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(短編) 黒い瞳孔の悪魔 

( 黒い瞳孔の悪魔 ) イジメと慰め

作者: 紫 碁盤

(黒い瞳孔の悪魔)




<設定>


ここは、とある場所にある場末のバー。セブン。今日も一人の客がカウンターで美味しくない酒を飲んでいる。一人で飲むのにも飽きてバーテンに絡んでいた。



<ストーリー>


女「ねえ、あんたに私の気持ちわかる!?わかんないよね~!まったく分かったような顔しちゃってさ!!いいよね。バーテンは悩みなくてさ!。酒だけ作ってりゃいいんだからさ!!」




彼女の名前は山咲ゆう子29歳。会社のお局オンナにいじめられて仕事をしない年の離れたギャルの後輩からも煙たがられている。いわゆる孤立状態。





女「今日もあのお局が私をイビルのよ。自分のミスを私に押し付けて!自分は涼しい顔で部長に”あの件は山咲さんに頼みましたよ。”だって。私だって大人なんで言った言わないの水掛け論でもめるより仕事を終わらせるのを優先して残業してたら”残業するのは能力の無い証ですよ山咲さん”だって!。ホント殺してやりたいあのババア!」






バーテン「それは大変ですよね。」




女「はぁ~?!私の気持ちなんてわかんないくせにっ!!分かった風なこと言わないでよ!!」




バーテン「もう飲みすぎかと。」




女「それはあたしが決めるの!メニュー!」




バーテン「はあ・・」




(メニューを渡す。)




女「もっと強いのないの!?強いの。あ、これ、いいじゃん。『黒い瞳孔の悪魔』!名前からして強そう!。」




バーテン「!!」




バーテン「お客様それは~・・・・ちょっと・・。」





女「はぁ~?メニューにあるのに出せないっつーの?あんた客ナメてんの?」





バーテン「ですからお客さんそれはまた今度に・・・・・」





女「うるさいっ!!私の気持ちなんてわかんないくせにっ!!」



(女がカウンターを激しく叩く。)




(男が現れる。)


男「こんばんわ山咲ゆう子さん。失礼ですがお話聞こえちゃいました。はいこれ財布。免許証の写真より実物の方が数段良いですね。いやーこんな汚いバーにはもったいないお美しいお顔をされていらっしゃる。」






(男は暴れた女のバックから飛び落ちた携帯や財布を渡した。)




女「ああ、ありがとう。でもナンパはお断りよ。そんな気分じゃないんだから。」





男「ええもちろんです。わかってますよ。」





女「わかってるって!?あんたにあたしの気持ちなんてわかんないくせにっ!!適当言うな!!」






男「と言うのも分かっています。わたしがあなたを救済できるのもね。」





女「は?」





(女は灰色の光を見た。)





(女は自分の会社にいた。)




女「は?バーに居たはずじゃ。なんで会社に?しかもなんか全てがいつもより灰色がかって見える。」





女「うわっ、お局いるし。」




(お局が女ににこやかに近づいてきた。)





お局「山咲さん部長が例の書類ほめていたわよ。出来る部下を持つと私も鼻が高いわ。あ、またあのダイニングバー行きましょうね。ニコッ。」




女「あれ?」






(その世界ではお局は山咲ゆう子ではなく後輩のギャルをいじめていたのだった。しかもいじめ方は山咲の時の何倍も陰険で見ているだけで可愛そうなくらいで毎日ギャル後輩はこの世の終わりのように泣いていた。)




(今日もお局がまたギャル後輩をイビッっている。)


お局「あなたね仕事も全然出来ないくせにネイルやらデコ携帯やらチャラチャラしちゃってさ~。まったく勘弁してくださいよ~~。会社遊び来てんの。迷惑よ。だいたいあなたの性格になんか欠陥があるんじゃないの?性格っていうか人格?よくそれで平気で生きていられるわよね。あたしなら無理。速攻死んでるわ。」




(女は泣いているギャルの後輩に駆け寄った。)




女「大丈夫?ひどいよね~お局。わかるよ~あなたの気持ち~もう泣かないで。」





ギャル後輩「ううっ・・。わかる?分かるってあたしの気持ちが?いじめられてもいないくせに?・・・・・分かった風な事言ってんじゃね~よ!!このババア!!。上から見てんじゃねーぞコラァ!!!」





ギャル後輩「お前なんかにあたしの気持ちがわかってたまるかー!!!死ねババア!!」




(ギャル後輩ぶち切れてハサミを持って追いかけてくる。)





(女なんとかその場から逃げる。)





女「ヒィ~!!なんなのまったく。せっかく同情して慰めてあげたのに。」





(男が現れる)




男「あれ?山咲ゆう子さん。この世界がお気に召しませんでしたか?。あなたは”あたしの気持ちが分かってたまるか”と言っていたのでてっきり不幸なお友達が居れば幸せだと感じるのかと。この世界ではどこへいってもあなたより不幸な人に出会うことができるのですよ。必ずね。最高でしょ?山咲ゆう子さん。」




