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6-31 奪還作戦開始

 一応、交易の物品を置くだけおいて、見返りはまた頼んでおいた。ここはジェイクがいるので、まだ頼んでおける。グニガムは色々と面倒そうだ。


 探索者ギルドに頼むのも手かもしれない。余所者には厳しいと言っていたな。同じエルンスト大陸のパラミール王国も、そんな感じだった。


 一応、全員のスキルチェックはしておいた。今回も、能力は発現していないようだった。どういう加減で、収納とか身につくんだろうなあ。


 俺達は、マイクロバスに乗り込み、もう殆ど陽の落ちたアレイラの大通りを突き進んだ。ライトは強力タイプを装備してはいるが、油断は禁物だ。


 俺は不測の事態が起きないよう、前方に位置し探査しながら待機する。他の連中は、女性2人を中心に、乗客の世話をしていた。


 バスには強化の魔法と、イージスの盾魔法を施してある。ほどなくして無事にダンジョンへとやってきた。照明の眩しさに警戒されたが、俺が降りて説明しておいた。


 今後も暗くなってから入場しないといけなくなるかもだからな。ダンジョン自体は夜中にも出入りする連中がいるので、門は開いている。


 誘導しながらバスはダンジョンへと進んだ。俺も乗り込んで、マダラを呼んだ。軽い悲鳴があがった。おっと、説明が抜けていた。俺も、ちょっと疲れてきてるかな。


「皆さん、あの魔物は敵ではありませんので」

 毎度御馴染みの解説をしておいたが、マダラの奴は欠伸して口に手を当てながら送り出してくれた。


 魔物も夜は寝てるのか? まだ19時なんだけどな。乗客も、そののんびりとした様子をあっけにとられたように見ている。


「皆様、無事日本へと帰ってまいりました。ここは千葉県房総半島にある第5ダンジョンです。これより順次、自宅の方までお送りしたいと思います。後日、警察の方から事情聴取のために、連絡があるかもしれませんが」


 バスの中に歓声が上がり、緊張していた乗客にも笑顔が見られた。ちなみに世界を移動する際には、回復魔法で検疫している。変な病原菌とか持ってきたら大変だからな。その逆もだ。


「よかった。帰ってこれた」

「日本だ、家族に会える」


 全員に俺の携帯を渡して、家には連絡してもらった。こういう時用に、プリペイドの携帯を2個ほど用意しておいたのだ。


 俺達はダンジョンを抜けると、そのまま一般道へと進んだ。比較的、近隣に家がある方が多くて、30分以内にはあらかた送り届けられた。


 残り1名の方は東京都内まで送り届けた。家族が駅まで迎えに来てくれていた。

「ありがとう、自衛隊さん達」


 笑顔でお見送りして、俺達も本日の課業は終わりだ。訓練と違って、実際の任務はなかなかピッタリの時間には終わらないようだ。


 バスは収納して、ついでに俺達も都内に撤収した。時刻は、もう20:30だ。師団長には、電話を1本入れておいた。


 女性2人は最初からスーツ姿でいてもらったし、男はバスの中で着替えた。もう遅いので都内にはいかずに、近辺のホテルへと乗りつけた。


 軽く風呂に入ってから、集合して遅めの夕食にした。席につくと、大きく息を吐いて溢す。


「いやあ、今日はきつかったな。まさか、この時間からトンボ帰りになるとは。だが都合がいいといえば都合はいい。明日の朝から動けるからな。朝には何か情報が入ってくるかもしれないしね」


 ボーイさんがすぐ注文を取りにきてくれて俺達は、ホテル内の日本料理店に入りやっとビールにありついたのだ。


「い、生き返るぜ~」

「ああ、明日からキツイから早めに戻りたかったが、そうも言っていられん。現地の状況は待ってくれん」


 佐藤も、今日は夕方から運転ばかりで、マイクロバスで東京都内も走らされたからな。


「みんな、今日は酒も控えめにしてくれ。ゆっくり寝て、明日は早めに出かけるぞ」

 山崎からも激が飛ぶ。


「お願い、2杯は飲ませて~」

 川島が哀れっぽい声を出していた。


「攫われた女性達は無事かしら」

 ホテルで合流した城戸さんは同じ女性でもあり、政府の人間でもあるので余計に心配そうだ。


 俺達は簡単に食事を取り、22時そこそこには解散した。

 

 翌朝、6時起床で、さっと食事を終了させる。どのルートで行くか思案していたら、なんと姐御がヘリの使用許可を取ってくれた。


 このホテルの屋上には「Rマーク」、つまり緊急救助用の場所があるだけでヘリ自体は着陸できない。


 近所の中学校の狭いグラウンドを、日本政府名で借りてくれた。周辺は建物の密集地帯で、なかなかヘリの着陸できる場所がない。


 この東京の朝は強烈だ。車で移動するにしろ、地下鉄にしろ時間がかかり過ぎる。赤坂に行くのも難儀だし、千葉まで行くのも時間がかかり過ぎる。


 昨日は赤坂まで出てる時間もなかった。姐御も人命がかかっているので、あっさりと強硬手段に出た。


 殆どこのホテルと地続きになっている2つの中学校のうち、広い方のグラウンドの使用許可をとってもらった。


 歩いて数十mの距離を歩いて、朝っぱらから中学校にお邪魔する。まだ7時回ったところだが、もう朝練の部活の子達がいた。


「すいませんね。朝っぱらから物々しくて」

 話を受けてくれた教師が対応してくれたので、挨拶しておく。


「いえ、いえ。日本政府からの正式な要請なのですから」


 そう、姐御が電話してから学校へ直接行って、直に交渉してくれたのである。彼女は日本政府の身分証や名刺をもっている。教師が生徒達に呼びかけてくれる。


「おーい、お前ら集合」

「なんですか、先生」


 集まってきた数名の生徒は、俺達の迷彩服姿に、ちらちらちと横目をくれながら訊いた。


「山本、少しの間グラウンドから生徒を下げてくれ。政府と自衛隊の方が、ヘリコプターの発着に使いたいそうだ」


「え! そうなんですか?」

 まあ、離陸だけだけどね。


「おーい、みんな集合―!」

「なんすか、キャプテン」


「みんなグラウンドから離れろ。ヘリが来るから」

 すまん、山本君。ヘリは来ないんだわ。


「へー、おーい柏木ー、ちょっと女子達を下げてくれ。他の部の子もな」

「えー、なんでー」

「今から、ヘリが……」


 そんなこんなで、約3分後にはグラウンドが空いた。みんな、空を見上げている。山崎がアイテムボックスからパンっとヘリを出したが、見ていた子は少数だったようだ。


 猛然と湧き上がるジェットエンジンの音と、いきなり捲き起こったヘリの風に生徒達がびっくりして、慌ててこちらを見た。教師は目の前にヘリが現れたので、ポカンとしている。


「すぐ飛び立ちますので。ご協力ありがとうございました」

 敬礼する俺達に、教師も慌ててぎこちない挙手を返してくれた。


「あれえ、いつの間にヘリがあ?」

「どっから来たのー」

「あたし見てた。いきなり地面に現れたのよー」

「自衛隊の新兵器だあ」


 生徒達の反応が、ちょっと楽しいな。少し暖気をした後、見上げる生徒達の視線に見送られて、俺達はアレイラへと向かった。日本国民奪還作戦のために。


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