらついた。


 初めてお目にかかったが、攻撃魔法もヤバイな。普通なら今ので撃墜されているわ。RPG並みの威力はあるんじゃないのか?


『アボーイ、スズキ様、大丈夫ですか?』

「ああ、おかげさんでね。やつらの位置はわかったかい?」


『ええ、捕捉できました。奴らも隠れるのは諦めて戦闘を決意した模様です』

「人質の安全を最優先にしてくれ。俺も行く」


『わかりました』

 問題は人質だ。奴らは撃てるが、こっちは撃てない。ならば!


「山崎、もう1回危ない橋渡ってくれ。それから、コードFで頼む」

「わかった。お前こそ気をつけろよ」


 騎士団が駆けつける中、空中から奴らをけん制しつつ、思いっきり接近してもらう。奴らの配置はわかった。


 相手は約20名。攻撃魔法を使える奴は4人。これもファクラの能力でわかる。接近した!


 地上まで約30m。俺は、飛んだ! 今日は下にあるのは海じゃない。だが、今日の俺は背負っているものがある。


 いわゆるジェットフライヤーと呼ばれるようなものだ。俺は映画の主人公のように飛んだ。


 ヘリはイージスの盾魔法をかけたまま、煙幕を発射しながら姿を隠し、飛んで離脱していく。スモーク装置を後部に取りつけてもらってあるのだ。


 ヘリだけでも慌てるのに、煙を吹いて空を高速で飛んでくる人間に奴らは対応できなかった。空中から、アローブーストのかかった不可視モードのマジックアローを次々と打ち込んで倒していく。


 攻撃魔法の使い手は最優先で倒した。そして、数を8名まで減らした後に突っ込んで、ごろごろ転がって無様に着地した。


 奴らも空中から見えない位置に隠れている。ジェットフライヤーは収納済みだ。


 ついでに人質の傍にいた奴も吹っ飛ばして、なんとか止まった格好だ。普通なら両者ノックダウンの有様だ。いや俺が死んでるわ。


 俺はすぐさま起き上がると、片膝立ちで両手に構えたピストルで、もう1人いた人質の近くにいる奴を打ち倒した。


 後ろから忍び寄ってきた奴がいたが、そいつは銃声と共に倒れた。50mほど先で青山が片手を上げている。


 そして、同じように偲んできた奴らが、もう3人ほど青山の射撃によって餌食になった。青山も対人は初めての実践だったが、なんとかこなしてくれた。


 魔物相手の戦闘を数こなしてきた成果もあるのだろう。残りは3名、まだ抵抗をしそうな按配であったが、俺達ばかりに気を取られていて後ろがお留守だったらしい。


 騎士団の手により、あっというまに捕縛された。残りの17体の死体は、収納に入れておいた。こいつらはジェイクに身元を洗ってもらうつもりだ。



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