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6-30 アレイラ巡回

「うむ。それは伝説の生き物じゃ。世界の動乱が起こる時に現れるという。だが悪しき者ではなく、その存在は世界の行く末にも影響を与えたとも言われるものじゃ。また一つ、今が世界の危機である、生きた証拠が現れたのかもしれんのう」


「え? そいつとは、これで2回も遭っているのですが。特にそんな凄い奴にはみえなかったのですけど。なんか、いつも構ってほしいとか、遊んで欲しいみたいな雰囲気で。確かに他の魔物と違って、やっつけてしまえるような感じではなかったのですが」

 

「ほっほっほ。それはまた。選ばれし者か。本当に面白いのう」


 なんてこった。無理にやっつけてしまわないでよかったぜ。どうにも邪気が無かったんでな。攻撃する方法も思いついたりはしたのだが。今度会ったら念話を試してみるか。聖魔法でも面白いかもしれない。


「では辺境伯、少し取引をお願いします」

「よかろう。では、こちらへ」


 エルシアちゃんは山崎にべったりだ。合田は、それぞれ情報収集に励んでいる。山崎と川島はその補助で、残りは俺の手伝いだ。


 屋敷の空き部屋というか、広大なスペースに品物を出していく。今までで人気だった物を中心に揃えていったので、無難な品揃えだ。だが、案外とこういう物の捌けはいいのだ。


 あれこれと良さげな品物などを入手してホクホクしつつ、グラヴァスから帰る事にした。伯に聞いたところの内容であれば、王都へ行く必要は今回なさそうだった。


「王都で、日本人が見つかったという報告はない。万一タイミング的にずれがあったとしても、王は日本人を丁重に扱ってくれるであろう。お前の話では次の町へ行った方が有益であろう」


 俺達は、予定を変えて、今日アレイラへ向かう事にした。今夜は向こうに泊まり、明日は早く行動を開始する事にしたのだ。ヘリでクヌードに戻って、時刻は15時半。ダンジョンの入り口からヘリを使って、約350kmのルートで千葉の第5ダンジョンを目指した。


 今日は城戸さんも一緒にいる。飛行中も仕事をしているのは合田と青山だ。城戸さんも、こちらの手伝いをしてくれるらしい。


 地上運行チームの佐藤と池田は、飛行中は体を休めるルールだ。川島には、分隊長代理で課業日誌を書かせている。そして俺はパイロット見習い課業だ。全員無駄なく、役割を果たしている。


 16:40。第5ダンジョンに降り立ち、その場でランクルに乗り換えて、出発した。交易品は明日アレイラの分とまとめて渡せばいいだろう。エバートソン中将には声をかけていかない。どうせ、兵士から報告はいくはずだ。


 今日のドライバーは、グーパーだ。どこで手に入れたものか、傘っぽい植物らしきものを頭に載せて、阿波踊りっぽいダンスを踊っている。


 マダラと違って、「ヤットサーヤットサー」といった感じだけど。そして、長いボリュームのある尻尾をちょいと伸ばして、異世界へと送ってくれた。


「あの子も、だんだん芸の手が込んできたね」

 川島はスマホを仕舞うと、素朴な感想を述べた。


 久し振りのアレイラの夕日は眩しかった。

「じゃあ、打ち合わせ通りに王宮に向かうぞ」


 もはや御馴染みとなった石畳の超大通りを、速度控えめで駆け抜けて王宮前へと車を着けた。例によって、王宮前で取り次いでもらう。


 案内の人についていき、最早見慣れた王宮迷路を進み、俺達は探索王子との再会を果たした。


「やあジェイク。久し振りだな」

「おい、ここではエルリオット殿下とお呼びした方がいいのじゃないか?」


『何、構わん。お前達の事は、ここでは知られている。それに、私を王太子殿下などと他人行儀に呼ぶ奴ばかりではない』


 いや? この世界一の大国で、それもまたどうなのか。


『手短にいくぞ。まず、第一に。日本人が数名見つかった』

「本当か!?」


『第二に、日本人女性で攫われた人がいる。現在、騎士団が追跡中だ』

「何~!」

 全員、思わず青ざめた。


「そっ、その方達は無事なのでしょうか?」

 思わず城戸さんが進み出て、ジェイクに詰め寄った。


 その勢いに思わず後ずさったジェイクが慌てて答える。

『保護された人達は大丈夫だが、連れていかれた2名の日本人女性は、なんともいえん。生贄として連れていかれたのだから、儀式が行なわれるまでは無事だろう』


「そうですか。その問題は、おそらく日本サイドの問題でなく、この世界の安全保障にも関わってくる問題でしょう。宜しくお願いいたします」


 どちらも国に対して、厳しい責任を持つ人間同士なので、それなりにわかりあえる余地はあるようだ。そういう意味で、この城戸さんも選ばれし者の仲間に相応しいのかもしれない。


「で、やつらの情報をくれ。俺達も追う」

『それはいいが、情報が入るまでに時間がかかる。お前達の機動力ならば、後からでも追いつけよう。先に今いる日本人を連れて帰れ』


「わかった。会わせてくれ」

 案内というか、連れてこられたのは、若い女性2名と男性が5名だった。


「男性は30名いたはずだが、見つかった人は少ないな。やはり、アレイラが巨大すぎるのか。いや、女性の方が危険に晒されているので、女性の捜索が進んでいるのは好ましいとみるべきか」


 不安そうに集まった人々も、日の丸の入った装備を見て安心したような雰囲気だ。

「皆さん、日本に帰りましょう」


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