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出してもらった温かいココアを飲んでいると、いくらか心は落ち着いた。彼女の前には私のとは違う香りを漂わせるコーヒーが置かれていて、ココア飲まないんですか?と聞いてみると、甘いもの苦手だから、と彼女は微笑んだ。
「あんな、ごめん。さっきの説明はさすがにテキトーすぎた」
急に背筋をぴんと伸ばした彼女にきょとんとした視線を送ると、彼女は困ったようにまたまた微笑んだ。よくふにゃりと笑う。
「短刀直入に言うんやけどさ」
また適当じゃん、と思う。でもまだ彼女の顔は輝いていて、何がそんなに嬉しいんだろうかと単純に疑問を感じた。猫でも拾った気分なのだろうか。それなら彼女はさっさと私を元の場所に戻したほうがいい。
「りえちゃんのお兄ちゃん、てさっき言ったけど。実はなーあの人あたしの従兄。まあつまり簡単に言うとりえちゃんもあたしの従妹なわけ」
「は? あの」
「ほんっとになんか急すぎる説明なんやけど、りえちゃんとあたしと兄ちゃんは一応親戚なん。とはいっても血は繋がってへんけど。ま、その辺の説明は省かしてもらうわ、別に大事やあらへんねんそこらへんはな」
やけに早口になる彼女に戸惑って視線を送ると、今度は彼女は気がついていないようだった。混乱する頭で少しずつ紐解くように考えてみると、どうやら簡単にいうと私と彼女は親戚同士らしい。どうりで顔が似ていると思った。失礼かもしれないけれど、ふにゃりと笑うところは私にそっくりだと思う。よく人に言われるのだ、りえちゃんはふにゃっと笑う子ね、と。
「んで、親戚っても遠いからかわいいかわいいりえちゃんも遠ーくから見守ってたわけやけど、とうとうSOSが出て出動してきた! うちの家系で東京に住んでんの、兄ちゃんとりえちゃんの他はあたしだけやし」
「そう、なんですか。ごめんなさい、こんな夜中に」
「そんなそんな。あたしずーっとりえちゃんに会いたい会いたいってちっちゃい頃から思ってた。それにしても我ながらよく見つけたわ、小学生で最後に会った時以来ほんま綺麗になって」
それって自分のこと褒めてるのと一緒ですよ、だってあなた私にそっくりなんだもん。愚かな考えは自分の奥底でつぶして、とりあえず深々と頭を下げた。暖房の効いたあたたかい家はとてもありがたい。あれから家に戻るなんて気まずくてとても無理だと思っていたので助かった。絶えずニコニコと柔らかい笑顔を見せてくれる彼女は、ゆっくりしていきな、と優しく語りかけた。
「ありがとうございます、えと」
「あ、うん、ななでいいよ」
「じゃあ、ななさんで。ありがとうございます、ほんっとに」
「うんうん、気にせんと」
まるで振り子のようにしきりに頷いてから、ななさんはふと言った。瞬時に私は自分の中で何かが混乱しすぎて爆発するのが聞こえた。
「しばらくここで生活するんやしな。あ、せや、もう夜遅いしとりあえず寝よ。荷物とか明日でええよね」