表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/232

5-13 迷宮王都

 俺達は、一旦外へ出て、あたりを散策する事にした。広場も本当に活気がある。店の数も客の数もクヌードとは段違いだ。


 歩いている人の服装も垢抜けている。それでも、なんとなく民族衣装っぽいものも多いな。それらも、かなり色鮮やか色彩豊かではあった。


「賑やかね~」

 川島はお気楽なお散歩モードだ。こいつは本当に順応性が高いな。アイテムボックスに装備満載だし、言葉が通じるので気楽なとこもあるが、なんたって異世界である。度胸満点だぜ。


 さすがに迷彩服はもう止めにしたので、それもあるのだろう。奴も、この世界に即した服装をしている。厚地の布の服に、細身の剣を帯剣している。


 マントは羽織らない。街行く人も羽織ってはいない。季節的なものもあるだろう。女だから細身のレイピアのような武器だが、これはミスリルで作ってあるので簡単には破壊されない。


 ここでは、それ以上の素材も見つかるかもしれない。ちょっと期待しているんだけど。

 やがて大通りを眺められるところまで出たら、みんなそれを見ていた。王都マルシェにも、こんな道は無い。相変わらず、交通整理の人が頑張っているようだ。


「道路は広いな。石畳というか、石舗装というのに近いか。これだけ広くて、道も広いから走りやすそうだ。おい、車はどうする?」


 佐藤のアホが、道路の流れを推し量るように見ながら訊いてきたが、そんなものは最初から決まっている。


「馬鹿野郎。ここがどれだけ広いと思っているんだ? クヌードみたいな辺境ですら、外に出るまで大変なんだから。ここで車使わなかったら、毎日が行軍なんだぞ?」


 みんな揃って、大きな溜め息をついた。それは嫌なようだ。自衛隊だって、毎日行軍ばっかりしているわけではないのだ。俺は、この種の問題が持ち上がる度に、デメリットとレンジャー訓練の地獄の行軍を計りにかけていた。


「多分、こんなに広い都市を、どこの国も平然と作っていられるのは、高度な魔法技術があるからだ。土木・材料形成・メンテナンス。都市の命である水供給など。多分下水も整備されているはずだ。ここは魔法がある分、おそらく地球のローマ時代とかを超えているんだよ」


 みんなも周りの景色を見回して、何か納得したみたいだった。

 この王国は、なんとトイレが水洗だった! 少なくとも、ギルドや王宮はそうだった。


 ローマ帝国のそれとは違い、地球式のタイプだ。魔道具だけどな。手洗いの水道も完備されていた。地方に行ったら、この国でもどうなんだろうなあ。日本人としては非常に気になる。 


「わかった。車で移動しよう。俺は話せないから、トラブルになったら任せたぞ」

「ラジャー、心配すんな。いざとなったら、ジェイクの威光で押し通す」


「ジェイク?」

 みんなに首を捻られたので、一応説明しておく。


「ああ、この国の王子様だ。本名は、エルリオット。エルスカイム王国王太子エルリオット殿下だ。みんな粗相がないようになー。今日は王様にも会う予定だぞ」


「またかよ。俺達、こんな格好だぞ」

 青山もぼやく。


「部屋くらい貸してくれるだろ」

「そう願いたいな」

「じゃ出発進行ー」


 ランクルを出して、さっさと乗り込む。バスの方が広くて快適だが、佐藤の負担が増えるから、この人数ならこれだな。次はまたバスの出番かな。もし杏を入れると、8人になる。ガタイのいい奴が多いんで、8人乗りのランクルでも厳しい。


 ドライブレコーダーやビデオカメラの画像を元に合田がマップデータを取り、簡易な地図を作成していく。ダンジョン用の位置表示システムをつけたので、それで表示をできるように加工していく。

