表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/232

5-9 佐藤さん帰国

 展示即売会は盛況のうちに終わった。かなりの大金が手に入ったので、買い物に出かける事にした。おばちゃんの案内で、あちこち回って大満足な品揃えになった。


 特に迷宮宝石がクヌードとは違う物が多かった。この手の初物は凄い値段が付く事がある。ホクホクだった。


 もう夕方の5時になってしまった。

「佐藤さん、今日は東京に帰るよね? 親と同居の自宅だったっけ」

「えー、あ、はい」


「遅くなっちまったなあ。本当は明日にする予定だったんだが、俺も次回の都合で色々とあってな」

「あ、いえ、大丈夫です」


 俺達はアンジェリカのおばちゃんに挨拶して帰る事にした。収納があるので、彼女も手ぶらだ。

「アンジェリカさん、御世話になりました。また来られる予定ですので」


「じゃ、おばちゃん、世話になったね。また来るわ。少なくとも、俺は明日。彼女はしばらく行方不明だったから、親が出してくれないかもしれないな」


『あはは。無理をしなくてもいいさ。また、よかったら元気な顔を見せておくれ』

「じゃ、いってきまあす」

 こいつも、いつの間にか、ここが第2の故郷になっているようだ。


 俺達はランクルで街を流し、ダンジョンまで戻ってきた。

「ここから、どうやって帰るんですか?」

 ダンジョン通路の中で車を止めたので、彼女が訊いてきた。


「ああ、今からタクシー呼ぶから。おいで、グーパー」

 でろん! って感じで、グーパーは車の正面に現れた。


「す、す、鈴木さん、ま、魔物~」

「あ、いや、こいつがタクシー。他の奴もいるんだけど、こいつが一番見た目可愛いし。ほら、グーパー、ご挨拶しな」


「グー」

 奴はチョイッと右前足を上げて、挨拶した。


「……なんか、見慣れると愛嬌がありますね。可愛い顔しているし」

「そうだろう? じゃ、グーパー。やってくれ」


 ほどなく、俺達は第21ダンジョンの入り口の前にいた。

「わあ、地球のお日様の光。一体どれだけぶりだろう……」


 彼女は眩しそうに、世界に帰還の挨拶をくれた。  

 穴から車を出すと、警備の自衛官が寄ってきた。


「鈴木さん、そちらの方は?」

「現地で行方不明だった日本人さ。偶然見つけたんだ。探し人じゃなかったけどな」


「そうですか、それはよかった」

「中将に挨拶してから、送っていくよ」


「そうですか、お疲れ様です」

 敬礼して見送ってくれた。


「おう、あんたらもな~」

 窓から右手の挙手をはみ出させて挨拶する。俺も昔は、やっていたな。ダンジョン警備。


「自衛隊の人も大変ですねー」

「おう。あれの何が大変かって、退屈なとこだな」


「はあ」

「だって、気抜いていたら、何かあった時大変だろ。だけど、普段は何があるってわけでもないんだ。軍務なんてものは、皆そうなのかもしれないが。俺は退官寸前で、すぐ終わる任務だからよかったけどさ。まだ市中の魔物パトロールの方がマシだった」


「うーん、そういうものですか」

「ものです」


 俺達は、第5ダンジョンの米軍駐屯地へ向かった。

 警備の兵士に取り次いでもらうよう頼んで、待っていたらすぐに顔見知りが現れた。


『エバートソン中将は?』

『あ、お出掛けです』

 駐屯地責任者のヘルマー大佐が応対してくれた。


『そうですか、ではスズキが1度戻ったと伝えてください。明日、また向こうへ出かけますので』

『わかりました。伝えておきます』


 俺達は、駐屯地を後にして出発した。

 佐藤さんが、車の中で電話している。


「あ、お母さん? お母さん? あたし、杏。そうだよ、あたしよ。今、帰ったよ。うん、本当にあたしだよ。やだ、泣かないでよ、やだ本当に。う……」

 涙が溢れて止まらないようだ。


「うん、あ、うん。ダンジョンの向こうに、違う世界があるの。向こうは凄い都会で、色々と良くしてくれた人がいて。日本から元自衛隊の人が来てくれて。あ、その人は今運転中だから。今、その人に送ってもらっている最中だから。うん、うん、どこも痛い事はないよ。でも会社の人は死んじゃったの。逃げられたのはあたしだけ。うん、うん……」


 東京に入れたのは、19時ごろだった。彼女の家は江戸川区だったので、すぐに着いた。

 いい立地だな、某テーマパークまで、わずか数キロじゃないか。


 家の前には、彼女の両親が気もそぞろに待っていた。親という漢字は、木の上に立って見るとはよく言ったものだ。親の位牌を見ているという説もあるが、子から見るならば、そっちの説は風情がないな。


「ただいま!」

「杏! 本当に杏なのね。ああ、ああ、よく無事で」


「お母さん!」

 母親にギュっと抱きしめられて、娘も思いっきり抱き締め返していた。他に父親や弟や妹も外まで出迎えに出てきていた。


「ありがとうございます」

「本当にありがとう」

 彼女の両親は涙を流し、俺の手を取って礼を言ってくれた。


「いえ、たまたま偶然に会っただけで、他の人の捜索を政府から依頼されていったんです。絶対に無理だと思っていたのですが、お宅の娘さんを見つけてしまいまして。びっくりしましたよ」


「それでも、娘が帰ってこられたのは、あなたのおかげなのですから」

 そこで、杏が話に割り込んできた。


「お母さん、また今度行ってきてもいい?」

「ええっ。行くって、あちらの世界とやらへ?」


「うん、御世話になった人に、御土産持ってお礼にいこうかと思って」

「そ、そう。安全なのかしら」

 お母さんはかなり不安そうだ。


「まあ、あちらの世界では世界一の王都ですので、そう荒ぶった感じはないのですが、まあ普通に地球の外国みたいな感じでしょうか。本来なら、今は安定していて、騒動も少ないはずなのです。ちょっとガタガタはしているのですがね」


 お母さんは少し考え込んで、

「もしよければ、先方にご挨拶させていただくわけにはいかないでしょうか」


「は、はあ。ちょっと明日から、また向こうへ行きますので、また具合を見てで宜しかったら。その時は他に自衛官も同行できると思います」

「で、では宜しくお願いいたします」


 それから、お母さんと杏、2人と電話番号を交換して、俺はホテルを探しにいった。

 まさか、あんな事を言い出すとは思わなかったな。御礼に伺いたいか。そういう発想は無かったな。まあ、とりあえず大丈夫だろ。あいつらも連れていこう。川島は必需品だな。


 もう遅いので、すぐ近くの浦安の高級ホテルに宿を取った。さすがに月曜日だから空いている。一風呂浴びて、レストランで食事をしてから、部屋で簡単なレポートを書いて送信する。それと、エバートソン中将に、新しいサンプルを見てもらいたい旨をメールで伝えておいた。


なぜかタイトルがおかしなものになっていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