2100.5.20 ゲートイン
鋸南町、am6:00、涼やかな空気のなか、作戦行動開始だ。
ゲートをくぐって早速、打ち合わせどおり二手に分かれた。自分らショウ&ミコの第一パーティは、県道89号を華々しく東進。
そしてマーチ&ミラの第二パーティは、とりあえず昨日のコースを、ひっそりと逆にたどる。
作戦は“陰陽の策”。目立つ第一が陽を受け持ち、第二が陰を担う。俺ら四人は、互いの健闘を祈って手を振りあった。任せたぞ――さあ、行こう!
かつてない作戦に、アキラとミラは入れ込んでいるのか、顔を血色よくさせながら、そそくさと自分の道を急ぐ――
マーチもまた、興奮してるのか真っ赤な顔で、セーラー服のミラのケツを追うように足を速めだしていた。おいおい(笑)。その姿に一抹の不安を感じたのだが、まぁ、奴の手綱はそのミラが握っているのだ。なんとかしてくれるだろう。俺はそう信じ、意識を切り替え、前方を逸って進むミコに声をかけたのだった。
「お前は大丈夫だろうな?」
「はい――」さすがはミコ、すぐに返事がある……。
「……」
いや、あったはいいのだが……。
これがまったく、消え入るような、頼りない細い声なのだ。
顔は(まるでほかの所は見たくないとでもいうように、)硬直したかのように前方を見据えたまま。
俺は頭を抱えてしまいたくなったのだった。おいおい(笑)、どうしたみんな、スタート直後でいきなり、ヤングチームの限界露呈かい? いらん緊張してんのか?
気心のしれたチームメイトである。俺は安心させようと、気安く後ろからハグすると(ひゃん!)、形よい耳をカミカミしてやったのでした。とたん、
「あんっ――!」
と可愛い声を上げるこのコである。
自分の反応に自ら驚いて目を丸くさせ、顔をまっ赤にさせている。おっといけない――
やりすぎたか?
彼の女の子の部分を引き出してしまったか?
自分の無神経な振る舞いに、さては俺も、気づかず緊張してたのかもしれない、と反省する。
「男同士気楽にいこうぜ!」
フォローのつもりで肩を軽く叩き、自分が先頭になって降下し始めたのだった。
「――」
後ろを“見上げる”と、新調の白の編み上げ靴がまだ脚に馴染んでいないのか、足取りがおぼつかなく、ちょっと移動しては体をモジモジさせている。俺に見られていることに気づくと、ほほを染めて、けっきょくサポートを求めて愛らしく手を差しのばしてくるのだ。うん――
これくらいは甘やかしてやるさ! 俺は微笑を絶やさず、彼をリードしてやったのだった。