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1-10 町の探索

 翌日、起きてから少し驚いた。あの魔力のようなものが、満タンになっている。夕べありったけ使ったような気がするんだけどな。


 そうか、あのダンジョン以外にも、魔力のようなものがこの世界には満ち溢れていて、寝ている間にも俺の体にも溜まっていくんだな。ダンジョンの中は、その速度がとてつもなく速いって事か。


 一番気になるトイレはボットンだ。ローマ帝国のような感じか。個室ではない。ニイハオ・トイレか?


 向かいあってはいないが。さしずめ、アローイ・トイレか。アローイは、ここでは「今日は」の意味のようだ。タイ語のアローイ(美味しい)とは意味が違う。


 しかし、この世界にはちゃんと紙がある。使っている人がいるのを見た。備え付けではないので、どうやら受付で買うようだ。


 早速買いに行って見たが、品質があまりにも悪いので、そいつを原料にして物資の中に入っていたトイレットペーパーを複製して使った。


 原料が紙だけではないので、やや劣化している感じだが使うには充分だな。炭化水素系の素材として、トイレットペーパーや木綿服地から複製してセルロースを作り上げた。似たような構造の砂糖類も先に複製してあるので、手慣れたものだ。


 ここの紙よりも日本の江戸時代の奴の方がまだ質がいいんじゃないだろうか。ペーパーホルダーを作らなくっちゃ。日本のトイレットペーパーは世界一だぜ。


 だが水で洗う奴もいるようだ。「不浄の左手」用に、ちゃんと用意がされている。紙が固いのが嫌なんだろう。


 あと有料だから紙がもったいないとか。手動ウォシュレットは、ちょっとな。ローマで見られるような柄付き海綿はなかった。


 どういう仕組みになっているのか覗いてもよくわからないが、ローマのような水洗とは違うようだ。あまり匂わないし、やはり魔法技術ではないだろうか。ありがたいけど。


 手洗いは水道になっている。無骨な金属性のコックのようになっていた。これはたいしたもんだ。ゴムとかパッキングなどの素材は無さそうなんだが。


 地球のローマ時代とか中世とかは、こういう部分はどうしていたんだろうな。確か無かった気がする。流しっ放しだったような。


 用足しする場所で、「飛び散っている」ような事もなく綺麗にされているのは特筆ものだ。もしかすると、魔法とかで片付けているのかもしれない。

 

 とりあえず、魔力が満タンでは勿体無いので燃料・弾薬を作りつつ、宿を出て町へ出かけた。鍵はどうするのかと思ったら、持っていていいらしい。


 俺が、日本語で話しかけながら手に鍵の棒を持っていたら、受付の子がにっこり笑って持っていきなさいみたいな風だった。


 なんとなくだが理解できた。開閉の方式からいって、魔導式なんだ。おそらく、これはホテルで使用する登録式のカードキーだな。


 意外なほど、ハイテクが行き渡っている世界だ。進んでいるんだか、遅れているんだか、よくわからん。窓は木の板に、つっかえ棒をしているだけなのに。


 無くさないように、鍵をアイテムボックスに仕舞ってから、また昨日の解体場を目指した。俺の姿を見かけると、見付けた子供が凄く騒いでいた。


 みんなダッシュで寄ってきて、パッと手を出した。なんか、ほっこりするな。飴を配ってやったが、ささっと要領よくケモミミをもふっておいた。見慣れるとリアルケモミミも、なかなか可愛らしいもんだ。


 子供達に飴を振舞っていると、昨日のリーダー格の子が来て、困った顔をすると、身振り手振りで俺に伝え始めた。


 その様子から、なんとなくわかった。この時間だと、あの魔物素材は売りさばくのに都合が悪いのだ。俺は笑顔で、天頂の太陽を指差した。


 そして、その指を右90度の方角に動かして止めた。彼は、にっこりと笑って頷いた。午後3時くらい。そこで解体して、売りに行くといい感じなのだ。


 夕飯の材料か? 案外昨日のステーキか、シチューの肉かもな。まあ、美味かったからいいや。


 俺はこういう性格なので、自衛隊でも困るような事は一切無かったし、米軍相手でも飄々として付き合っていた。


 そして、異世界でも困らないようだ。手を振ってくれる子供達に、俺もいっぱい手を振りながら、次の攻略目標へと向かった。


 それは市場だ。この世界にスーパーマーケットは無いと思う。路上市だ。とりあえずは小麦だな。昨日酒の空き樽から、大量の酒石酸はゲットしてある。


 ベーキングパウダーは一つの目標だな。ここのパン、固いわ。いや硬いっていうか、堅いっていうのか。もうね。昔の携行食料じゃないんだから。客に出す前に焼き締めているの?