女「違うわ。あたしはただ共感したいのよ。ただ同じ気持ちを共感したいの。それだけよ。」




男「そうですか~。そうですよね、あなたは苦労をしてる不幸な自分があたかも偉いかの様に言っていましたからね。あなたより偉い人とは気が合いませんでしたか~。やはり。」





男「ではここはどうですか。」






(女は赤い光を見た。)





(女はまた会社に居た。)






女「”ではここは~”ってまた同じ会社じゃん。てか今度はなんか全部が少し赤っぽくみえるわ。」





女「うわっ。やっぱ今度もお局いるし。」





(ギャル後輩が女のもとに駆け寄ってくる。)





ギャル後輩「センパーイ!ドコ行ってたんですかぁ~?あたしまたお局にいじめられちゃって~てか先輩もいつもいじめられてるけど~。」





女「そうそう。こういう共感よ。これが欲しかったのよ!一緒に戦う仲間さえ居てくれれば強く生きていけるわ。」





ギャル後輩「どうしたんですかぁ~先輩今日変ですよぉ~」




女「いいからいいから。今日は飲みにでも行ってお局の文句でも言い合いましょう!」





ギャル後輩「やったぁ~楽しみぃ~。」







(愚痴や文句を言い合ううちに女とギャル後輩はさらに意気投合し結束はさらに固まった。1ヶ月後にはお局に二人でストライキ的な反抗まで見せるようになっていた。)







ギャル後輩「見ましたぁ~?先輩ぃ~お局の困った顔!あたし達が結託してお局無視すれば最強ですよぉ~お局仕事回んないんですからぁ~。」






女「イエス!イエス!イエース!!もうお局にデカイ顔させないからね。目にもの見せてやるから見てなさいよ~お局~!!」




(さらに1ヶ月後、女、ギャル後輩チームとお局の立場は逆転していた。)





女「頼みますよ~ちゃんとやってもらわないと~。これちゃんと頼みましたよね!。データ今日までに会議資料にしてくださいって。」






お局「でもこれは3人でも2日はかかる量だし。昨日いきなり一人でやれって言われても・・・。」




女「だって昨日はあたし達~」





ギャル後輩「合コンだって言ったじゃないですかぁ~」





女「またあたし達に無視されてもいいんですかあ?仕事ホント回んなくなって管理責任

問われるのはあなたですよ~。」





ギャル後輩「まああたし達は聞いてませんって口裏合わせればいいだけですからねぇ~」




女「おい泣いてんじゃねーよ。ババア!いい歳して恥ずかしくないのかよ。泣く暇あったら働け。働け。あはははは。ウケルー!写メ撮ろ写メ!」






女「(はあスカッとするわ~世界がこんなに楽しくて楽勝だなんて思わなかったわ~最高ハッピー~!!)」






ギャル後輩「はい先輩~泣いてるババアの横でピースしてく~ださいっ。ハイ、チーズ!」





(ギャル後輩写メ撮る。)




(女、写メを確認)




女「え!!?これ何?心霊!?」





ギャル後輩「なに言ってるんですか先輩~よく撮れてるじゃないですかぁ~」




(女、ギャル後輩を見る。)





女「ぎゃー!!」





ギャル後輩「どうしたんですか~せんぱーい。」





(女は走って化粧室へ行き、鏡でで自分の顔を映す。)





女「ぎゃーー!!」





(そこにはギャル後輩の顔と同じく、制服を着た鬼の様な形相の夜叉が映っていた。)





女「どういうことよこれは!一体なにが起こったの?!何が起こったの?!夢?!」




(男が現れる)




