プロローグ
薄暗い部屋。辺りは静寂に包まれている。窓は無く、時間はもちろん天気さえ分からない。部屋には中央に丸いテーブルが一つ置いてあり、その上に蝋燭が一本立っているだけで他には何も無い。まるでこの場所だけ時間が進んでおらず、世界から取り残されてしまったかの様な寂しい場所だった。
瞬間、突然視界が奪われた。部屋一面が強烈な白い光に覆われたのだと理解するのが早いか否か、二人の人影が現れたことに気付く。稲妻のような電光の後、部屋は再び淡い闇に包まれたが静寂は二名の来訪者の会話に打ち消される。
「本当にこいつらでいいんだな?」
荒々しい男の声だ。どうやら男はもう一人に何かの確認を求めているようだ。
「無論だ。お前もその目で見ただろうきっと彼らしかいないさ。それにあの人の指名だ。我々が口出しする話ではない。」
若い声がこれに答える。よく響く、透き通るような声だ。ひどく抽象的な声で、声だけでは性別は判断できない。
「ああ、そう…だが。何か頼りなくないか?こいつら闘える気がしないんだが。本当にこいつらでよかったのか?すぐ死んじまいそうじゃないか。」
男は不満足げに愚痴をたれながら投げやりにテーブルに四枚の写真を置く。若者は苦笑し写真の一枚を手にとった。それぞれの写真には人物が写っている。
「確かに見た目は…。だが問題はないさ。何も闘いだけが全てなわけではない。それに彼らにはハンデがあるんだから。」
「それもそうだな。どうなるかは来てからのお楽しみ、か。まあ期待しないで待つさ。」
男はそう言って笑いながら再び白い光と共に姿を消した。若者はテーブルの上の写真を拾ってポケットへしまい、呟く。
「彼らならやってくれるさ。きっと彼らが来ればこのツマラナイ世界も変えてくれる…」
そう言うと若者も光に包まれ姿を消した。