ゴブリンは語尾にゴブってつけがち #1
ゴブリン、と言うと大体の人が、粗末な衣服と武器を身につけた緑色、あるいは茶色の肌をした、子供くらいの大きさのモンスター・・・というのを想像すると思う。
ここ「偉大なるニナローの世界」ナローニアに生息するゴブリンもその例にもれず、まあゴブリンといった感じである。今回はゴブリンのお話であるのだが、ゴブリンの外見に対してはこちらから新たなイノベーションというか、そういったものをなんかするつもりはないので、各々の好きなゴブリン像に沿ったイマジナリを展開してほしい。
「まずゴブリンの個体の大多数を占めるのが、プレーン・ゴブリンです。主に平原に生息していて、村落を作り、農耕を行い独自の文化を持ちます。村の中には教育機関があり、ヒト属をはじめ他の種族と敵対することはめったにありません。そして、おそらく私たちが一番目にしているであろうゴブリンが、アーバン・ゴブリンです。都市での生活に適応した個体なのでプレーン・ゴブリンとは分けて考えられていますが、その実態は都市部へと出稼ぎにやってきたプレーン・ゴブリンです。なのでゴブリン歴の新年なんかには、実家へと里帰りするゴブリンがたくさんいるんですよ。
「・・・・
「そうです、毎年2月ごろになると町中からゴブリンがいなくなるのは、里帰りしているからなのです。働き者の彼らがいなくなるということで、その穴を埋めるのに、2月はどこのお店もてんやわんやですよね。
それからゴブリンにはまだまだ種類がありまして・・・
きりがないのでいったん切ろう。ここは「魔導馬車オートヒヒーン」の幌の中。朝日がまぶしい午前8時、ブルーム王国の首都オーカーから、ゴブリンにまつわるクエストの目的地へ向かう途中である。そしてこのゴブリンについて熱心に話している女性がキキミミ=アマミ、魔物話士だ。
「ファイター・ゴブリンは森林や山間部に生息し、狩猟文化をもつゴブリンです。プレーン・ゴブリンなどとは違って他種族との交流をほとんど行わず、縄張りから出てくることは、プレーン・ゴブリンの集落と物資の交換をするときぐらいでしょうか?そしてその縄張りというのがなかなか限定的でして・・・
魔物話士とは、魔物の言語や習性、文化に精通した職業である。主な仕事は魔物言語の通訳およびネゴシエーションといったところか。ゴブリンの他にもマーマン族にオーク属、ゴーレム族など、独自の言語や文化をもった魔物は多く、そうした魔物たちと、文化の違いからいらぬ争いをまねくことが無いように、魔物話士たちは語学を修めたり、テレパシーのスキルを磨いたりといろいろ努力しているのだ。
「・・・であるからしてつまり、霊峰スザックとその周辺をファイター・ゴブリンは縄張りにしているのです。これから向かうウコッケ村は、霊峰スザックのふもと・・・ おそらく、ファイター・ゴブリンの縄張り付近かと思われます。
「つまり、最近ウコッケ村の付近で頻繁に目撃されているゴブリンは、ファイター・ゴブリンである可能性があるのだな。ああああ くん、今のうちに、戦闘になった時の打合せをしておこう。
「・・・・
「ほうほうそんなスキルを。人は見かけによらないな。ちなみに私はだね・・・
ああああ との打ち合わせを切り出したこの男性はキーパー・ウルフレン。ブルーム王国所属の守護戦士である。ゴブリンは知性を持った社会的な魔物なので、たとえば今回のように「村の付近で頻繁に見かける」といった程度で冒険者や兵隊を集めて、討伐クエストなど行おうものなら、それこそゴブリン族との外交問題に発展すること間違いなしである。なので、他種族とのいざこざが発生した場合は、魔物話士と王国の職員が現地におもむき現状把握するという決まりになっている。ああああ は、まあそのお手伝いというか、おまけである。
「冒険者ギルドは王国から独立した組織であるから、こういう時はなるべく情報を共有したいという狙いもあるな。ともかく、キキミミくん、ああああ くん よろしくたのむよ!
「はい!
「・・・・
後方にはだんだん小さくなるブルーム城が、前方にはうっすらとスザック山が見える。スザック山はナローニアで3番目に高い山と言われており、天気が良ければオーカーの町からも、その姿を望むことができるほどだ。
「ゴブリンには、一日に一度スザック山の方角に祈りを捧げる風習があります。ゴブリンにとってスザック山はとても特別で・・・ だから我々もつられて、「霊峰スザック」なんて呼んでいるんですよ。
目的地であるウコッケ村には、日が暮れる前には到着するのであるが、はたして到着するまでにアマミのゴブリン講座が一段落するのかどうか、ウルフレンにも、ああああ にも、そしてアマミ本人にも分からないのであった。
ああああ の冒険 続く