種あかし
「あんたのどこにそんな腰が抜ける行動があったのよ!?」
少女(いまだに名前がわからん)が叫びながら問い詰めてくる。
いや、だって、ねぇ…
「あいつに自転車で特攻した時からあいつが逃げてくれるまでだが?」
何かおかしなことでもありますか?と俺は聞きたくなるような声で返す。
「えっ?いや、だって、…あんた余裕ありまくりだったじゃない。どうして余裕あるのに腰がぬけるのかな~って思ったんだけど?」
「余裕がある人の理由として考えられるのはまぁ3つくらいかな」
そこで俺はいったん言葉を切り、聞こうとしている少女の前に手を出す。
「1つ目はあいつが逃げた理由でもある俺が術師?だったかな。それである場合」
そう言いながら一本、指を広げる。
「あんた、術師なの?」
いぶかしむ声が横から聞こえる。
「まぁ、その可能性は客観的に見て少ないだろう。まず、術師なら自転車特攻じゃなくて術を使うだろうな」
俺は術師じゃないしな。
「だったら、どうしてあいつの攻撃をよけられたの!?魔力の流れが一般人には見えないからあいつの風がどこに来るかはわからないはずよ!」
ありえない。と言うような声で言ってくる。彼女からすれば見えない攻撃は避けられないのだろう。
「別に見えなくてもあれならよけられる」
俺は見えなきゃよけられないという大前提を崩すことを言う。
「あいつは攻撃する時に腕を振るだろ?それで攻撃のタイミングは読める」
さらにと俺は続ける。
「あいつが攻撃する前に挑発しておいただろ。それにあいつは俺を一般人だからって油断していた。そうしてあいつは小細工なしに俺を直接狙ってくるようにしたんだ」
そこで一息いれ続ける。
「まぁ、あそこが一番の勝負所だったな。あそこであいつが冷静で直線以外の攻撃が来ていたらたぶん当たってた」
横を見ると続けて、と言っているような目線を向けられてしまった。
「二発目のは簡単だ。あいつが一発目を避けられたからって焦る。その間にも俺が近づいてくる。そうするとだな、曲げるとかの小細工していたら俺の攻撃が先に当たるかもしれないだろ。だからあいつは直線的に狙ってくるって読めるんだよ」
「だからあんなふうによけられたのね…」
「そういうこと~」
まぁおおむねこんな感じだ。どれも予想や相手の心理が読めないと使えなかったいわば賭けみたいなもんだから俺も緊張していた。
「だからといって緊張して動けないと死ぬからな、そこは自分の読みを信じた」
「ふ~ん。そうなんだ」
おいおい、これって命のかかった賭けをしていたんだぜ。それをそう簡単に流すなよ…
「まぁ、話を戻して余裕の理由のもう一つが今みたいな読みができる奴な。俺は勘も入ってたからそこまで余裕じゃなかったけどな」
「まぁわかるわ。で、最後は?」
「ただの馬鹿」
「はぁ?」
俺は聞かれた質問に対して即答する。
「補足するなら、こんな状況でも少女が襲われているから助けるといって飛び出して勘ですべてを何とかする主人公みたいな奴ともいう」
一番うらやましいタイプだ。こんな奴だったら簡単に事後処理もできてフラグもバンバン立てていくだろう。
「……まぁわかったわ…」
「わかってくれて結構」
「で、どうすんの?これから」
「…………へっ?」
「いや、これからどうしようかっていう話。あいつは引かせてもらうって言ってただけでそれって来るでしょ、また」
…………………………………そんなこと言ってたなぁ。
「目をそらしながら現実逃避しない!」
「はぁ~」
どうするか、まったく案がない。と言うよりは、
「情報がたりない」
俺はそう呟く。
「まったくもって情報がたりない」
今度は少女の方を向いて言い切る。
「教えてもらうぞ。いろいろと。あいつについても術師についてもだ」
そう言いながら俺は作戦を考え始めることにした。
誤字・脱字は3年以内に直す予定です。教えてくださると助かります。