 おお! 色々あるなあ。化学調味料に塩と砂糖は合成済みだ。小麦粉・小麦・胡椒・その他スパイス。


 スパイスって、高価そうなイメージがあるが、この町は身入りが良さそうだ。それなりに裕福なんだろう。あの餓鬼共にはそれが行き渡っていないだけなのか。


 食材は豊富なようだ。野菜に果物、各種の木の実にキノコ、肉類に卵、ミルクまであった。油に、なんと米まであった。


 陸稲っぽい感じがする。味はイマイチだが原料としては充分だ。手持ちの弁当やオニギリが複製できればいいんだ。日本食かぶれの米兵達に感謝する。


 服にいたるまで、あれこれ買って回った。ついでに、子供達の服とか適当に買っていった。いらないと言われるかもしれないが、なんとなく仕入れた。


 この言葉の通じない世界で、縁のあった子供達に救いを求めているのかもしれない。服もセルロースなどから複製が利いた。染料やその原料などを買えば、色合いもいい具合にできる。


 なんだかんだ買ったが、まだ金貨は50枚残っていた。


 それにしても、この町はいろんな格好した奴がいるんで、俺の格好なんか地味な方だ。全然目立たないな。


 少し早めだが、解体屋さんのところに行った。俺を見つけるや否や、わ~っと集まってきて手を出した。みんな夢中で飴を食っている。


 包み紙ごと食っている奴がいないか見たが、いなかった。なんか大事に畳んで仕舞っているみたいだし。後で舐めたり匂いを嗅いだりする気だな。まあ、いいけれども。


 リーダーの子が、ちょいちょいという手つきをして、両手の指を全部立てた。10体か。俺はなるべく作業がしやすいように、広げてやった。


 俺も、昨日よりはグロ耐性が付いたようだ。子供達が、かなりワイルドな血抜きをしたので、あたり一面が血の海だ。獲物がでかいから、子供達が吊るすわけにもいくまい。


 今日の分は破損が多い。目玉が2個減ってしまったな。素材を受け取って、奴らには服をプレゼントしてやった。凄く嬉しそうだったが、これから肉とか売りに行くんで、今は着替えないようだ。


 出かける前に、みんなで俺をぺたぺたしていく。仲間に認定してもらえたような気がするな。ちょっと俺の体も血生臭くなったのは気のせいか。


 換金して、金貨111枚。あの親父も今日はぼったくりはしてこなかった。俺が先に計算してやったからだ。両手の人差し指を交互に3回立ててやった。111と。


 親父は笑って先に金を出してくれた。もう一見いちげんさん扱いではなくなったかな。魔物の残りは37匹か。手持ちの金貨161枚っと。1枚は銀貨に替えてもらった。金貨を差し出して、銀貨を1枚つまんでみせれば、わかってくれる。


 今日はある物を探しに行った。地図だ。周辺の川や岩山のような場所が知りたい。


 俺にとっては、この町は資源鉱山のようなものだ。あと、こちらの世界での値打ち物を集めたい。どうせなら、お宝を持って帰らないとな。


 ここで俺が個人的に買った物は、当然俺の個人財産だ。今なら日本円に換金してダンジョン関連株に突っ込んでおけば、一財産だ。


 始めたのは割と最近だが、株はうまいほうだ。こういうのは向き不向きがある。資金が無いんで、今まではどうしようもなかったんだ。少し運が向いてきたかもしれない。


 地図は意外と簡単に見つかった。だが、地球の物に比べると、随分とおおざっぱなものだ。測量技術とか、ちゃんとあるのか?


 実際の距離はどれくらいだろうな。明日1回行ってみるか。町の外へ出るのは、どんな具合だろう。


 街の端っこまでは、かなり距離があった。車は自重したので歩いたら、町の端まで片道2時間もかかってしまった。


 行ってみれば、なんと、そのまま外に繋がっていた。まあ、城壁とかあったら、中心からでも見えそうだしね。


 この街、半径10キロ近いぞ。思ったよりもでかい。帰ってきたら、もう薄暗くなっていた。治安はよくないだろう。気をつけよう。


 次回は、23時に更新します。


 初めて本になります。

「おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~」

http://ncode.syosetu.com/n6339do/

7月10日 ツギクルブックス様より発売です。

http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html

 こちらはツギクルブックス様の専用ページです。


 お目汚しですが、しばらく宣伝ページに使わせてください。


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