非日常について
「まずは名前だな。俺は煉牙翼。お前は?」
「あたしは―」
答えようとするのを遮って
「そういえば知ってたな。紅美香。だったよな?」
そう先に言う。すると紅は
「な、なんで知ってんのよ。まさかあなたストー―」
「断じて違う。というか俺の名前を聞いて何も思わなかったお前の方がおかしいと思うぞ」
そう言うと、なにがおかしいのか説明しなさいと言っているようににらみつけてくる。お~こぇ。
「まぁ、これはお前を助けた理由を説明すべきかな」
「そういえばそうね。どうして?」
その先にはあたしのほうが悪い奴かもしれないじゃないという意味の含まれているのだろう。
「1つはお前が美少女だからだ」
そういうと少し頬を赤く染めて、目線をそらしながら、
「あ、ありがたく受け取っておくわ」
と言った。
「まぁ、これはあまり関係ない理由なんだがな」
「関係ないんだったら言うんじゃないわよ!」
照れて損したわ。とか言いながら目線をこっちに戻す。
「1番の理由は服だな」
「服?」
そう言いながら自分の服装を見回している。
「というか俺の服見てなんか思わないのか?」
「?…………!ああ!それ、うちの制服じゃない。」
そう言った紅もうちの制服なのだが…俺は遠くからでも気がついたのに気付くの遅くね…。
「だから助けた。うちの生徒だしな」
「でも、それってあたしが悪い奴じゃないって言う理由にならないわよね?」
普通だったらそうだな。だけどな
「いや、なる」
俺は言い切る。ここだけは譲れない。
「今の生徒会のあるうちの学校に悪い奴がいるわけがないんだよ」
それが俺の譲れないところ。今の生徒会は確かに生徒会らしくはない。かなりふざけているのかもしれ
ない。でも、それ以上に俺たちは楽しんでいる。あいつらのやることは全部生徒会としてはおかしいが面白いからな。
「それとな、お前、俺と同じクラスだろ」
「へっ?」
やっぱり覚えてないのか。
「もう少し外にアンテナ伸ばそうぜ。いつも本ばかり読んでないでさ」
こいつが同じクラスなのに俺を覚えてないのはいつもこいつは本を読んでばかりなのである。基本的に
はどんなことにも不干渉でいた。
「俺って結構有名だぜ」
正確に言うにはリュウとのコンビで有名なのである。おもにあいつがいろいろとやって目立ち、俺がそれの後かたづけをすることでである。
「そ、そうなの…知らなかった。」
「それに、俺とリュウはいろんな人を見てきたからな。ある程度なら隠していてもそいつがいい奴か悪い
奴かはわかる」
こいつもあいつといて得た能力だ。あいつの方は本当に正確だが、俺でもいい奴か悪い奴かくらいはわかる。
「まぁ、これくらいにして、とりあえず術師について聞かせてもらえるか?」
「わかったわ」
そう言って俺の知らない非日常を語りだす。
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「結局まとめるとだな、」
そういっていろいろ話を聞き、必要な情報をまとめる。
「まず、術には何が必要だああだこうだあったが、あいつに会う前に俺が術を使えるようにはならないんだな」
確認の意味を込めながら尋ねる。これは結構重要な事で俺が直接戦力になれるかどうかを表す。あいつはもう油断してないだろうし、ハッタリで勝てる可能性はほとんどない。
「なんかいろいろと話したことを約されたけど…まぁ無理ね。天才でも修行して3年はかかると言われているわ」
つまり直接は戦えないということになる。
「おまえは炎を使えて、あいつは風を使えると」
「そうね。その通りだわ」
「そして、あいつはおまえよりも強いと、正面から戦えばほぼ負けるということでOK?」
「残念ながらOKだわ。あたしがなんとかしたいのに3割も勝率がないなんてね…」
「まぁ暗い雰囲気になるのは自由だが、」
本当に暗くなりたいのはこっちだよと言いたい。ただでさえ巻き込まれた?のに勝ち目が薄いなんて最
悪じゃねぇかってな。
まぁ、そんなこと思ってても仕方がないので次に進めることにする。
「じゃあ、次はあいつとおまえの関係について話してくれ。無関係ということはないだろう。襲われてた
し、」
なおかつ、さっき『あたしがなんとかしたい』って言ってたからなと心の中で付け加えておく。
あまり話したくないんだけどね…と言い置きしてから話し始める。
「両親がね、殺されたのよあいつに」
そう感情がないような声で語り始めた。
彼女の家は代々術師の家で少なからず彼女も術師として修行していた。今では術というのは伝統芸能みたいなものらしい。両親は術師としてなにか仕事をするということもなく普通に一般人として仕事をしていた。術師としての修行も昔に比べるとかなり優しいものであったということである。まぁ、そういったことを除けば少しだけ裕福などこにでもある家庭だったということだ。
しかし、その平穏をあの男は一瞬で壊した。1年前にいきなり現れ、両親と戦い始めた。その結果二人とも殺され、両親に隠されていた彼女だけが生き残った。
そうして彼女は一人ぼっちになった。
「あたしがね、あいつをなんとかしないとあいつに殺される人がでるかもしれない」
あたしの両親みたいにね。と笑って付け加える。
その笑顔は無理をしているのが丸わかりであり、話しているあいだも声には感情がなかったが、悲しみを隠しているのがわかった。
「そうだな…」
俺はそれしか言わなかった。……言えなかった。
誤字・脱字は3年以内に直す予定です。教えてもらえるとありがたいです。