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6-4 お遊びの時間

 俺達は、探索者スタイルでランクルに乗り込み、第5ダンジョンの中に入った。収納持ちは本当に便利だ。車両は一通り、佐藤や池田に渡してある。


 ここではもう、この車でいいだろう。乗り込むのは8人だが、サードシートに女性2人と細身の合田に乗ってもらった。2列目に座った山崎が、俺を圧迫する。


 俺は魔物とのやり取りや、不測の事態に備えているため、常に窓側に座る。俺のレポートにより、この第15ダンジョン側でも、通称名が「アレイラ」と呼ばれている。


 今回はドライバーとして、久しぶりにグーパーを呼び出した。いや、ちょっと可愛いペットの顔が見たくなっただけさ。


「グー」

 相変わらず可愛いな、こいつ。ヌイグルミを作って売ったら人気にならないだろうか。ユーモラスなその表情は子供達を魅了するだろう。今日の芸は、4つ足をバタバタさせるユーモラスなダンスだった。


 そのダンスを見終わる頃には異世界についていた。

「楽しいね、グーパー。でも、マダラの肉球も捨てがたいなあ」

 もう川島はどっぷり俺達の世界に浸かっている。


「ここがアレイラ。広いし、人が一杯いるのね。クヌードの比じゃあないわ」

 城戸さんは、周りを見回して、そう呟いた。あたりを流れる探索者達の波は途切れる事もなく、ひっきりない。


「ああ、ここは世界一の王国の王都だからな。例えば、アメリカなんかでさ。NYに首都があり、その中心にこのダンジョンがある事を想定してくれよ」


 思わず彼女の脳裏には、そのダンジョンへ完全武装で乗り込んでいく笑顔のニューヨーカー達の姿が思い起こされたのかもしれない。なんとも言えない表情を浮かべていた。


 俺達は探索者ギルドへ趣き、例の世界地図のところへ、みんなを案内した。

「これが、この世界の地図か」


 俺の報告書では見たものの、みんな初めて目にする世界地図に圧倒されていた。これから俺達が冒険していく世界なのだ。


 飛行機も、鉄道も、海上航路も存在しない世界。ネットも国際間に跨るような警察機構もない。そして、そこに氾濫する幾多の言語。


 特に合田は担当者として眩暈を感じたらしい。手に負えないというような顔をしている。そうさ、「惑星丸ごと一つ」が調査区域なんだぜ? 俺達だけじゃあ、絶対に無理だ。


「ふう。手に負えないな。出来る範囲でやろう。合田、無理をするなよ、今度はお前がオーバーワークになっちまう」

 山崎に言われて合田も顔を顰めるが、「もう手遅れだ」と言わんばかりの表情だ。


「と、とりあえず、このアレイラでの捜索依頼を済ませてしまいましょうか」

 城戸さんが提案して、俺達はホール状の大広間から外へ出ると、俺達は外の喧騒に身を任せた。


 クヌードで経験済みなので、そう驚きはしないが、とにかくここは規模がでかい。合田が撮影を行なっていて、青山が補助についた。相変わらず、川島はキョロキョロしている。城戸さんには、さりげなく山崎がついていた。


 そこから大通りというか、町沿いにある広い高速道のような、そんな場所へと移った。

 例によってランドクルーザーを取り出して、一路王宮を目指した。トラブルを起こさぬように、ゆっくりと走らせて。前回、騎兵を振り切ってきちゃったからな。


 王宮の門前に乗り付けてで、王太子に取り次いでもらった。すると、門兵の人がすっと前に出た。

『エルリオット殿下より、あなた方が現れたら、すぐご案内するように仰せつかっております』


 そう言って、彼は槍を振って俺達を誘った。動きやすく、急所は押さえた軽鎧といった感じか。腰には短めな剣。装備的にはローマ帝国が近いのかもしれないな。


 こういう人達は、どれくらいの能力を持っているのだろうか。魔物と戦っている事が多いため、そのへんがよくわからない。魔法を使ってくるような相手だと勝てるものかな?


 例によって、城内の回廊を複雑に巡りながら、ジェイクのところへと辿りついた。

『おお、来たのかスズキ。おや? 見ない顔が1人いるな』


 またもや優雅にテーブルに肘を着きながら、こちらを一瞥する王太子様がいた。ふっと城戸さんの方へ顔を向けると、なんか顔を上気させたような感じで王子様を見ている。あっちゃあ。そういや、この人って確か独身……。


「何、国の方から来た人さ。今日から俺達の仲間だ。城戸さん、仕事してくれ」

「あ、は、はい」


 姉御は、いきなり現実に目覚めさせられて、居心地が悪そうな顔をしている。いくつになっても、女の人って王子様に憧れるのね。


「始めまして、日本政府より派遣されました、城戸と申します。エルリオット殿下におかれましては、ご機嫌麗しゅう……」


『ああ、待て待て。おい、スズキ。なんで、この人はこんなに堅いんだ? 本当に、お前の仲間なのか?』

 凄い疑念の眼差しで俺を見ている、探索者王太子がいた。


「失礼しちゃうな。それは一体どういう意味だ? その人は国の役人なんだから、お堅くて当たり前だろ? お前みたいな放蕩王太子と一緒にするなよ」


『なんで、そんなものがお前の仲間になっているんだ?』

 そうか、わからないのか。では、わからせてやろうか。


「なあジェイク。ちょっと、お遊びしないか?」

『へえ、今からビジネスの時間じゃないのか?』


「対価を貰うだけの話なんて、少々後回しにしても構いやしないさ。それよりも、ちょっと俺達の世界式の弓遊びをな」


『面白そうだな。受けたぞ、その勝負』

 奴の後ろで、例の美人侍女さんが「やれやれ」といった表情を作っていた。


 俺達は、警備兵を先頭に、この王宮の練兵場に向かった。

『さて、どんなお遊びをするんだい?』


「こうするのさ」

 奥行き500mはありそうな、そのスペースの後ろの方に、コンクリートのユニットを並べ立てた。


 そう日野射撃場に使われているのと同じような、コンクリート素材を複製してきた物を並べてやったのだ。兆弾になると嫌だからな。


 表面には弾が跳ねないように、アメリカのガンショップの射撃場などの壁で採用されているような処理を施してある。それを複製したものだ。


 コンクリ関連は瓦礫をもらってきたり、不要になった施設を丸ごと頂戴したりで結構アイテムボックスに溜め込んである。向こうも解体費用が浮いて助かるので、お互いに喜んでいる。


 そして、射撃関係の設備を複製してきたものをズラリと用意した。ジェイクには青山と山崎がつく。城戸さんには、池田と川島が付いた。参加者は俺と城戸さんとジェイクの3人だ。


『で、スズキ。これで、何の遊びをするのかな?』

「見せてやるよ。じゃあ、まずお前からだ」

 ジェイク、お前のセンスを見せてもらうぜ。


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