そこには何がいた?
このモリータ初のホラーっていうか怪談です。
怖さよりもリアリティを重視してみました。
温かい目で読んでいただければ幸いです!
怪談をしていたり、ホラー映画を観ていたり、もしくは心霊写真や心霊動画を特集した番組やDVDを観ていると、実際に霊が集まってくる。
もしくは、墓地や地元で有名な心霊スポットや廃墟に遊び半分で行くと霊に遭遇してしまう。
という話を聞いたことがないだろうか。
一度はあると思う。
心霊動画等では、心霊スポットや廃墟に撮影しながら入り、騒ぐ。その結果、そこに居るモノの怒りをかってしまう。というものをよく見るのだが。
今からするのは、それに似通っていることかもしれない。
これは俺自身が高校時代に体験した話だ。
俺は吹奏楽部に所属していた。
練習場所は多目的校舎と呼ばれる3階建ての建物の三階と二階がメインだった。しかし、部員は80人を超えているので多目的校舎の中だけでは狭く、音も混ざってしまい練習にならなくなってしまう。その為、放課後はパート練習場として隣接する本校舎の教室を使わせてもらっていた。
もっとも、教室をパート練習場として使っているのはどこの学校も一緒かもしれない。
そして、たまにOBの先輩やプロの先生がレッスンに来ることがあり、その時もパート練習場を使うのだ。
この多目的校舎の中は正直言って薄気味悪さを感じる。
実際、合奏練習中に誰も立ち歩いていないのに足音がしたり、その足音もドタドタッ!といった感じの足音なのにも関わらず、自分含めて2~3人程度しかそれを聞いていなかったり。
他にも色々あるが今回は割愛する。
俺の親戚にはこの学校の吹奏楽部の卒業生が5人いて、その一人が俺と同じ楽器をやっていた縁もあってレッスンに来るようになった。
「あ、もうこんな時間か。休憩しようか」
夏休み真っ只中、俺達は本校舎の三階でレッスンを受けていて、教室はクーラーが効いていた。それでも昼休み明けてから三時間もぶっ通しで練習していれば多少の汗はかくし、唇もバテバテになる。
この休憩宣言で一気に気が抜けて、完全に脱力モードに入るパートの皆だが。
「・・・どうした?一点ばかり見つめて」
「あ、いえ。なんでもないです」
後輩の女子が黒板をジーっと見ていたのだ。
「なに?何かいるの?」
この流れから、怪談が始まった。
とは言っても、レッスンに来ている先輩はそれなりに霊感を持っていて、現役時代にも見たという話だ。
合奏中に視線を感じて、それを辿ると指揮する先生の背後から、こちらを見つめる目があった、という話や。授業中にふと多目的校舎を見ると誰も居ないはずなのに人陰があったという話。
そして、多目的校舎で合宿をしたのだが、夜に突然打楽器が勝手に鳴り出した。という今の部員達の間でも有名な話の当事者であったことには驚いた。
そして
「そういえばさ、多目的校舎の二階の窓っておおきいじゃん?」
それはこの話の時に起こった。
「その二階の校舎側にある窓の上の方に生首写ってたのを見たよ」
「それ本当ですか!?」
「生首とか出るもんなんですか?」
「意外とね。多目的校舎二階で個人練習してた時にふと上見たら窓に生首写っててさ、雰囲気的にこれはアカンやつやと思ってすぐに目そらしたけど」
「「・・・・」」
女性陣は多目的校舎二階では練習しないかもな。
と俺は呑気なことを考えていた。
「アレは今でもハッキリ覚えてるな。見た目で女の・・・・」
ゾワッ
その瞬間、背中の右半分だけ鳥肌が立った。それと同時に先輩も話すのをやめて、目線だけで俺を、いや、俺の背後を見ていた。それで気付いた。
何か来たのだと。
「え?え?」
「先輩?どうしたんですか?」
「・・・・・」
何も答えず、何かを確認しているが。突然口を開いた。
「この話は終わり!それにそろそろ4時になるから、レッスンも終わりだな」
時刻は3時45分、4時からは合奏が始まる。