 と、いきなり騎兵が来て止められた。


「おいでなすったぞ。肇、後は任せた」

『お前ら、それは一体なんだ。馬もいないのに、何故走っている。出て来い』


 俺は、よっこいしょって感じで車を降りると、ある物を見せた。

「俺達はエルリオット殿下から仕事を請け負っている。これは、最新の魔導馬車だ。こいつの使用も含めて、俺達に便宜を図ってくれるように書いてあると思うが」


『これは!』

 ジェイクに頼んで、その手の親書を書いてもらっておいたのだ。早速役に立っちまったぜ。


『わかった、行っていい。だが、お前達かなりの速度を出していたようだ。事故になるといかん、もっとゆっくり走れ』


 佐藤が、あっちゃあという顔をしていた。

「時速30キロ以下に抑えていたのだが駄目だったか」


「まあ、普通の馬車が時速5キロくらいだからな。まあ、ゆっくり行ってくれ」

「佐藤っち、安全運転でお願いねー」


 王宮は、ダンジョンから少し離れているので、不便だ。それでも10キロ程度であったらしい。30分ほどで着いてしまった。門の前では、色々な人が出入りしていたが、ここでも止められた。


 昨日は車を使っていなかったしな。面倒なんで、車はもう収納した。どの道、王宮内を車で走るのは無理だろう。別にたいした危険があるわけではない。

 

 王子を呼んでもらうように頼んだが、女性がやってきて案内してくれた。インドのサリーのような感じか。あまり肌を出さないような格好をしていて、頭にもショールみたいなのを被っている。それで口元を隠しているので、よく人相がわからないような感じだ。


 王宮にそんな人がいていいのか? まあ日本でもマスクした人とかいっぱいいるけどな。

 お姉さんの後をついて、おのぼりさん宜しくついていく俺達。


 俺は昨日来たけど、他の奴らはキョロキョロしながら歩いている。王宮の造りも立派だ。多分、マルシェの王宮と比べると、伯爵家と公爵家くらい格が違うのではないだろうか。


 この国の特色として、何か作りがこう現代的にピチっとした感じなのだ。探索者ギルドもそうだったが、ここは更に加えて3倍ほど高級感が増している。金がかかっているのだから、当り前かもしれないが。その代わり異世界感は、薄くなってしまっている。


 なんていうか、ちょっと金持ちな外国に来ましたよって感じだろうか。俺達日本人には、こちらの方がしっくりくるが、どっちかというとマルシェの方が異世界感に溢れていて好きだ。


 あちこち歩かされてよくわからないが、保安上わざとそのようにしているのかもしれないな。少々歩くのは歓迎だ。


 やがて、彼女は黙ってある部屋の前で止まり、中に入るように促した。そして軽く礼をして立ち去っていった。大変上品な所作であったので、貴族家のお嬢さんか何かかもしれないな。


 ちぇっ、顔が見たかったな。目元鼻筋は彼女が相当美形であったのを指し示していた。

『おい、何をやっているんだ、いるんだろ? 早く入ってこい、スズキ』

 あら、催促されちゃったよ。


「ちわ~」

 あ、ヤベ、王様いたよ。気軽に挨拶しちまった。


 後ろから川島に後頭部を叩かれた。合田が膝をつこうとしたが、王様が手で止めた。


『よいよい、こちらの都合で呼びつけたのだ。お前達、食事はまだだろう。席につきなさい』

 王様はにこにこして、誘ってくれた。


 おお、好意的な出会いになった。やっぱ、これって俺のファインプレーじゃねえ? なんて思っていたら、川島が軽く睨んでいた。ハイハイわかりましたよー、調子に乗ってサーセン!


「それでは、お邪魔いたします。慣れぬ移動でしたので、食事を取っている余裕が無くて」

 他の人間も軽く礼をして、席につく。


『皆、よく来てくれたな。心より、感謝する』

 王様はにこやかに挨拶をしてくれた。金髪青い目で、でぶっていたりはしないが、痩せぎすでもない。脱がしてみたら凄いかもしれない。


 へたすると、自らダンジョンにも潜っているのではないだろうか。息子を見ているとありうる。軽く口髭を生やし、どっしりとした物腰だ。目は穏やかな光を湛え、理知的に見える。

 なんとなく見ていて安心できるタイプだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