ep.5 表と裏2
前回のあらすじ:ごちやごちゃしすぎてなんとも言えない
はぁ、はぁ、と息を切らしながら授業中の教室に入ったのは、ゴリラ体育教師に竹刀で叩かれながら下駄箱まで走らされた渚畢だ。
「……」
「どうした渚。君が遅刻なんてめずらしいこともあるもんだな」
「す、すみません。色々あって」
「そうか。なら、自分の席について授業を受けなさい」
「はい」
1時間目の授業が担任の授業で良かったと、そう思わずにはいられない渚であった。何故なら、担任は渚の良き理解者であると同時に父親みたいな存在だからである。
「でぇ、渚くぅん。色々ってなに?」
席についた渚ににチャラい系男子・用馬光はニヤニヤしながら話しかけた。
「なんもねーよ。そう、なんも」
窓の外をぼーっと眺めならそう返した
「ふぅん。そっか」
「そうだよ」
ようやく静かになってきたところで
(はぁ、結局あの人は誰だったんだ?てか、あの美人さんも誰か分からずじまいだしなーくそっ)
朝に見た超絶美人お姉さんと前に会った美人さんのことをモヤモヤしながら考えているとふと気配がしたので顔をあげると、そこにやけに殺気めいた、しかしどことなく心配そうに顔をのぞき込む担任がいた。そして、担任と目が合ってしまったのが悩める少年の運の尽きだろう。次の瞬間、空手仕込みの脳天直撃チョップがこの少年の脳天へと直撃した。授業中の学校に少年の悲鳴ともつかぬ断末魔が響きわたったのは言うまでもない。
担任による制裁によりダウンした渚はため息しか出てこない。それもそのはずだ、脳天直撃チョップをまともに喰らった後に意識が朦朧としながら10分のマシンガントーク説教を受けたのだ。どんなに精神的に強い人間でも、生徒の前でしかもマシンガントーク説教を受けてはダウンするのも無理はない。そんな感じで机に突っ伏している渚に近づく影が一人。
「ねぇ、渚くん?」
「ん?」
渚がよろよろしながら顔を上げるとそこに、
「会いに来たよ」
日本形のような美人さんがにっこり笑っていた。目の前の出来事が理解できずしばらく固まっている渚に美人さんは
「だーから、まだ自己紹介まだだったでしょ?だから挨拶がてら会いに来たってこと………って、おーい?」
説明してもまだ固まっている渚に手を振るが応答なし。次の瞬間、美人さんは頭突きを繰り出した。その頭突きは不幸にも、まだ痛みがとれていない少年の脳天へと再度激突した。また少年の悲鳴ともつかぬ断末魔が放課後の学校に響きわたったのであった。
「いてて…」
脳天を抑えつけながら目の前の美人さんを見つめる少年。
「ということで、私は氷室妙希よ。よろしく渚くん」
氷室妙希。美人さんの名前は氷室妙希。
そう、心の中で呪文のように唱え続ける渚だった。
「ところで、渚くんは今から暇?」
「……暇といえば暇かな」
その答えを聞くと、氷室は大胆不敵に笑って
「では、今からゲーセンに付き合いなさい!」
「はぁ!?」
渚は勢い良く後ろへ倒れ込んだ。それを見逃さないのが氷室である。すかさず倒れ込んだ渚の裾を掴み荷物も掴んで教室から出たのであった。
「うわ、ちょっ、離してくれぇぇ!!」
今日3度目の悲鳴ともつかぬ断末魔が部活中の学校に響きわたったのであった。
とある古い洋館の1室。その暗い部屋の中で電話で話をしている男が1人。
「あぁ、そうしてくれ。早急にだ。5日後に開始するからそれに間に合うように。あぁ、わかってる。それじゃあな」
電話を耳から外し台に戻すと、
「で、その計画は成功するのかね?渚よ」
老人がその男に話しかけた。渚と呼ばれたこの男はとある学校で教師をしている佐藤恵一だ。
「さぁ、私には分からないことだ。全ては運命の子に懸かっている」
「彼、か。いいのか?」
「いいんだ。全ては神への贖罪のためなのだから」
佐藤はおぞましい形相でニヤリと笑いながらそう言い放ち、古めかしいドアを開け外へと出た。老人はそのドアを見つめ、
「やれやれ。強情なやつめ」
苦笑いしながら椅子に座り込んでテレビをつけた。すると、ニュースがやっていた。
『私は、現場に来ています。また惨殺死体が見つかったようです。現在、警察が事件の内容について捜索してる模様です』
猟奇殺人について流れていた。老人はそれを見ながら、
「世界とは、そう簡単に変わらぬものだぞ」
そう呟いた。
どうも、最近サブタイトルのネタが尽きた藍那珂コウです。
僕の相棒であるXPS8700が無事に工場から帰ってきました。感激!
それはそれとして、今回はギャグてんこ盛りの最後の部分だけシリアス的な何かをいれました。運命の子は誰なのか、予想のついた方もいらっしゃるかもしれませんね。
そして、渚くんの運命や如何に。
最後に、ここまで読んでくれた皆様ありがとうございます。
ep.6を出す来週の土曜日までに新作の【兇夢狂奏】を出すかもしれませんので、良かったら読んでみてください。