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5-8 商売繁盛

「王様とか? 明後日以降でもいいか? 一回こいつを親元に連れていかないとな。それと仲間を連れてきたいんだ」 

『むう、それならそれでもいいが』


「それと、日本の民間人の捜索に協力してもらいたい。俺達はそのために来たんだ。無論、邪神派の動きも注視している。そいつらの動き次第で、ダンジョンの向こう側にある俺の国も酷い事になるかもしれん」


『わかった。捜索には協力しよう。出来れば明日の晩餐には間に合わせてもらいたい」

「それなら、今から帰らないとな。それで都合が付けば明日の夕方までには来られるだろう。最悪は明後日になるな」


「心得た」

 俺はジェイクとの話を終えて、復路の荷物に呼びかけた。


「じゃ、帰るか、佐藤さん」

「王宮を見学させてもらったら駄目ですか?」


「明日、まあ明日でなくてもいいけど。もう1回来ないか? ちょっと話もあるんだ。うちの人が駄目っていうかな」


 ちょっと考え込むようだったが、

「はい、またちゃんと帰ってこられるようなら」


「心配ない。ちゃんとタクシーが送り迎えしてくれるから」

「は? タクシーですか??」


 まあ、見ればわかるさ。帰りは特大の奴を呼ぶとしよう。

「あ、ジェイク。実は俺個人で交易もやっているんだが、少しここで買い物もしていきたい。さすがに品揃えがよかったな。良かったら、俺の商品もいくらか買ってくれないか?」


 まあ、この探索者みたいな王子なら話を通してもよさそうか。ここは、マルシェと違って第5ダンジョンから直接入れるから、色々融通は利くしな。1人でも、さっと来られるのは大きい。


『へえ、何があるんだい?』

「うーん、出来たら、女の人を集めてもらえないか。貴族の子女なんかいいなあ~」


 それから、杏(もう勝手に心の中では呼び捨て)に振り向いて、さも当然のように言う。

「悪い、佐藤さん、ちょっと商売させてくれ。地球の偉いさん達がうるさくてな。持って帰れる時は御土産を仕入れておかないと」


「あはは。色々世知辛いんですね。あ、お手伝いしますよ」

 うん、いい子じゃないか。ますます従業員に欲しいぜ。


 部屋の中に宛がってくれたスペースに、俺は色々並べていった。当然、助手は杏だ。叔母ちゃんも興味津々で手伝ってくれた。


『これはまた並べ立てたものだな』

 王子様も感心したように言って、傍にあったものを手に取った。


『この素材は不思議なものだ。この質感、軽いのに丈夫そうだし、この色合いときたら』

「それは化学繊維だよ。安くていい素材を使っているが、悪くないぞ。俺の国は素材製造には自信ありだ。高機能素材の衣料品はお勧めだがな。これからまた、汗をかく季節だろう」


 興味深そうに、あれこれとひっくり返している。

 使いの者に呼ばれてやってきた女性達は、商品を見て目を輝かせた。


 あれこれ手に取り、次々に質問を浴びせかけてくる。よかったぜ、助手を用意しておいて。跳ぶように商品が売れていった。俺は商品の補充に忙しい。


「お前って、手際がいいなあ」

「昔、お店の手伝いとかしていまして、手慣れたもんですよ~」

 おばちゃんも手伝ってくれたので助かった。


『あら、王妃様』

『まあ、アンジェリカ。久しぶりねえ。今日は何の騒ぎかしら』


 優雅なドレスを身に纏った女性は、王子のママだった。王妃様に売りつけるには、さすがに安物でファッション性が高すぎる製品ではないだろうか。さっと、超高級ブランドも並べておいた。


 王子が姉上と呼んだり、奴をお兄様と呼んだりしていたので、王女様も2名いらしたようだ。みんな、念話を使ってくれている。


 俺達がいたからだろう。よく気のつく人達だ。色々訊かれて、杏がさらっと答えていた。案外、神経が太いな。まあ、品物はほぼ知り尽くしているしね。


 王妃様も、久しぶりにおばちゃんと会ったらしくて、話に花を咲かせている。


『あら、何の騒ぎかしら。エミリー王女にコルネア王女、それにアンリオーネ王妃様もご一緒ですのね。エルリオット様、私だけ除け者だなんて酷いですわ』


 可愛らしいお姫様の抗議に、王子様がたじたじだ。

『あれはアルメイーラ王女。お隣の同盟国の姫で、殿下の許婚ですわ』


 こそっと、おばちゃんが教えてくれた。うん、何事もなければ、円満なわけだな。それだと困る奴等がいるってわけかもしれない。


 俺はジェイクに近づき、そっと耳打ちする。

「おい。殺られたりするなよ? なんか、お前が要になっているように思うぞ。あの聖魔法の儀式をやっている連中から見て、お前を片付ければ、連中の野望が成就するような嫌な予感がする。奴らの狙いは、メインがこのアレイラを手にする事なんじゃないのか?」


『まあ、充分ありうることではあるがな。考えても始まらん。一応、そう簡単にやられてやるつもりはない』


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