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5-4 迷宮都市アレイラ

 とりあえず、金貨10枚を替えて、ここを出る事にした。世界一の都とやらを見てやるとするか。

『よお、これからどうするんだ? よかったら案内してやろう』


 海外へ行った場合、こういう誘いは絶対に断らないといけないのだが、まあいいか。ギルドの職員とも普通に接していたし、ゴロツキには見えない。


 クヌードでも、探索者は結構身だしなみをよくしていた。ダンジョンの大広間で見かけた連中もきちんとしていた。どんと構えよう。


「それじゃ頼むよ。とりあえず、この迷宮都市はでかいよな。同じ名前を付けているみたいだけど、首都は近いのか?」


『ああ、お前なんか勘違いしているようだけどさ、ここが首都だぜ?』

「はあっ!?」

 迷宮都市だよ、な。


『このアレイラ・ダンジョンのように、世界一の大国エルスカイム王国の首都アレイラにあれば、とローグさんが言ったはずだが』


「えーと、王宮は?」

『あるぜ、ただし遠い。この町はでかいからなあ』


 そういえば、マルシェも馬鹿でかかったんだった。すると、ここは?

 あまり考えたくないな。


「なんで、迷宮都市が王都なんだい?」

『そりゃ、この国がここから始まったからに決まっているじゃないか』


 ああ、そうなんだ。前はダンジョンからの上がりで、国がやっていけてたって事かな?

「最近、物騒な話ってある? ほら邪神派とかさ。リビエントの方はごたごたしてたぜ」


『そうだなあ、たまにはそういう話も聞くが、それほどじゃないと思うが』

「つかぬ事を聞くけれど、この街で人間1人探そうと思ったら、厳しいかな」


 ジェイクは、難しい顔をして、

『まあ、レビエント大陸とマテリス大陸の間にある、アグリス海に浮かんでいる小船を探すよりはマシかもしれん』


 うーん、やはり困難なようだ。だが、ちょっと諦めきれない。明さんの時の無念な気持ちが湧いてくる。仕方が無い、やってみるか。とりあえず、手がかりを見つけるためのヒントから探そう。情報屋とかいそうなもんだが。ここは興信所の出番でしょう。


「人探しをしてくれそうな商売の人は?」

『まあ、情報屋とかはいるが、結構裏組織の人間と通じているからお勧めではないが。金になるかもとか思われたら、そいつ本人が危険な目に合うかもしれん。どうする?』


 それはまた。家族に相談しないと独断では動けないわ。システムだけチェックしておくか。

「保留にする。俺も頼まれただけなんだ。勝手な事はできないよ。それより、俺みたいな黒髪の人間って珍しいかい? そいつの顔立ちも、こんな感じなんだけれど」


『うーん、そうでもないが、まあこの辺じゃ珍しいかもしれんな。ただ、人間の数が半端じゃないからなあ。難しいかもなあ』


 微妙な返事が帰ってきたなー。まあ、情報はありがたい。駄目元で写真を渡しておいた。

 とりあえず、奴が薦める安全そうな情報を教えてくれる酒場へ案内してもらう事にした。


 ギルドを出たが、町の喧騒が凄い。ここは凄い大通りに面していて、通りすぎる人の波の中に、探し人が紛れていたっておかしくはない。ちょっと後ろを向いている間に、通り過ぎてしまっているかもしれない。


 名古屋の100メーター道路とまではいかないが、凄い幅がある。あれは街が空襲で一息に焼かれないようにと作られた特別な代物だしな。


 なんと、高さを上げた幅広の歩道までがあって、驚きだ。大きな交差点には、交通整理をやっている制服の男がいる。


 そういやローマ帝国にも横断歩道とか、現代風の歩道とかがあった気がするな。

 駄目だ、もうへこたれてきた。本当なら、今頃はアンリさん達にプレゼントを渡して、ウハウハな展開があったかもしれないのに。


 そんな俺の顔が面白かったのか、ジェイクがにやにやしてみていた。田舎者が都会の喧騒に酔ったようにしか見えないのだろう。

  

 地球のような都会のシステムを持っていない、地球を超える超大都会か。勘弁してくれ。携帯電話のシステムを! インターネットで行方不明者捜索サイトを作ってくれ! 交番はどこだ! 


 諦めて、酒場に連行されていった。まだ店はやっていない時間だが。背は普通くらいで髭をもっさりと生やした店主が、木の扉を開けてくれて、中で話を聞かせてくれた。少し埃っぽいような薄暗い店内で、俺達はカウンターを挟んで対峙していた。


 一通りの説明を聞いて、そいつは言った。

『まず一つ。この街にはとんでもない数の人間がいて、毎日入れ替わっている。

 そして、いろんな事が起こり、死んでいく奴もたくさんいる。

 その中で、よく勝手のわかっていないよそ者を探し出すか。

 難しいかもな。そいつが無事な保障もねえしな。

 まあ、やれっていうんなら、やるんだが、成功の見込みは薄い。

 その上、いただくものはいただかないといけない』


 酒場の主人は、左手をカウンターに乗せて、右手の手振りで説明してくれた。

「金はどれくらいいる?」

『そいつは、お前さん、どこまで仕事を要求するか、それ次第だな』


「どれくらい用意できるかは、内容によるな。ここの通貨をといえば、用意するのに時間がかかるし、金とかならある程度は用意できる。レビエントなら、割と融通利くんだが、ここじゃ完全によそ者だ」


『まあ、腕さえあればここじゃいくらでも稼げるさ。探索者なのだろう? まあ、こっちも仕事だ。金が用意出来て、頼みたいって言うんならいつでも来な。あまり変な用向きじゃあれだが、その程度の事ならいくらでも。ただし、成功の見込みは保障できんぞ』


 わかっているさ。今、本人が生きているかどうかもわからないんだからな。でも手立てがあるのはいい事だ。俺は礼を言って、店を出た。


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