リザードマンと夢の同居生活?
その日も何時も通りだった。何時もの様に学校に行き、何時もの様にクラスの友達と昨日見たドラマの話で盛り上がり、何時もの様にちょっかいを掛けて来るクラスの男子に制裁を下し、何時もの様に英語の時間は爆睡して、何時もの様に授業の後で友達にお菓子という賄賂でノートを写させて貰って、何時もの様にお昼はお母さんの手作りと冷凍食品半々のお弁当を友達と机を合わせて食べ、その後朝学校に来る前にコンビニで買ったロールケーキを友達と分け合って食べて、午後の授業も適当に先生の話を右から左に流しノートだけはちゃんと取って、教室の掃除を此れまた適当に先生にバレない程度に頑張って、部活に行く友達を見送って家へと向かって歩いて居た。
そう、今日も今日とて何時も通りの生活を送って居たのだ。特別何か変な事もして無かったし、だからって特別変な事も無かった。
何時もの様に学校から家へと帰って来て、四時頃に放送して居るアニメでも見るか何て思いながら玄関の扉を開けたら――目の前にはでかいトカゲが居ました。
「……」
「……」
見上げなきゃ無い位大きなトカゲと目を合わせる事数秒。私は反射的に開けた扉を閉めた。
そりゃぁもう頭の中では警報がビンビン鳴ってたからね!
だってどう考えてもオカシイでしょ、何で家の玄関開けたら目の前にでかいトカゲが居る訳!?
其れもでかいトカゲなだけじゃ無くて、そのトカゲは私という人間と同じ様に二足で立ってるとかどんなファンタジー!?
え、此れよく有るファンタジー!?
いや待て、あれは何処かで見た事が有るぞ!?
そう、其れは此の前クラスの中心的人物って言うか盛り上げ役? 的なあの脳ミソがひじょーに足らないクラスの男子Aに見せられたんだ。
え、何で名前が無いのかって? そんな事決まってるじゃないか。
面倒臭いからだよ! 何で一々多分此れからもう出番なんて無い男子の名前なんて言わなきゃ無いのさ! あんな奴Aで十分だよAで! 此れでもかなり良い待遇をしてるんだからね?!
兎に角、その男子Aが何やら最近買ってハマったというゲームを見せて来たの。
そのゲーム今流行りのファンタジーで更にRPG物だった訳。男子Aに言わせると、此のゲームは今かなりの人気が有るゲームだそうだ。
でも生憎な事に、私はRPG物は一切しない。だって攻略本見ても全然クリア出来ないんだよ! 何かもうレベル上げとか、アイテム取るとか地道過ぎてやってられない。
其れに私は乙女ゲーム派なんだよ! イケメンをどんどん落として行く事に時間を費やすんだよ! 誰が悲しくてイケメンでも無い、魔物みたいなちょっとグロい見た目の敵と戯れなきゃ無いのさ!
そんなの断じて反対だ! 好きな人がやるのは大いに結構だけどね! 別に否定はしないよ!? 私はしないけどね!?
其れで私が何を言いたいのかだけど、その男子Aにそのゲームを見せられた時に、丁度男子Aが使って居た勇者的ポジションのキャラと戦って居たのが、そのさっき見たトカゲみたいなキャラだったの。
名前は何て言ったんだっけかな~。此処まで! 喉位まで出てるんだけどなぁ。
あ、そうそう思い出した! 確か――
「リザードマン!」
私が叫ぶ様に発した瞬間、目の前の扉がガチャリと開いた。あれ、オカシイなぁ。私扉なんて開けて無いんだけど…。
ゆっくりと見上げれば、目の前には緑色の、まるで爬虫類の様な皮膚をした――
「あ……」
まさにゲームで見せられた通りの、リザードマンの姿で在った。
ギョロリと、赤い瞳を動かし私を見下ろしたそのリザードマンの瞳と目が合った瞬間……私はぶっ倒れた。
其れも前じゃ無くて後ろにね。