それからパートの皆は頭に疑問符を浮かべつつ片付けに入った。
「もしかして何かきた?」
俺はこっそり話しかけた。
「なんで?」
「背中の右半分だけ鳥肌が立って、それと同時に先輩も止まったから」
「後で話す」
そのまま片付けも終わり、多目的校舎へと向かうが。
「お前は俺の荷物を2階に持っていくの手伝え」
「え?そんな大した荷物じゃ・・・」
「バカ野郎、親戚でも後輩は先輩の言うことを聞くもんだぞ?」
俺は渋々荷物を受け取り、多目的校舎の2階に先輩と二人で行き、他の皆はそのまま三階に向かった。
「おし、ありがとう。・・・でさっきの続きだけどさ」
「さっき?あぁ」
「気配は怖い話をし始めてからあったんだけど、生首の話をしてからいきなり近づいてきたんだよ」
「うえぇ・・・」
何か怖いな、と思いつつ話を聞いていると。
「お前から見て、すぐ右後ろまで」
その時、またゾワッとした感覚が背中を走った。
「あ、ちょっと待て」
「つ、付いて来ているとか言わないよね?」
「違う。あの時の生首、窓に写っていたんじゃないかも」
先輩は窓を確認しながらある位置で立ち止まる。
どういうこと?
頭にはそんな疑問が浮かぶ。
それを他所に先輩は本校舎側の窓を見つめる。
「写っていたのはあの窓なんだけど」
そう言って1つの窓を指差す。
「・・・で、ちょうどこの位置なんだよね」
そのまま指した指を上の方へと動かす。
「やっぱどう見ても」
「・・・・あ」
何を言いたいのか理解した。
先輩が指した窓の上の方、そして先輩がたっていた位置から見えるもの、それは。
本校舎の三階
しかも三階が見えるだけじゃなかった。その位置から見える場所は廊下とその向こうにある
「さっきまで俺達が使っていた教室だ」
つまり、先輩が見たっていう生首が、実は窓に写っていたのではなく、三階の教室にいるのを窓越しに見た。
ということだ。
もしかしたら、その生首が俺のすぐ右後ろに来ていたのかもしれない。
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その日の終わり。
「気を付け!礼!」
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
合奏も終わって部活が終了したのは8時を過ぎた頃だった。
「失礼します!」
「ん、お疲れ」
「失礼します!」
「あい、さよなら」
後輩達の挨拶に軽く答えながら帰る準備をしていると。
「帰る準備が出来たら俺んとこ来い」
先輩が俺を呼びに来た。
「パートの皆は?」
「お前だけでいい」
「?」
何だろうか?と思いつつ帰る準備を終わらせて先輩のもとへと急いだ。
「あれから何か変な事とかなかった?」
「いや、なにも」
「それならよし。お前も気を付けとけよ?」
「気を付ける?何を?」
「俺がこうなったから」
と言ってズボンの裾を捲って見せる先輩。その足にあったのは痣。
「何があったの?」
「多目的校舎二階に戻った後トイレに行って、二階に帰ってる途中で何かに足を引っ張られて階段を転げ落ちてしまったんだよね」
「え?・・・それって大丈夫なの?」
「この痣の所を掴まれて引っ張られたからね。まだジンジンとした痛みはあるけど大丈夫だと思う」
大した事はないと言ってくるが俺が言いたいのはそれでは無かった。
「え?・・・いや、そうじゃなくて」
「・・・?」
「その痣、手形になってるけど」
痣は何かに掴まれた痕にしか見えないのだ。
「・・・単なる痣じゃなくて、手形に見えるんならやっぱり気を付けたがいいよ」
「・・・え?」
「これは掴まれた痕じゃなくて。今もまだ掴まれているから」
この言葉を聞いた時、そこを掴んでいる手とその主が見えた気がした。
記憶が正しければ、見えたそれは女の・・・いや。
また鳥肌が立ちそうで怖いのでやめておこうと思う。
どうでしたか?
できれば指摘などお願いしたいです。