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4-30 お呼びでない

 俺は、ホールのような場所に立っていた。後ろを振り返ると2つのダンジョンへの入り口が開いていた。


 ここはクヌードではない。あの100メートルはある大広間と違い、20メートルもないのではないだろうか。


 天井も低く、5メートルあるかないかで、なんかこう圧迫感がある。足元の石材の並べ方も、クヌードよりかなり乱雑な気がする。


 ここは、おそらくラプシア王国ではないのではないだろうか。へたするとレビエント大陸ですらないかもしれない。どうするか迷ったが、少し出てみる事にした。


 ここも、小ぶりではあるが、クヌードのような壁が立っていた。低くて外周も大きくはないので、見張っている兵士の位置が近い。


「******!」

 おっとお、久しぶりに言葉が全くわからんぜ。やっぱり、よその国ですか。


 俺は、記録用の高感度集音マイク付きのビデオを回しながら、念話で話しかけた。


「悪いが言葉が全くわからんから、念話で失礼するよ」


『お前はどこからやってきた! 今はこのダンジョンは立ち入り禁止だぞ!』

 マジかよ。えらいとこに繋がっていたな。


「あー、なんて言ったらいいかな。ちなみに、ここはどこの国だ」


『なんだと? パラミール王国に決まっているんじゃないか。お前はどこの回し者だ。どうやって中に入った』


「ここって、レビエント大陸?」

 相手は呆れたような顔をして、侮蔑するかのように言った。


『ここは、エルンスト大陸だ。そんな世界の果ての大陸のわけがないだろう。寝言を言うな! そこになおれ。ひっとらえてくれる』


 お呼びでない。お呼びでない? いやあ、全くお呼びでなかったようだ。それに、かなり遠くまで来ちまったらしい。


「じゃ、どうも~。なんかの間違いみたいなんで、これで失礼します」

 さっとダンジョンの中へ戻って、グーパーを呼んだ。


 奴は間髪入れずに現れて、愛嬌のある顔で、「おや、お早いお帰りで」とでも言いたそうに目を瞬かせていたが、外で騒ぎになっているのを聞きとがめたのか、さっと姿勢を低くして俺を乗せてくれた。


 そして、最初の兵士がダンジョンに飛び込んで来るか来ないかの瞬間に、俺を送り届けてくれた。


 グーパー号は、もはや、すっかり俺専用機になっていた。あの、とぼけたような顔が気に入っているんだよな。ちょっと図体はでっかいけどさ。


 俺は米軍駐屯地に顔だけ出して、さっさと車に乗り込むと数キロ先の小田原市まで車を飛ばした。ゲン直しに蒲鉾を買って帰ろうと思ったのだ。


 ろくでもない事しかなかったが、他のダンジョンにもあいつが迎えに来てくれるのがわかったのは収穫だった。


 蒲鉾は父と正さん用に多めに買った。これは俺も好きなんで、自分用にもアイテムボックスに溜め込んでおいた。


 最近は大人買いがすっかりと板についた。なにせ、異世界でおっさん呼ばわりされちゃう年頃だからな。ちょっとだけ悲しい。まだ24歳、政府の定義では、ぎりぎり若者に足かかっている年だ。


 帰りに立ち寄った浜名湖SAで鰻のパイ菓子を買って帰った。これ、淳が大好きなんだよな。


 他には、ちょっと調理時間がかかるが、注文してから作るテイクアウト用の、うな重弁当を家族の人数分買って帰る事にした。鰻弁当買ったのを連絡しておき、コーヒーを一杯補給した。


 夕方、家に戻ってから、今週も父と蒲鉾で一杯始めた。週初めに買い込んでおいた極上の日本酒で、蒲鉾と骨煎餅でゆっくりとやった。


 弁当は淳の分だけは2つ用意しておいた。今、飯がバクバク食える時なんだよな。アイテムボックスに入れておいた弁当は作りたてそのものだ。


「来週はダンジョンかい?」


「ああ、そのつもりだよ。今日は静岡の方の9号ダンジョンに入ったら、全然違う国に出てさ。向こう側で立ち入り禁止になっていて警備の人に怒られたよ。日本国内の40のダンジョンも、向こうでは全部違う国に繋がっているのかもしれないね」


「そうかい。あっち側にも、たくさんの国や人種があるんだろうね」


「それに宗教もねえ。その分だけ火種もあるって事なんだろう。これ以上、この日本で何もない事を祈るばかりだね」


 あと、ちょっと気になっている事がある。まだ、向こうで生きている日本人がどこかにいるんじゃないかとか。


 他のダンジョンで行方不明になった人とかいたら、多分遠い大陸とかの話だろう。手の施しようもない。


 明日は、そういう観点からも今回の報告書を書いておこう。俺が考えても仕方が無い。


 あちらの世界全体の捜索なんて、できるわけがないのだ。簡単な調査ができるだけだ。とりあえず、全てのダンジョンの調査はやってみたい。


 こちらのダンジョンがどこのダンジョンに繋がっているのかを明らかにして、向こうの世界の全容が少しでもわかればいいと思う。


 とりあえずは、第5第15の大きなダンジョン、そして21近郊の19・20ダンジョンあたりかな。


 家族と鰻を食いながら、来週からの異世界行きと、こちらの世界のダンジョン探索に思いを馳せた。


本日で100話になりました。応援ありがとうございます。


別作品ですが、「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

も書いております。重版出来コミカライズ決定です。

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