男「ごきげんよう山咲ゆう子さん。ご機嫌うるわしく。また暴れてらっしゃるんですか。これはまたお元気なようで。今度はまたそんな怖い顔をして。クックック。」





女「あんた!一体どういうことなのよ!顔がこんな醜い顔に!!」





男「どういうことかと言われましても。」






女「はあ!?たぶんこの変な赤い世界に来たのが関係あるんでしょ!!あなたこの顔早く直しなさいよ!。」






男「変な世界とは心外ですがさすが山咲ゆう子さん。変な顔に似合わず賢いですね。でもこの世界、快適だったでしょ?あなたにとっては。それは今、他人への怒りや恨みがあなたに生きるエネルギーを与えているからなのです。だからあの嫌いなお局さんをも打ち負かすことができたのです。憎しみと恨みの力でね。そしてそれはあなたがいじめられてた元の世界でお局さんがあなたに対してそうであったように。そしてその憎しみや恨みをエネルギーとして使ってしまった以上その顔はもう変えられませんよ。だって一度剥いたみかんの皮は元に戻しようがないでしょう?。山咲ゆう子さん、でも安心してくださいよ。夜叉の顔をした人は元の世界にもたくさんいますから。あなたの周りにも。具現物として見えないだけでね。ただこの世界の中ではあなたの念じる意思が具現化して夜叉の顔に見えるだけのことです。あなたの念じる強さによってね。あなたの望んだ世界なのですから。まあ同じ痛みを共感するレベルであなたが満足してればこんなことにはならなかったかもですがねえ。あなたはその先を行っちゃったようです。そんな意味ではあなたはフロンティアとも言えますがね。ククククク。共感、まあ言ってみれば鏡の様なものです。あなたとギャル後輩でその夜叉の顔を共感できてるわけですから願いは今も叶っちゃってるわけでしょう?逆に感謝してほしいくらいなんですけどね。でも大丈夫ですよ。もうじき人間だったなんて忘れちゃいますから。人間の格好をしててもね。しかしあなた、よく気が付かなかったものだ。1ヶ月も前からあなたはもうその顔だったんですがね。あなたがその顔で合コン合コンとはしゃいでいる時はどうしようかと思いましたよまったく。今は節分でもハロウィンの季節でもないんですからね。クックック。あれ?、今のおかしくなかったですか?」






女「いやーー!!!こんなの私の望んだものじゃない!!!!。」







女「顔を戻す方法はないの?あるんでしょ!もしかして元の世界に戻ればもとの顔に戻るんじゃ?!」







男「まあそれはそうですが(見た目には)。でもいいんですか?素晴らしい世界を手放しても。」





女「だいたいこんな顔になるなんて聞いてない!あたしより不幸な人ばかりの世界もあたしと同じくらい不幸な人ばかりいる世界もいや!こんなことになるなら元の世界の方がましよ。」






女「お願い!じゃあ元の世界に帰してよ!!」







女「ねえ!!聞いてんの!!?元の世界に連れ戻せって言ってんでしょ!!!!」






男「まあまあ。そんな恐ろしい顔しないでくださいよ山咲ゆう子さん。私ブサイクは嫌いなんですから。気が変わっちゃいそうです。」






女「ううっ・・お願いします。元の世界に帰してください。」






男「まったくあなたは勝手な人だ。でも私は優しいだけが才能ですからね。安心していいですよ。」






(女は白い光を見た。)





(女はバーに元通り座っていた。場末のあのバーだ。)






女「あれ?夢?」






男「まったくあなたは勝手な人だ。じゃあ私は『夢のような男』ってことになりますかね。」





女「ああ・・やはり夢じゃなかったのね。どういう仕組みかは分からないけど私は2つの世界に行ったわ。あなたは一体誰なの?」





男「それはもうすぐわかりますよ。山咲ゆう子さん。」





女「はあ?ああ頭イタ・・飲みすぎね。でもあたし思ったわ。」





男「何をですか?山咲ゆう子さん。」





女「正直、心の中で思ってたのよ。自分が一番不幸だ。でも自分より不幸な人がいれば自分が慰められるんじゃないか?。自分と同じくらいの不幸な人がいれば傷を舐めあっても癒される慰められるんじゃないか?ってね。でも結局どちらもただの現実逃避だった。心が怪物の様になって・・・・。逃げたり依存してても何も解決しない。道の障害物は自分でどけないと前には進めない!。自分の人生なんだから!。そういうことでしょ?」





男「受け取り方はあなた次第ですがそう思うならばそうかもしれませんね・・。山咲ゆう子さん。」





女「あ、バーテンさん、さっきはヒドイ事言ってごめんね。また来るからさ。あたし山咲ゆう子。あー知ってるか・・。あの人が何回もフルネームで呼ぶから。アナタお名前なんていうの?」





バーテン「新垣唯三アラガキ ユイゾウです。」





女「なんか聞くような名前ね(汗)。まあいいわ。ありがとう。」





バーテン「これ、明日への活力に。どうぞ。」





(バーテン、サービスでホットミルクを出す。)





女「ありがとう!なんか元気でそう!」





女「じゃあ、いただき・・・」





男「・・ました・・と。」





バーテン「ダンナァ~、ミルク飲ませた後でも良かったんじゃないすか~?」





男「いいのいいの。この女、既に死んでんだし。3日前にね。飛び降り自殺で。いじめっていやだよねぇ~ガッキー。」






(男がオンナの死亡記事の新聞を見せる。)






バーテン「まあそうですけど~どうせもう魂だけだったんだし最後にホット一息くらい・・~。」






男「バーカ。生きる希望を持った瞬間の魂が一番美味いんだよ。肉体は死んでたとしてもね。だいたい心残りや恨みを持った魂なんてまずくて食えるかよ。あの瞬間が最高の瞬間だったの!。人間が魚を刺身にする時一番新鮮なウチに一気に絞めるだろ?。最高の味で食うために。かわいそうだからって葬式してから食う人間がどこにいるよ?ガッキ~。だからお前はガキなんだよ。」






バーテン「ガキじゃなくて餓鬼ですけどね・・。今度は生きてる人間がいいですねえ。贅をつくしてマルマル太った体の。」






男「カラダ目当てとは~やっぱガキだねぇ~」





(終わり)


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